第七三話 海の森
『収束音波砲』。
収束波動砲の機能を利用した音響攻撃。船に当てれば一時的にシップコアの機能を麻痺させ航行不能に、モンスターに当てれば一時的に行動を麻痺させることができる。
大きすぎるモンスターには効果がない。ただしモンスターによっては複数回続けて当てることで、麻痺状態にさせられることもある。
この攻撃は船自体に負担がかかる。本船の強度ではゲーム内時間において、三時間の内に三回発射できる。
「攻撃ってよりも、足止めのアクションって感じなのかな?」
「そうみたいだね。あとは収束波動砲と違って一回しか使えないってわけじゃないから、使いやすくはありそう」
「操作マニュアルの方を見てみたが、そっちによれば正面方向にしか撃てないみたいだ。追われてるときに後ろに向かって──とかは無理そう。
あとは本船の強度ではってことは、もっと強度レベルや改修を進めれば回数が増やせるのかもしれない」
突然解放されたアクション『収束音波砲』の仕様を簡単に確認した後は、とりあえず目の前の船楽器の試し弾きに戻っていく。
五つの内、左から右に行くにつれて音は高くなっていき、強く踏むほどに音は大きくなるようだ。
綺麗な音階にはなっておらず、どれも大型生物の鳴き声のような奇妙な音を奏でていた。
「これは良い音なのかどうか、さっぱりわからないんだが……」
「他の人はどんな感じなんだろ。うちだけ、こんなモンスターの咆哮みたいな音なのかな? だったら嫌だなぁ」
「でも変わってるってんなら、ルサルカの興味も引きやすくなったりするかもよ」
「とりあえず凡庸ではなさそうだしな。普通よりはいいと思って進むしかない。
オレたちはもうこの船と一蓮托生の思いでやっていくしかないんだし、信じて先に行こう」
「だね~」「だねぇ」
左側にあるペダルと別に薄く出っ張った部分を踏むと、またクルンと回転してペダルが隠される。
「ねぇ楽器を試し終わったことだし音波砲、撃ってみたくない?」
「一回しか撃てないわけじゃないから、どんな感じになるか試し撃ちするのはいいかもね」
「いざというとき、どんな軌道でどんなふうに飛んでいくのかも興味あるしな」
操作は操舵室にて行えるとのことなので、周囲を警戒しつつもさっそくそちらに入っていく。
収束波動砲は完全に音声認識でトリガーが出てくる仕様だが、収束音波砲はボタンでトリガーが出るようになっているので『間違えて波動砲撃っちゃった!?』──なんて事故は起きない。
ハンドルの右側にある『ジェット』の赤ボタンの斜め下に、黄色の『収束音波砲』の準備ボタンが追加されていた。
しゃちたんがポチッと黄色ボタンを押し込むと、船の前方からガチャンガチャンという音が聞こえ、運転席の左サイドからは下から一脚スタンドにオモチャのような銃がついたものがせりあがってくる。
銃口の先には、十インチほどの照準モニターが付いていた。モニターには既に船の正面が映し出されている。
「これがトリガーか。運転中は、もう一人ここに射手がいるって感じだな」
「それよりも私は船の前の方がガチャガチャ言ってたのが気になるんだけど……見に行ってみる!」
船に異変があったら大変だと、しゃちたんが真っ先に船の先のほうに飛び出していく。
ブラットとHIMAもその後を追って、何が起こったのか確かめてに行ってみれば、船首から角のように伸びた楽器の下の面から、巨大な黒い銃口のようなものが飛び出していた。
「あれって収束波動砲のときに見た、マニュアルに画像が載ってた砲身だよな。同じ砲身を使って撃ち出すのか」
「派生アクションってアナウンスがあったしね。波動砲ありきなんだと思う」
「なんか強そう! ちょっと撃ってくるから、そこで見てて!」
しゃちたんは、はしゃぎながらまた操舵室に戻り触手を伸ばして銃を握る。
銃口は上下左右ある程度方向を変えることができ、動かすたびに船から突き出ている砲身も連動して向きが調整されていた。
