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Become Monster Online~ゲームで強くなるために異世界で進化素材を集めることにした~  作者: 亜掛千夜
第三章

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第八三話 補給基地攻略

 天井の上に通っている通路にも小さな明かりは用意され、多方向にわたって分かれ道もちゃんとある。

 ここでも方角を正確に確認しながら、選ぶ通路を間違えず進み続ける必要があった。


 ブラットたちはしっかりと三人で確認しながら、けれど手早く正解の道を選択していくと、やがて行き止まりに差し掛かる。



『ここだな』



 行き止まりになっている場所の床をよく見ると、取っ手のようなものが付いていた。

 その取っ手を慎重に持ち、三人でゆっくりと音を立てないように横に少しだけずらし、下が確認できる隙間をつくる。


 その隙間から覗き込むように下を見れば、そこは十字に道が通った施設内の開けた交差点になっていた。

 ここは施設の各部署への分かれ道にもなっている一つでもあるため、守り手側が警戒しておくべき場所でもある。


 そのためか、ここには頭が回転警告灯──パトランプなどと呼ばれているものに酷似した、小型の悪魔が一体周辺をうろちょろと不規則に低空飛行していた。

 このモンスターは頭のランプから放たれる光が周囲をグルグルと照らし、その光に照らされたものを仲間か侵入者か即座に判断できる。


 もし侵入者を発見しようものなら、側にいれば鼓膜がいかれてしまうほどの大音量で叫び、大量の仲間をここにおびき寄せる。

 しかもその声には広範囲に渡る強力なスタン効果も付与されているので、耳を塞いでも足止めさせられてしまう。


 このモンスターはあちこちに配備され、すぐ駆け付けられる程度の距離に強力なモンスターが一体潜んでいるので、こいつに鳴かれたらブラットたちはスタンで足止めされ殺されてしまうだろう。



