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Become Monster Online~ゲームで強くなるために異世界で進化素材を集めることにした~  作者: 亜掛千夜
第三章

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第八四話 補給基地攻略完了

 残りの補給基地は、『トリカブト』『スイレン』『クロユリ』『マリーゴールド』の四か所。

 一回やってみたことで大よそかかる時間もわかったので、シンボルと花が一致していない場合は別の個所を確認して回り効率よくこなしていく。


 二か所目は『スイレン』になった。一回目とはまた別の方法で侵入し、似たようなことをしながらエネルギーの供給装置のある場所まで行き、同じようにギミックを発動させて補給基地を破壊していく。

 そのときにもやはり『黒バラ』と同様に花言葉を入力する画面が表示され、また別の二枚目の見取り図も入手することができた。


 三回目はちょうどいいタイミングで、シンボルと一致してくれた『クロユリ』。



「なんだか周りにいるリーサル海賊団、増えてない?」

「ほんとだよね。事前の説明だと、補給基地を潰せば数が減るって話だったのに」

「考えられることとすれば、補給基地が二か所も潰されたせいで、全体の数は減っても今いる連中が集中してるってのはありそうだ」



 三回目は周辺にうろつくリーサル海賊団が増したせいもあって、シンボルマークを確認するだけでも一苦労だったが中に侵入した後も苦労した。

 一回目と二回目に比べて、明らかに内部を徘徊する敵の数が増えていたのだ。

 何度か本気でバレそうになり肝を冷やすものの、それでも『クロユリ』の破壊にも成功。



「これ四回目とか五回目、やばいんじゃね……?」

「かもしれないな……。でももうここまで来たら、やるしかないだろ。

 アジトの内部らしき見取り図も、どうせなら全部集めたい」

「だよね。ちょうど五枚で一つになるみたいだし」



 三枚の見取り図を集め、それらを合わせて確認してみたところ、やはりそれはリーサル海賊団の中枢──ロロネーがいる本拠地の見取り図だということがほぼ確定した。

 なぜなら三階の中央付近、おそらくこの拠点のど真ん中にあたる場所にリーサル海賊団のシンボルマークが印され、その上に小さな文字で『キャプテン・ロロネー』と記載されていたからだ。