そしてトリガーを引いてみれば、まず半分のところで止まる。
ヒュォーーと大型のモンスターが大きく息を吸うような音が船楽器の方から響きはじめ、それが止んだところでカチャッと音がして完全にトリガーが引けるようになった。
しゃちたんは、その瞬間グッと奥まで引き金を引いた。
すると砲身からボォオッ!と、スピーカーから流れるような重低音を鳴らしながら指向性を持った音波を飛ばす。
「こんな感じか。こっちはザラタンの破壊光線と射程が同じだっていう収束波動砲と比べて、かなり短いな。
一〇メートルくらいから威力が一気に減衰していってる」
ブラットが録画をしながら、水面に起こった波を双眼鏡で観察しそう口にする。
「まあ言っちゃえば、ただのでっかい音だしね」
その後、ブラットとHIMAも一発ずつ試射しておいた。
また収束波動砲の方は無理だったのに対して、こちらは強化ができたので、万能資材の効果分を使用して〝5〟まで強化。
威力が上がり、適正射程も一〇から一五メートルまで伸びた。ただし使用回数と三時間のクールタイムは変わらなかった。
と、そんなことをしていたら同盟のチャットの方に情報が流れてくる。
「Zooooo!のメンバーが、ルサルカがいるって言われてる海域の座標を見つけたらしいぞ」
「おー! ついに見つかったんだ! どうする? 行っちゃう?」
Zooooo!のメンバーたちは、ブラットたちに先に見つけられてしまっては立つ瀬がないと、最優先でルサルカの居場所を探し回っていたのだ。
そのおかげで、ブラットたちが普通にその情報に辿り着くより早く座標の特定に至った。
「座標からしてもっと東側に進む必要があるみたいだし、まずは近場のポータルの島を見つけておきたくない?」
「だな。とりあえずルサルカの座標の方に行ってみるか」
すぐに行く行かないに関わらず、近場で情報収集したり下準備をする期間は必要になってくる。
ブラットたちはナイス!とチャットに返事をすると、六合の宮のあったこの座標より北北東にあるという座標を目指して船を出発させた。
ルサルカの座標を目指して進む道中。狩れそうな海賊は狩って、無理そうなら逃げるという普段のスタンスでグニャグニャとした航路を進んでいた──そんなときのこと。
不意に霧が立ちこめはじめ、周囲が一切見渡せなくなる。
操舵室の天窓に上って周辺警戒していたブラットとHIMAは何事かと立ち上がり、しゃちたんはいつでも動けるようにハンドルとアクセルに触手を添えたまま念のため船を停めた。
「これは敵襲かな?」
「モンスターの仕業かもしれないね」
「なんにしても、戦闘になってもいいように準備はしておこう」
ブラットは【針触覚】を両手から出して、死角からの攻撃にも備えて船の甲板に向かう。
HIMAも槍を構え、ブラットとは反対の方向で待機する。
緊張の沈黙が続くこと三分ほど。ブラットたちの体感ではもっとあったその時間は、不意に終わりを告げられた。
「……は?」「え?」「はい?」
ブラットたちは海の上で霧に包まれていたはずだった。しかし突然霧が消え、視界に飛び込んできたのは自然に囲まれた森の中。
船の周りは栄養豊富そうな大地に変わり、青々とした植物がそこら中に生い茂り、うっそうとした木々が空を覆って薄暗くする。
船の上に乗っていなければ、ここが海の上だったということを忘れてしまいそうな光景だ。
「な、なにこれ!?」
「幻覚の類だろうな。モンスターの罠にはまったか?」
「しゃちたん、船は動かせる?」
「やってみる! ────動いた! ……あれ? でもなんで? ここ地面の上だよね?」
「動いたってことは、ここは地面の上なんかじゃないってことだ」
まるで海の上にいるかのように、地面を滑り船は森の中を進みはじめる。
だが本当に船が地面を通れたとしても、通った後すら残らないのは不自然だ。