『けどこの下に、また地下に行く扉があるんだよね』

『んで、そのためにはあいつを何とかしなきゃいけないと』



 幸いこのモンスターは横方向にはめっぽう強いが、上下の索敵には向いていない。

 目というものはなく頭のセンサーでのみ空間を把握しているので、上からの奇襲には弱いのだ。

 能力的にも警報と足止めに特化していることもあって、ブラットたちでも充分に勝てる相手でもあった。


 このモンスターについても手記に書かれていたので、手はず通り三人は動いていく。

 ブラットは変態ダコ戦の報酬で手に入れたヨーヨー型武器──【八爪手車】を手に持ち、紐の輪っかを右手の中指に通す。

 その間に二人が他にモンスターがいないことを確認しながら、自分たちが余裕を持って通れる程度に床を大きく開けていく。


 ブラットは開けてくれた隙間の縁ギリギリに立ち、下でウロチョロしている悪魔を観察しながら【八爪手車】を手に構える。

 飛ぶ軌道に法則性はなく上下にも無駄に動くので、かなり先の行動が読みにくい。

 それでもよく観察すれば上下に移動するときと横に移動するとき、翼の動きがちゃんと違うことがわかってくる。


 ブラットは目を凝らし、自分の下に悪魔がやってくるのを静かに焦らず待ち続け、最適なポイントで下に向かう翼の動きを見せた。



『──今っ』



 ブラットは【八爪手車】を、手首のスナップを利かせながら下に投げつける。

 ヨーヨーの本体部分が伸びていき、ちょうど悪魔の首の真横にサッと落ちてきた。

 当然すぐに感知した悪魔はランプの下についた口を開き警報を放とうとするが、その前にブラットが振り子のように【八爪手車】を動かし紐の部分を首に当てる。



「──ゥェッ!?」



 その瞬間、紐がグルグルと首に巻き付いていき締め付ける。最後に刃も紐を通して出し、がっちりと肉に突き刺しその状態で固定する。

 ブラットがもう片方の腕で紐を掴んで思い切り上に引っ張り上げれば、悪魔は釣りあげられた魚のように、首を絞められた状態でこちらの足元に転がった。



「「──っ!」」

「ッァ────」



 最後にすぐ攻撃できる状態で構えていたHIMAとしゃちたんが、挟み込むように悪魔を無言で刺し、叩いて攻撃してHPを削り切った。

 若干とはいえ物音がしたため三人はそっと一度床を閉めて耳を付け、増援が来ないことをよく確かめてから下に降りる。



『ここは他のモンスターもよく通る道だろうから急ごう』



 降りたらすぐに東西南北に十字にのびる通路右側の壁に手を這わせ、天井を開かせたときのように小さな出っ張りを、南、西、北、西、東の順で三人で手早く押していく。

 すると部屋の中心からやや南寄りの場所の床が下にパカッと開き、次の通路を指し示した。



「ゲッゲッゲ──」

『やばい、なんかくるっぽいよっ!』

『急いで下に降りよっ!』

『ああ!』



 東の通路の方からモンスターたちの鳴き声が響いてきたので、足音を立てないようにしながらも、落ちるように地下への通路に三人は転がり込む。

 天井は下に降りる際にちゃんとHIMAが閉めていたので、あとは開いた床を閉じれば悪魔がいない以外いつも通りだ。



「ゲェ……?」

「グゥオ?」

「シィイイシィア?」



 上からモンスターたちの怪訝そうな声が、かすかに聞こえてくる。

 警報装置代わりの悪魔がいないことを、不思議がっているようだった。

 しかしあの悪魔を始末したのもロロネーの手記通りなのだから、問題ないはずだ。

 少しだけ緊張しながら静かにモンスターたちのいるすぐ下で息を潜めていると、「まあいっか」とでも言っていそうな鳴き声を上げ、気にせず移動をする気配が伝わってきた。



『人間だったら気にするんだろうけど、やっぱりモンスターは、この程度の変化どうでもいいのかな』

『せいぜい、いつもいるやつがいないなぁくらいの感覚だったのかもしれないな』

『こっちとしては、やりやすくて助かるね』



 その後も順調に迷路のような道を行ったり来たり、正規の通路に出ては上に行ったり下に行ったりと、普通に施設内を行く何倍も時間をかけてギミックを解きつつ正解の道を進み続けた。


 そうしてやってきたのは、人数を二人と一人に分散しなければいけないポイント。

 下から前にもあったハッチに取り付けられた鏡のような魔道具で、周囲を確認してみれば、今まで見たこともないほど豪華で重厚な巨大な扉が見えた。

 その前に門番のように立つ、二体の体高四メートルはありそうな巨大ケンタウロスのモンスターと共に。



『それじゃあ、HIMA。そっちは頼んだ』

『うん、こっちは任せといて』

『一人にしてごめんね』

『いいよ、気にしないで』



 今ブラットたちが上を覗いている通路には、さらに奥へと進む通路があった。

 HIMAは今いる場所とは違う、そちらの一人だけしか通れない通路に分かれていく。


 ここでは誰かがあの門番二体の気を逸らすギミックを発動し、その間に別動隊が動いて門自体にあるギミックを解いて進む必要があった。

 そこでHIMAが一人の方に行き、まだ二人に比べてゲーム慣れしているとは言いづらい、しゃちたんのフォロー役にブラットが付いた形だ。


 ブラットとしゃちたんが待っていると、門番二体が何かに釣られるようにフラフラと扉の前から離れていく。

 HIMAがモンスターを強く惹きつける、特別な匂いのするギミックを発動させたのだ。


 その二体以外に障害がいないことを確認してから、二人は上に飛び出しブラットは大きな扉の右隅に小さくはめ込まれた黒い石にMPを注ぎ込み、しゃちたんは左隅の白い石にMPを注ぎ込む。


 すると大きな扉のロックが外れ、開けられるようになる。

 二人掛かりで押し開き、隙間から中を見て誰もいないことを確かめてから、さっとその中へと侵入。


 同じ手順で逆側から黒と白の石にMPを注いで施錠しなおすと、今度は天井が開いたのですぐさまブラットが飛んでいき、触手を伸ばしたしゃちたんを引っ張り上げ、元の状態に天井の状態も戻した。


