第四三話 魔道具事情
期間限定イベントまで残り数日というところで、ビアバレルから連絡が入った。
イベント前に何とか完成させようと頑張ってくれたらしい。
ちょうどイベントに向けて三人で連携の確認をしていたところだったので、HIMAも付き添いで一緒にビアバレルの元へとついてきてくれた。
「ああいらっしゃい! 待ってたよ!」
「「「こんにちは~」」」
ブラットに用意されたのは胸元を覆う革製品のような質感の胸当てと、メインが木材系だと思えない銀のような質感をした腕輪。
前者のアイテム名は【毒蜥蜴王革の胸当て】。
硬い鱗がメイン素材だったとは思えないほど名の通り革のような柔軟性に優れ、かつ頑丈で衝撃もある程度吸収してくれる上に、サクラが作ってきた衣装のような完全な復元能力はないが、ある程度の傷までなら自動で治るエンチャントまでついていた。それにサイズが変わっても着られるようにもなっている。
さらに元となったヴェノムキングリザードの鱗のおかげか、軽微な状態異常耐性までオマケでついていた。
装飾はごちゃごちゃとしていないが、シンプルでセンスのいい模様が数か所刻まれており、裏地の目立たないところには小さくビール樽のマーク──ビアバレルの作品を表す刻印がされていた。
後者のアイテム名は【月光銀の腕輪】。
腕輪の方も進化してサイズが変わっても着けられるように調整機能が付いていて、五ミリ程度の赤い宝石のようなものが五か所にちりばめられた、これまたお洒落な仕様になっていた。
ちゃんと裏側の見えないところには、ビール樽のマークも小さくちゃんとついている。
機能も素晴らしくブラットが腕に嵌めると、腕の杖としての能力を底上げして消費MP減少、MAT上昇の効果がしっかりとついていた。
また【魔刃】をよく使うと言っていたのを覚えてくれていたようで、切断系の魔法にだけだが少しだけプラス効果が出るようにまで調整されていた。
まさにいうことのない出来にブラットも大満足だった。
そして支払いの前に、これらの装備を受け取ってしまったということは──。
「いいよ~! 最高だよ~! あ、ちょっとブラットさんは斜め下に顔を──表情は優し気に──ああああ! いいよいいよ! そのまま、そのままでお願い!
しゃちたんさんはもう少し目線を上にして胸を張るような……グゥゥウッド! さいっこうだよ! 二人とも!」
「じゃあビアバレルさん、次はブラットにこういうポーズをしてもらってですね、しゃちたんは──」
「おお、良いですね! HIMAさん。その案いただきです! では──」
「ねぇ……ブラット」
「なんだい……しゃちたん」
「なんでHIMAまで撮影する側に回ってんの?」
「わっかんない……」
わざわざ課金で用意した専用の撮影ブースに通され、様々な壁紙映像と小物の前で様々なシチュエーションに合わせたポーズや表情を求められ、言われるがままにブラットとしゃちたんはそれをこなしていく。
その間にHIMAはいつの間にかビアバレルと同じ場所に立ち、好き勝手に同じようにスクリーンショットを撮りまくっていた。
別に彼女なら撮られてもいいのだが、なんだか釈然としないまま撮影会は幕を閉じた。
ブラットとしゃちたんの写真を好きなだけ撮れて大満足なのか、ビアバレルは終始ご機嫌な顔をしている。
「もう支払いなんてなくていい!」
「そうだそうだ! これはもうプライスレスだ!」
「いやそれじゃダメだろ。こっちが出した素材以外にも使われてる分はビアバレルさんが自分で出してるんだろ?」
「というかHIMAはどの立場なのさ……?」
なぜお金を払う側が値段をつり上げようとするのかさっぱり分からなかったが、せめて向こうが出した分の材料費分ぐらいは負担すると交渉していく。
それでもメインに使われたのは自分たちが出した物だったこともあり、二点頼んだブラットでも総額は八万bと技術料や時給すら考慮されない激安特価。
おそらくビアバレルが自腹を切った分も全て補完できていないような気までするが、本人はそれで間違いないと言って聞いてくれない。
この性能でそれはさすがに……とは思ったが、強硬にそれ以上受け取ろうとしないビアバレルに根負けした。
「また是非君たちの写真を撮らせ──じゃない、装備を作らせてね!」
「うん、まあ、安いのは実際ありがたいし……たぶんまたお世話になるかもしれない。そのときはよろしく、ビアバレルさん」
「こっちもよろしくね、ビアバレルさん」
「もちろんだよ! あとHIMAさんも、今日の撮影会最高でした! あなたの意見はどれもいいものでしたよ」
「それは良かったです」
二人はサムズアップして何かを分かり合ったように、互いに目を合わせて頷きあっていた。
その翌日。ブラットは今日は一人で零世界への扉の前に立っていた。
その理由はもちろん、あちらの世界に行くためというのが大前提だが、まずあちらでの戦闘の熱量を忘れたくないからというのが一つ目。
そしてサクラの衣装をイベントのときに使えるよう持ち帰りたいと思ったのが二つ目だ。
本来ならいちいち持ち帰ってしまうと、次に行くときにもまた衣装を持っていくために貴重なアイテム枠を消費することになるため輸送できるアイテム数が減ってしまう。
だが今回のイベント報酬をより多く取得するためにも、ブラットは今できる最高の状態に仕上げておきたかった。
本来ならまだ手に入れられない、手に入れにくい、または運が必要な、そんな有用なアイテムをできるだけ確保するほうが先決だ。