また船を停めて三人で確認してみれば、後方には何の後も残されていなかった。
「ってことは、この見えてるのが全部偽物ってこと……でいいの?」
「だろうな。……HIMA? どうかしたか?」
「海の上、森……霧……………………あ!」
一人考え込むように黙っていたHIMAは、突然思いついたかのように船室の倉庫にアクセスしてドレークの手記を取り出した。
そしてパラパラとページをめくっていき、該当の個所を指さしながらブラットとしゃちたんに見せてくる。
「今回のこれは、きっとこいつの仕業だよ」
「「オクトパス・イリュージョナー?」」
「そう。海の上で霧に囲まれ、次の瞬間には森になっていた──って、まさに今の私たちと同じ状況じゃない?」
「「たしかに」」
オクトパス・イリュージョナーについて記載されている項目にも空欄があったり、単語のみになっていたりと読みづらかったが、【ディテールド・アナライザー】で空欄をいくつか埋めて、情報を解明してまとめていくと以下のようなことが判明した。
まずこの海の上に突然現れた森は、タコのモンスター──オクトパス・イリュージョナーの幻術。
タコスミを吐くように霧をまき散らし、吸盤を周囲に切り離して、そこからプロジェクターのように霧に森を投影させる能力を持つ。
まともな攻撃能力を持たない代わりに強力な空間操作スキルを有していて、霧の範囲外に出ようとしても真反対側からまた霧の中へと、出口はなく空間自体がループしている状態。
ただ出ようと船を進ませるだけでは、永遠にこの幻想の森の牢獄から抜け出すことはできない。
オクトパス・イリュージョナーは、そうやって閉じ込め森だと思って海に飛び込む者や、食料が尽きて弱った人間を食らって生きているのだ。
「直接攻撃してこないで、勝手に弱るのを待つとか嫌らしいタコだな」
「オクトパスなんちゃらじゃなくて、もう変態ダコでいいよそんなやつ」
「正式名称は長いし、私たちはそうやって呼ぶことにしよっか」
「「異議なし」」
ではどうすればいいのか。それもちゃんと書かれていた。
強い光で周囲を照らすと森の映像を強引に保とうとして、投影している吸盤に負荷がかかる。
負荷がかかった吸盤は赤く輝くので、それを見つけて破壊する。切り離された吸盤は脆いので、弱い攻撃でも充分破壊可能とのこと。
これを続けて海に浮かぶ吸盤の数を全体の半数以下にすることができれば、映像が維持できなくなり霧は晴れ空間のループも解ける。
「光かぁ。私やブラットの電撃とか、HIMAの炎じゃだめかな?」
「今のオレたちの出力だと、ちょっと足りないかもしれないな」
「けどただ光ればいいだけなら、私たちには閃光筒があるよね?」
「ああ! そう言えば、なんだかんだあちこちで手に入れてたから、収納庫にたくさん入ってたっけ」
「だな。だから、そっちを使っていけば光の問題も解決すると思う」
ループが解けたらその間に全速力で逃げればいいのだが、逃げるのに失敗すると二段階目に突入してしまう。
二段階目は幻想の森ではなく、透明の壁で巨大な水槽のように囲まれて閉じ込められるが、このときオクトパス・イリュージョナーははじめてその姿を海上に現してくる。
空間に作った透明の壁を壊されないように妨害しながら、その外側にまた霧を吐き出し吸盤をまき散らし、時間を稼いで最初の段階に戻してから自分はまた海に戻って人間たちを閉じ込めるために。
「これを延々と繰り返してくるってわけだね」
「けど攻撃能力は大したことないらしいし、失敗しても光源がある限り何回でもチャレンジできそう。
逃げるだけなら私たちでもできそうだね」
「けどさ、どうせなら逃げないで倒したくないか? ここに書いてあるのって弱点だろ絶対」
ブラットが指し示す手記の項目は、もともと空欄で隠されていた場所。けれど今はザラタンのカギの効果で解明することができていた。