 その流れの中で見つかった気配はなかったので、今度は二人がHIMAのために動き出す。

 少し進んだところにレバーがあり、それを下に降ろした。こうすることで、HIMAのいる側の通路のほうに、先へと進むための道が開かれるのだ。



『ありがと、こっちの道が開いたよ』

『よし、あとは向こうとこっちで開閉レバーを引きあって、培養室ってところまで行って合流だ』

『『うん』』



 通話で繋がってはいるが、少しだけHIMAとは別行動。

 お互いに進路上にあるダミーではないレバーを引いて、互いの道を塞いでいる隔壁を開いていく。

 ちなみにここは二人以上プレイヤーが必要なので、ソロプレイヤーの場合は少し遠回りした別のルートを行く必要があったりする。


 ダミーに騙されることなく進んでいけば、ロロネーの手記に『培養室』と書かれていた場所に到着した。



『うわ、グッロ』

『その名の通り、ここで仲間兼食材を作ってるってわけだな』



 ブラットとしゃちたんが培養室の上に張り巡らされたパイプの上に出ると、その部屋が一望できた。


 そこには下に向かうほど大きくなって数珠つなぎに繋がっている、卵型の透明なカプセル装置がみっちりと敷き詰められていた。

 ブラットたちの目の前にある一番小さく一番上にあるカプセルには、培養液に浮かぶゴミというかカスというのか、なんだがグチャグチャとした何かが漂っている。

 それと繋がった、すぐ下にあるカプセルには、生物の脳や眼球らしきものがプカプカと浮いていた。


 それらは全て作りかけのモンスター。

 下の方の大きなカプセルに近づくたびに形ができあがっていき、できかけのところは内臓が平気で飛び出していたりと、かなりグロテスクな光景が広がっている。



『こっちはもう着いたが、そっちは大丈夫そうか?』

『うん、あと五分もしない間に着けると思う』



 HIMAも順調なようなので、少しだけ二人はパイプの上に座って休憩する。



『ここでできたのが運ばれていくってんなら、ここも壊しておきたくなるなぁ』

『けどどうせ最後のギミックを発動すれば、ここも壊れるみたいだし二度手間になるんじゃないか?

 それに万が一にでも、最後の場所に行く前にバレるのはさけたい』

『そっかぁ、そうだよねぇ』

『はい、到着っと──って、なにここグロいなぁ……』

『『おつかれー』』



 二人で話していると別の場所の天井が開き、HIMAが現れ合流を果たした。



『HIMAは休憩とかいるか?』

『ううん、大丈夫。このまま最後までいっちゃお』

『ここまでくれば、あと少しだしね! レッツゴー』



 培養室のパイプを伝って三人は移動し、巨大な部屋の下まで降りる。

 この部屋はモンスターたちがやたらに動いて壊されたくない場所でもあるので滅多に来ないとはいえ、たまに巡回のモンスターが来るらしいので警戒は怠らずに。


 また地下へのギミックを解いて下に行き、さらに施設の中枢へと踏み込んでいく。

 途中の罠やギミックも三人で力を合わせてやれば、それほど苦労もしなかった。

 そうしてようやくブラットたちが目指していた、この施設の破壊が可能となるギミックがある場所に辿り着いた。



『あとは、こいつのギミックを起動して逃げるだけだな』

『この施設が壊れるって書いてあったけど、どんな感じなんだろ』

『ねーねー、はやくやっちゃおうよ』

『それもそうだな』



 その部屋には直径一メートルはあろう太いコードが五本天井に這わせるように伸び、同じものが五本床を這わせるように伸び、それらは部屋の中央最奥に設置された十メートルはありそうな巨大すぎるジュークボックスのような形をした装置に繋がれていた。