「ここで待ってるぞって意味なんだろうな……」

「申し訳ないけど、そっちに行く気はないんだけどねぇ」

「ブーンたちには悪いけど、カギさえ手に入れちゃえば用はないわけだしね」

「そもそも、オレたちで敵う相手でもないしな。

 身もふたもない言い方だけど、別のプレイヤーの世界線で救われることを願っておこう」



 四回目のチャレンジは『マリーゴールド』、そこでは三回目以上に熾烈な状況を強いられた。

 補給できる場所は二か所だけになってしまったせいで、今まで分散されていた海賊たちが密集してきてしまったのだ。


 ただシンボルを確認するだけで何度も敵に見つかりかけ……というより、何度か見つかりもして全力で逃亡なんてことも何度も繰り返した。

 そうして確かめて隠し通路へ侵入を果たせても、普通の通路にはほとんど切れ間なく敵が徘徊して、同じ場所に一時間以上身を潜める羽目になったりもする。


 そのせいで慎重を期して早めに侵入したはずなのに、出るときは日付が変わるギリギリで、あわや時間切れで死んでしまうところだった。



「これ五回目は大丈夫なのかな」

「補給基地もそこだけになっちゃってるし、すごい密集してそー」

「行ってみて本当にムリそうなら、いよいよ諦めるのも一つの手かもしれない。

 四か所潰しただけでも、効果は充分出てるんだろうしさ」



 四回目までの補給基地攻略の際は補給基地周りの密集度合いが凄かったが、他の海路では三回目までに見かけていたリーサル海賊団を一切見なくなっていた。

 つまり補給基地の周り以外の全体の数が、明らかに目減りしていたのだ。


 ブラットたちの目指す南方でのゴールは補給基地を全て破壊することではなく、ここではあくまで本丸のアジトに侵入しやすくするためにやっているだけ。

 これだけでも、やった意味はちゃんと出ていると言っていい結果が出ていた。


 もしも補給基地内で死んでしまえば船を取りに行く前に、ダミーに切り替わってしまうのはほぼ間違いない。

 ダミーに変わった瞬間、施設内部に残された船が壊れてしまうことを考えれば、ブラットたちの死は即ち船を失うことと同義。

 ならば一か所だけ諦めて本拠地の攻略に向けて動き出すというのも、選択として間違ってはいないだろう。


 そんな考えのもと、五か所目のシンボル確認にやってきたブラットたち。

 最後に残ったのは『トリカブト』の補給基地。さぞ大量の海賊船がひしめき合っているのだろうと予想していたのだが、その考えは裏切られることになる。



「あれ? なんか、めっちゃ少なくない?」

「これ一回目よりも少なくなってる気がするな」

「もう補給できるのは、ここしかないのに……なんか逆に不気味だね」



 探知機が捕捉している敵船の数はたった二隻。四か所目の状況が嘘だったかのように、補給基地の周りを探索しやすくなっていた。

 HIMAが言うようにブラットもしゃちたんも不気味に感じはしつつも、それでも侵入しやすい状況ではあったので三人は五か所目の攻略にも乗り出した。



『明らかに、やばそうなのが多いんだが……』

『見つかったら絶対に逃げられなさそう』

『たぶん一撃で殺されちゃうだろうね……。

 今そこにいるのだって通常マップで似たようなの見たことあるけど、最前線のプレイヤーがフルパで挑んでもキツイレベルのボスだったはずだよ』



 五か所目『トリカブト』でも身を潜ませ、施設内にいる敵を確認するなんてことが何度もあったのだが、その際に見かけるモンスターが明らかに今まで目撃したどの敵よりも強力な相手ばかりだった。

 つまり内部にいる数は周辺と同様ごっそり減っていたが、それを補って余りあるほどに敵の格が数段飛ばして上昇していたということである。


 少し物音を立てただけですぐに反応して走って戻ってきたりと、あらゆる感覚器官も他よりも研ぎ澄まされているようにも感じた。

 今までの敵なら「なんだ気のせいか」くらいで見逃してくれた些細なミスでも、今この施設内にいる敵は見逃してくれるとは思えない。


 いたるところに敵がいたときよりも、むしろ緊張が増していく道中、ブラットたちはより慎重な行動を心がけ行動していった。




 なんとか最後のエネルギー供給装置を使った破壊工作も終わり、五枚目の見取り図も入手することができた。

 脱出経路で一気に船のある場所に戻り、脱出のギミックを起動させて外へと帰還する準備を調える。

 侵入口になっていた大きな岩場に一時的にできたトンネルを抜け、やっと終わりだと一息つこうとした三人。

 しかし突如、船内に鳴り響く警報により一瞬で緊迫した雰囲気に戻された。



「なになになにっ!?」

「しゃちたんっ、敵に見つかってる! 全力で逃げくれ!」

「……出待ちされてた? ある程度、侵入口がばれてたってことかも」



 補給基地の内部から海面に戻ったばかりだというのに、百メートル以内の場所に二隻ものリーサル海賊団の船が見えた。

 こちらが出てきた瞬間に向こうはもう追う態勢に入っており、この周辺に侵入者たちが出てくることを予想していたかのような動きだ。


 HIMAが冷静にそのことについて呟いている間に、しゃちたんは『ターン』で二隻の反対方向に船首を一瞬で向け、『ダブルジェット』で無理やり初速を上げながらアクセルを全開で踏みぬいた。

 こちらは船が出せる最大の速度を持っている。逃げに徹すれば追いつけはしないだろうと思いきや、向こうの速度も負けておらず『ジェット』を併用することで、ようやく距離を離せる程度。