その一文には『オクトパス・イリュージョナーの目と目の間に長い槍を突き刺したとき、突然死んだ』
と記載されていた。
突然死んだということは、以前の猫の首領のときのような『エクセプショナルダメージ』判定があるとみていいだろうとブラットは考えた。
もしそうならばオクトパス・イリュージョナーが格上だったとしても、充分ジャイアントキリングの可能性があるということ。
「しかも手記によれば、こいつの攻撃能力は大したことはない。
こっちの物資が尽きない限り何度でも安全に討伐チャレンジできるんなら、実は美味しい敵なんじゃないか?」
「そうなのかもしれないけど……、本当はブラットが戦ってみたいだけでしょ?」
「バレたか。HIMAには隠し事ができないな」
「当たり前でしょ。何年一緒にいると思ってるの」
互いに視線を交わして笑い合う二人。しゃちたんはその入り込めない二人の世界の雰囲気にため息を吐きながら、強引に話を戻していく。
「はいはい。わかりあってるのはわかったから、話を進めるよ」
「「はーい」」
「じゃあ、とりあえず戦ってみるって方向でいいんだね?」
「ああ、やってみよう」
「倒せるなら倒して報酬も貰いたいしね。なんか扱い的に中ボスっぽい気がするし」
「中ボスっていうと、もしかして猫の首領よりも上かな?」
「上なんじゃないか。もしそうだったなら、報酬もうまうまだ」
「よしやろう!」
「しゃちたんも現金だなぁ。でもまあ私も、うまうまな報酬が欲しいからね。賛成だよ」
「じゃあ、早速やってみるか」
「「おー!」」
三人そろって拳を……一人は触手だが挙げて、行動を開始した。
目は多いに越したことはないと船を停めた状態で、しゃちたんを二人で抱えて空へと飛ぶ。ただしすぐに船に戻れるように、高度はそこまでではない。
上げ過ぎたところでどの道、遠すぎる場所は光の範囲外だろうから見る必要はない。ある程度、見渡せられれば充分だ。
「それじゃあ、投げるぞ」
閃光筒は音も激しいので、二人にちゃんと確認を取ってからブラットはポイっと海の方へと投げ込んだ。片手ずつで抱えてくれている二人の片耳は、しゃちたんが塞いでいるので安心だ。
「もういいぞ!」
ピカッと光り轟音が鳴り響く。光が収まった瞬間を見極め目を開き、ブラットたちは周囲を確認していく。
すると光の中心地に明らかな赤色が、そしてそこから離れるほどにわかりづらくなっていく赤く変色した森の部分が草木を透過して現れた。
ブラットは必死に赤への変色が収まるまでの間に、目を皿のようにして場所を頭の中に叩きこんでいく。
「十六個か、結構あったな」
「「え?」」
「どうした? 二人とも」
「いや、私は四つくらいしかわかんなかったんだけど……」
「私は六個かな。ほんとにそんなにあったの? ブラット」
「ああ、あっただろ。そりゃあ、少し離れた場所はわかりづらかったけど、例えばあそこ──とか!」
ブラットは少し離れた場所に向かって、魔刃手裏剣を投げ込んだ。そこはHIMAやしゃちたんでは、何の変化もないと判断した場所だ。
けれど魔刃手裏剣は森の中へと飛んでいって明らかに何かに突き刺さり、その瞬間その周囲の森の映像がビリビリと揺らいでただの霧に一瞬だけ変わって元に戻る。
これは投影機代わりの吸盤に、ちゃんと当たったという反応。つまりしっかりとあそこにあると、ブラットだけは見えていたということだ。
「どういうこと? ブラットって、そういう特殊な目のスキルとかあったっけ?」
「特性で妖精の瞳があるが、今は関係ないしただ見て違うなって思ったところを覚えただけだぞ」
「じゃあ、他にはどこにあるとかわかる?」
「ああ、あそこにあそこ。それにあっちも!」
次々と光の中心地から少々離れた場所に魔刃手裏剣を飛ばしていき、吸盤を壊した反応が投げた分だけ起こっていく。
「これは……吸盤壊しは私たちちょっと役に立てなさそう。