『手記によれば、これが補給基地内のエネルギーを供給している装置だったよね』

『ああ、あとはこいつに細工して過供給させて、全部の装置を一気に壊すって感じらしい』

『なんだか派手なことになりそうだよねぇ。手順が終わり次第、即座に逃げることって書いてあったし』

『どうなるかまでは、書いてくれてなかったけどね』



 そこだけが不安だが、ここまできて日和ひよるわけにもいかない。

 まずはここに普通に入るための扉が一つだけあるので、それを塞ぐギミックを発動させていく。

 手順通りに発動させると扉の隙間にセメントようなものが湧き出して固まり、普通に鍵を解いて開けようとしても開かないようになった。


 これをやっておかないと最悪このエネルギー供給装置だけを破壊されて、施設の破壊が中途半端に終わってしまうこともあると書いてあった。

 ただでさえ重要な場所なので、ここの扉は非常に頑強で壊すのはリーサル海賊団の構成員とはいえ難しい。塞いでしまえば滅多なことでは、ここまで来れなくなるのだ。




『こんないかにもメカメカしいもんが、なんで自然に再生するんだろうね』

『そこはまあ、とんでもパワーってところじゃない?』

『そんなこと言いだしたら、そもそもモンスターたちが、こんな施設を使ってること自体がおかしくなるしな。海の王のスーパーパワーなんだろうさ』

『はぇ~海の王マジすげ~』



 どれだけ破壊しようとも、補給基地は時間をかけて勝手に修復されてしまう。

 完全破壊してしまえばイベント終了まで壊れたままだが、中途半端な破壊では下手すれば数日で復旧してしまう。

 それを防ぐためにも、入り口をきちんと塞いでおくのも重要なことなのだ。


 入り口を封鎖したあとは、最後に装置に仕掛けられたギミックを発動させていく。

 装置の裏側にある隙間に入っていき、裏手にある人が入れそうなほどの入り口があるので、そこから装置の内部に三人で侵入していく。

 巨大な電子基板のようなものがある場所に入れるので、そこで手記に記されている通りのやり方に従い、エネルギー供給量を監視しているという部品を全て取り外していく。

 これを取り外す順番はどうでもいいようなので、三人総動員で一気にやっていった。


 ニ十個以上あった大きな部品を全て無事に取り外し、数が合っていることも確認してから裏口の近くにあったレバーを引いた。

 すると表側にある隠し扉が開くので、今度はそちら側に回って装置内部に侵入し直す。


 表側にある隠し扉から入ると、普通のブラットたちサイズのモニター付きの装置がこっそり設置されていた。

 その前に立つとモニターに電源が勝手に入り、暗号のような謎の記号がズラリと表示される。



『パスワード入力画面だな。これを入力して開始を押せば仕込みは完了だ』

『うぅ~ドキドキしてきた』

『まだここから出なきゃいけないんだから落ち着いていこうね、しゃちたん』



 順番通りにブラットが記号をプッシュしていけば装置のロックが解除され、本来ならこの後に『過供給を開始しますか? YES or NO』という選択画面が表示されるはずだった。



『──なんだ?』



 けれどそこに表示されたのは大きな〝黒バラの模様〟をバックに、60秒のカウントダウン。

 それに加えて『この施設のエネルギーは世界中の何から得ている?』という質問と、答えるための五十音表。



『こんなの手記に書かれてなかったよね!?』

『そのはずだ。仕様が変わったのか? というか、そんな情報どこかにあったかっ?』

『………………ねぇ、二人とも。私が入力してみてもいい?