 向こうも同じだけ速度を強化された、敵を追うための船とみていいのかもしれない。



「でもジェットのおかげで距離は離せてる。

 油断しなきゃ逃げられるよ、がんばってしゃちたん」

「あいよー! ──って、今度は何っ!?」

「これは確か…………魚雷だ!」



 探知機に今まで見たこともないマークが表示され、警告音が鳴り響く。

 その速度は〝10〟の速力を有するこの船の速度をも超えて、こちらに三発向かってきていた。


 敵船の方はそれでもう追いつくの無理だと思ってくれたのか、それともその魚雷に絶対的な信頼を置いているのか、追うのを諦めた。

 けれど魚雷の方は『スキッド』や『ターン』で船の進行方向や向きを切り替えても、正確にこちらの船尾を捉え、もの凄い速度で追尾してくる。


 こちらは二つに増えた『ジェット』も使って逃げているのだが、まったく引き離せる気配はない上に、最高速度で逃げているのにジワジワとこちらの船に近づいてくるのが、探知機のおかげでハッキリと理解できブラットたちにも焦りが見えてくる。

 もしかしたら三発ぐらい耐えられるかもしれないが、耐えられないかもしれないのだから、むざむざ当てられるわけにもいかない。


 この頃になって既に遠く離れた最後の補給基地が爆散する音が聞こえてくるが、それどころではなく三人とも反応すらしなかった。



「このままじゃ魚雷が当たっちゃうよ! どうする二人ともっ」

「……逃げるのは無理そうだしな。………………よし。HIMA、一緒に迎撃するぞ」

「迎撃って……魚雷があるのは海の中だよ?

 私たちは泳ぎが得意な種ってわけでもないし、ただのモンスターだって海の中にはうようよいるんだよ?」

「いや、海に潜る必要はない──」



 ブラットは手早く二人に作戦を伝えて甲板に出る。

 船の速度が速過ぎてまともに歩けないが、無理をしてでも船上を進みブラットは船の右側にある【魔力充填式銃塔】に、HIMAは左側にある【魔力充填式銃塔】にそれぞれ着いて、いつでも撃てるようにスタンバイする。