私は念のため周辺警戒に戻って、しゃちたんは船を動かせるように詰めていたほうがいいかも」
「ってことは、二人はわからなかったのか」
「うん。たぶんどこかわかってても、あんな中心地から離れた場所に届いた光で小さく変色した吸盤なんて、普通は見極められないよ」
「そうかなぁ」
「「そうだよ」」
二人はブラットの邪魔になるからと船に戻り、ブラットは黙々と吸盤を破壊する作業をしていく。
周辺が終わったら、船を動かしてまた閃光筒を投げ次の破壊作業にと流れるように。
そんな光景をHIMAは操舵室の天窓の上で、しゃちたんは操舵室で、周りの警戒はしつつもただ見つめることしかできない。
今もまた、ブラットは二人ではまったくわからなかった場所に、魔刃手裏剣を投げて成功させる。
「やっぱ、あんなとこにあるの見えないなぁ。もしかしてあれ、色葉のときでもできるとか?」
「それはないんじゃないかな。私らだってそうだけど、基本的にこっちの仮想の体は現実の体よりずっと肉体的な能力が高いんだから。
視力も動体視力も、反応速度や記憶力もね」
「あー、だからあんな超人みたいなことができるんだ」
「そうだね。でもだからって、やってできるかって言われたら……できないでしょ?」
「あっ、そうじゃん。私できなかったじゃん」
「でしょ。優れた体に入っていても、どうしても私たちは元の自分の感覚を引きずってる。
上位プレイヤーとか言われてる私だって、たぶんこの体の持つポテンシャルを八〇パーセントくらいしか出せていないんだと思うの」
「じゃあ普通のプレイヤーたちは?」
「せいぜい五〇とか六〇とかじゃないかな。普通はそこから残りのパーセントを、職業だったり種族のスキルを使って埋めてくんだよ。
けどブラットは違う。そんなスキルとか職業に頼らずに、あの体の一〇〇パーセントを引き出してる。
だから、ああいうこともできるんだと思う。本当にあの体に適応しちゃってるんだよ」
「じゃあそんなブラットがスキルとか職業を、これからもっと増やしていったらどうなるのかな?
だって本来スキルで穴埋めされる部分は、もう自前で埋めちゃってるんだからさ」
「わからないけどブラットがこれから増えていくであろう全てのスキルも、一〇〇パーセントのポテンシャルを引き出せるようになったのなら……、二〇〇パーセントとか頭の悪い数字になっちゃうのかもしれないね」
「うわぁ、それもう最強じゃん……」
「今はまだ進化段階が低いから燻ってるけど、いずれは……ね。そうなるかもしれないね」
「なんか遠く感じてきちゃったなぁ」
「そんなことないよ。ブラットはブラットだもん。誘えばいつだって、私たちと一緒に楽しく冒険できるんだから」
「長年付き添ってる人が言うと説得力あるなぁ」
「そりゃあもう、私のブラットですから」
「いつから、あんたのものになってんのさ」
「外堀は埋めてこれてるから、後は本人を落とすだけだよ」
HIMA……というより葵は、色葉の両親から付き合っていると思われていることをちゃんと自覚していた。
のほほんと「恋愛?なにそれ?ゲームがそれでうまくなるの?」と、色葉本人はいつまでたってもそんな感じなのだが。
「なにそれこわっ!?」
「恐いとは失礼な!」
そんなふうに二人で話に夢中になっていると、それに気が付いたブラットが大きな声で話しかけてきた。
「おーい、なに二人で仲良く喋ってんだよー! 寂しいだろー! オレも仲間に入れろー!」
「ほら、寂しがり屋だから、どんなにこの先、強くなっても私たちと一緒だよ」
「あははっ、ほんとだ」
「こらー! 二人だけでおしゃべりとかズルいぞー! 喋ってないで動け動けー!」
「「はーい!」」
まさに今は敵の腹の中だというのに、ブラットたちは相変わらずな様子で残りの吸盤を破壊する作業に集中していった。
次は火曜更新予定です!