 失敗したらどうなるかわからないけど、これかなってのがあるんだけど』

『ほんとか!? もう失敗したら失敗しただ。いいよな? しゃちたん』

『うん! どうせカウントがゼロになっても失敗なんだろうし、好きにやっちゃって! HIMA』

『わかった』



 突然意味のわからない質問にうろたえたブラットとしゃちたんだったが、HIMAだけは何か思い当たる解答があったようだ。

 ブラットと場所を交代して、モニターに表示された五十音表をプッシュしていく。



『に、く、し、み』



 ──憎しみ。そうHIMAが入力すると、『過供給を開始しますか? YES or NO』の文字に切り替わった。



『おおっ、どうしてわかったんだ?』

『これでもかってくらい黒バラの絵が後ろに表示されてから、それがヒントかなって思って、黒バラの花言葉を入れてみたの』

『それが憎しみってこと?』

『うん、私が調べた限りだとそうみたい』

『けど、なんで花言葉だってわかったんだ? それによくピンポイントで知ってたな』

『ブーンたちにシンボルについて聞くときに、なんで白いガーベラなんだろうって不思議に思ってね。

 それに「彼に捧げる」の返しが必ず、「その意思、確かに受け取った」っていうのも気になってたの。

 そこでいろいろと調べてたら、白のガーベラの花言葉には〝希望〟っていう意味があったんだよ。

 だから私たちは『彼に希望を捧げるために行動します』という意味で、その言葉と花を彼らに贈ってたのかなぁなんて考察してたの』



 そこでさらにHIMAは思考を広げ、補給基地にはそれぞれの花が植えられることを思い出す。

 もしかしたらこちらにも、なにか意味があるのではないかと。



『だからそのときに何となく、それぞれの補給基地の花の花言葉も調べてたってわけ』

『なるほどなぁ。さすがHIMA!』

『HIMA、ナイス!』

『えへへ、ありがと。じゃあ、こっちの開始ボタンを押しちゃっていい?』

『やっちゃってくれ』

『ゴーゴー!』



 お手柄だったHIMAが、画面に表示されたYESの方をプッシュした。

 するとそのモニターだけが付いたまま、装置自体が機能停止して全てのエネルギー供給が一度解除された。



『これであってるんだよね?』

『供給を止めてここで一旦ため込んでから、一気に流すって感じらしいからね。あってると思うよ、しゃちたん』

『起動した後は帰り道の扉が開くから、そっちから逃げればいいはずだ。

 ここがどうなるかわからないし、今のうちにずらか──ん? なんか出てきたぞ』

『『え?』』



 モニターの下にあった溝から、印刷物のように一枚の紙が排出された。

 時間がないので軽くだけ見てみると、どこかの見取り図のようだ。



『これは、もしかしてアジト内の地図の一部? ──って、それもあとでいいか。急いで出よう』



 供給を止めたことで各施設も機能停止し、補給基地全体が今やパニック状態になっている。

 何やらモンスターの怒号のようなものが、本当に微かだがここまで聞こえてきていた。


 ブラットたちは急いで装置の裏側に周り、下に行くための扉を見つけ入って閉める。

 あとは全力で地下を走り抜けながら、途中途中にある隔壁を内側にあるレバーを操作して開けていけば、一直線で船のある場所まで帰ることができる。



『行きもこれだけ楽だったらよかったのになぁ』

『まさに行きは難し、帰りは易しって感じだな』

『侵入には施設の防御機能が働いて侵入者対策が勝手にできたけど、出るだけの道ならそういうのもなかったって手記にも書いてあったしね』



 帰り道には侵入者対策は一切なく、ここまでかかった時間が嘘のようにどんどん施設の外へと向かって移動できていた。

 そうこうしているうちに施設全体が小さく揺れはじめたので、ブラットたちはより走る速度を上げて船に急ぐ。


 船に着くころには震度三程度の揺れにまでなっており、慌てて上にある水の膜を三人で攻撃して操舵室に引きこもる。

 すると大量の水が船に向かって降り注ぎ、その場一帯が水で満たされると同時に、掃除機で吸い上げるかのごとくブラットたちの船が回転しながら上昇していく。


 回転に耐えているとすぐにあの渦潮地帯に帰ってきたので、しゃちたんは慌てて舵を取り元来た道を丁寧に戻っていっていると、ゴゴゴゴッ────と地の底から響くような音が補給基地の方から聞こえてきた。



「なんだかよくわからないが、もっと離れたほうがいいかもしれない。

 しゃちたん。無理はしないでいいけど、できるだけ急いでくれ」

「あいあいさー!」



 さすがの操船技術というべきか、速度を上げてもミスすることなく細い海路を進み渦潮地帯を抜け、そこからさらに速度を上げて補給基地がある島からも距離を取っていく──そして。



「うわっ!?」「「きゃっ!?」」



 強い光と強い爆発音。既にそれなりに離れていたはずなのに、耳がキンと痛くなるほどのものだった。

 後ろを見れば補給施設は木っ端みじんに吹き飛んで、内部にいたリーサル海賊団ごと消え去っていた。



「壊すとは書いてあったけど、思った以上の壊れっぷりだな……」

「てか、あの施設ってあれでもいつか再生するんだよね。やばくね?」

「このギミックを使っても、数か月から一年程度で元に戻るだろうって書いてあったしね。

 でもまあ、私たちのイベント期間中はもう復活しないだろうし、次もちゃちゃっと攻略していこ」

「それもそうだな」



 補給施設が爆発したことで、探知機に映る敵のマークも散りはじめる。

 ブラットたちを追ってきている存在も感知できなかったので、三人はすぐに他の補給基地攻略にも着手していった。

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