『しゃちたん、こっちの準備はできた。速度を落としてくれ』

『……わかった。信じてるからね、二人とも』

『こんなのやったことないけど、私も絶対に成功させてみせるよ』



 最高速でも追いつかれそうだったというのに、ブラットは速度を落とすように指示を出す。

 しゃちたんが言われた通りに減速させると、魚雷はみるみるこの船に向かって迫ってきた。



『九〇メートル──、八〇メートル──、七〇メートル──』



 しゃちたんがカウントダウンするかのように、探知機に表示された魚雷の位置情報を二人に通話で伝えていく。



『三〇メートル──、二〇メートル──、一〇メー──』

『ジャンプだ!』



 一〇メートル圏内まで魚雷が来たところで、船を最大までジャンプさせる。

 すると船を追ってきていた魚雷も、機械的に追尾したまま海面から飛び出してきた。



『撃て撃て撃てーー!』

『うりゃりゃりゃりゃー!』

『やっちゃえ二人ともーー!』



 海から出てしまえば、こちらにも対処のしようが出てくるというもの。

 左右で構えていたブラットとHIMAが、【魔力充填式銃塔】に込められた魔力の弾丸を船上から魚雷に向かって乱れ撃ち。

 ダダダダダッ──ダダダダダッ──という発砲音と共に何発もの弾丸がロケットのような形をした魚雷に当たり、その衝撃で信管が作動する。


 ──船のすぐ下で魚雷が盛大に爆発した。

 その衝撃はすさまじく、宙に浮いていた船という大質量のものを余波だけで、さらに天高く舞い上げていく。



『これ当たってたら沈んでたな』

『冷静に言ってる場合かー! この高さから落ちるのは不味いでしょーよ!』

『いくら下は海水だって言っても、打ち付けられたときの衝撃は凄いからね』

『でも水に落ちる前にジェットで前に進めば、勢いは殺せるんじゃないか?』

『あー、その手があったかぁ』



 上まで登り切るとフワリとした一瞬の浮遊感を生み出し、すぐに下へと落下していく。

 ブラットとHIMAは【魔力充填式銃塔】に掴まりながら落下に耐え、落ち切る前にしゃちたんに『ジェット』を指示して落下エネルギーを急激な前進で打ち消していった。


 水切りの石のように海面をピョンピョン跳ねながら船は前へとすっ飛んでいき、海面に着いたことでまたできるようになったジャンプで、さらに勢いを消して無事、船も軽傷だけで済んだ。



『強度〝8〟でも、爆発の余波くらいなら余裕で耐えきれるみたいだな』

『直接当たってたら、絶対にやばかっただろうけどね』

『もーなんか、この辺物騒だし一旦、町のある島に行かない?』

『見取り図もゆっくり確認したいし、そうしようか』



 念のため撃った分の弾を【魔力充填式銃塔】に補充し直してから、二人はしゃちたんのいる操舵室へと戻った。




 近場にあるポータルの島。ゲーム的に絶対的な安全が保障されたその場所で、三人は船室の机の上に五枚の見取り図を取り出し並べていく。



「「「うわっ」」」



 するとそれらの紙が急にピカッと光り出し、机の上で勝手にくっつき合って一枚の大きな見取り図に変化した。

 驚きながらも三人で覗き込むように確認してみれば、なんとただの紙の見取り図だったそれが、リアルタイムで自分の現在地がわかり、縮小拡大、一階から五階まである広大なアジトの内部を一階ずつ表示できたりと、より便利な地図に変わっていた。



「前の地図だと階層も関係なく全部、一枚の紙に書かれてたから見づらかったんだよね」

「細かくてルーペとか使わないと、よくわからない部分とかもあったしな。

 五枚全部そろえた特典だと思えば、けっこういい──」

「──あれ? 後ろ面にもなんか書かれてない?」



 ブラットが机から軽く持ち上げて見ていると、その対面側にいたしゃちたんが裏側に書いてあるものを発見した。

 ブラットは裏返してから、改めて机の上にそれを広げてみる。



「全ての地図を揃えた慎重な君へ──って書いてあるな。それで、その下にある数字は……」

「どこかの座標かな。これもロロネーさんがプレイヤー……というか、解放してくれるかもしれない人たちに向けたメッセージとか?」

「敵側がわざわざこんな地図用意しないだろうし、そうなんじゃない? どーするよ、行ってみる?」

「何かイベントが有利になるアイテムが手に入るかもしれないしな。

 それにリーサル海賊団のアジトがある可能性が高い、二つの座標とも近いしちょうどいい」

「うん。ここまできて罠ってのも考えにくいしね。

 とりあえず近くだけ行ってみて、何があるか見るだけでもやっておきたいかも」

「なら決まりっと。あ、でももうこんな時間じゃん。二人とも大丈夫?」

「え? もうそんな時間か?」



 現実の方の時間を確かめてみれば、もうすぐ夕飯の時間というところまで差し掛かっていた。

 しかしよくよく考えてみれば、補給基地攻略だけでも相当な時間を使っていたことをブラットは思い出す。



「八倍速の世界のはずなのに、あっという間すぎるね。

 明日も学校お休みだし、また朝からやっちゃう?」

「やっちゃう! ブラットもいけるっしょ?」

「ああ、もちろん。早く、この座標の場所に何があるか確かめたいしな」

「じゃあ、今日は一旦ここで終わりってことで」

「それじゃあ」

「ばいばい」

「ばいばーい」



 ブラットはイベントマップからBMOの通常のマップに戻り、炎獅子との戦いをまたやってから、その日のゲームを終えた。

次は火曜更新です!

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