送るものがなければ、いくら枠があってもしょうがないのだから。
それにだ。前に行ったときよりも、さらにブラットは実力をつけている。
種族レベルは三十を超えカンストも見えてきた。職業も逃げ系以外に全力で中級の一レベルまであげた【雷術師】の職業だってある。
遠距離がやや弱かったブラットだが、これで幾分か補強もできたはずだ。
なにか妙なことが起きているかもしれないが、ここまでやっておけば生き残ることくらいはできる。
それだけの自信が持てたのでイベント前に原因の一端だけでも見つけて、それに対処するためのアイテムなんかも探すことができるかもしれない。
そんな様々な思惑を抱えて、ブラットは再び零世界への扉を開いた。
目を覚ますと外が明るくなっていた。
本当にブラットの肉体が目覚める瞬間に魂が同期されるようだ。ちゃんと眠気もなくスッキリと目覚めることができた。
「よし、まずは荷物整理だ」
すぐに立ち上がって【毒蜥蜴王革の胸当て】【月光銀の腕輪】も、アイテムスロットから取り出して身につけていく。
こちらでも着け心地は悪くない。軽く体を動かしてみるが、どこかが引っかかったりなどもなかった。
「気を付けることと言えば、こっちでは腕輪の付いた方を切り離したら戻ってこなくなるかもしれないから注意だね」
ゲームでは【暴走細胞】狙いで【部位自切】で腕を食べさせても、腕輪はちゃんと討伐後にゲーム内の法則によって戻ってくるが、こちらでは腹を掻っ捌いたりしなければ戻ってこないだろう。
他にも直ぐに使いそうにない物資は部屋に置いていき、代わりに置いていった配給券をアイテムスロットにしまっておいた。
まず今日はこれを使ってベッドや家具を新調したいのだ。ブラットはこちらでも快適に暮らすことを諦めていないのだから。
「もう、こっから出ちゃおう」
ブラットは地球での常識として玄関から出入りしていたが、こちらの住民は飛べるのなら平気で窓から出入りしている。むしろ飛べなくても壁を上って入っている者までいた。
それに物資が貴重なこの国では窃盗は重罪、国外追放確定でほぼ死罪と同義。人類一丸となって生きぬこうとしている中で人の部屋に侵入して物を盗もうという者はまずいない。
扉の鍵は勝手に住み込まれたり、物置のように使われないようについているだけだった。
郷に入っては郷に従えと、鍵など締めずに窓からパタパタ飛び出した。
「あれ? ガンツたちがいる」
今日は別に早起きでも何でもなく、むしろこちらでは少し遅い位の時間だ。起きていても不思議ではない。
無視するのもなんだとブラットはそちらの方へパタパタ降りていく。
「おお、ブラット。ちょうどお前を呼ぼうと思ってた──って、なんだまた新しい装備が神の恵み箱に入ってたのか?」
「ああ、朝起きたら入ってた」
「相変わらず羨ましい力だな」
「そうだ、ボンド。これよかったら使ってみないか?」
「お? なんだ?」
ボンドに渡したのは【肥醜鬼・精鋭戦士の戦鎚】。ファットゴブリン・EWが落としたハンマーだ。
ボンドがハイエアウルフ戦やヤツハネガラス戦で二度も壊してしまった物よりグレードが高い。
それに前まで使っていたのは土木工事にでも使いそうなただの大きなハンマーだったが、こちらは戦闘に使うことを念頭においたウォーハンマー。
頭の部分は小さくなったが、その分攻撃力はずっと上がる。
BMOでは売りに出してもそこまで高く売れるわけでもなく、何かの素材に使うこともなかったので、ボンドなら使えるんじゃないかと持ってきたのだ。
ブラットの体よりも大きなハンマーを受け取り、少し眠そうにしていたボンドの目が大きく開いた。
「こいつぁいいもんだ……。俺が使ってもいいのかよ」
「ああ、なんか入ってたけど俺は使わないからな。ボンドが使ってくれってことじゃないか?」
「神様が俺にってか!? 嬉しいじゃねぇの! 大事にするぜ!」
「そうしてくれ。多分それならあの大技を使っても、そうそう壊れないはずだ」
「だろうな! これならもっと思う存分戦える!」
「「「「……………………」」」」
喜ぶボンドをよそに、何かを期待する視線が四つブラットに突き刺さる。
「あの……ごめん。それしかない」
「「「「……………………」」」」
「なんかごめん……」
期待から反転、ボンド以外が分かりやすく肩を落とした。
もしも槍やナイフ、弓やメイスが手に入る機会があれば、持ってこようと心に留め置くことにした。
「それで俺を待ってたって言ってたけど何かあったのか? ガンツ」
「俺たちにとっては当たり前のことすぎて言ってなかったんだが、この国では日常生活でも隊で行動を共にすることが推奨されている」
「推奨ってことは別にいなくても怒られることはないのか」
「ああ、だが襲撃が来たときに合流で手間取られても困るってことだ。
だからどこかに行くにしても大体互いの居場所は把握しておく必要がある。
それにお前、まだ鐘の音を完全に把握できてねぇだろ?」
「うぐっ、まあ方角はなんとなく」
「なんとなくじゃ困んだよ。んで昨日配給券の引き換えに行くって言ってただろ、俺たちもかなり貰ったしどうせなら一緒にってことに昨晩遅くになったんだよ」
「なるほど」
ようは基本的に隊は一緒にいなくちゃいけないから、配給券の交換も一緒に行こうぜ。ということらしい。
一枚しかないが魔道具の交換券もあるので、そこにも連れて行ってくれるというのならブラットもありがたい。
前とは違うもっと品質のいい物が置かれている交換所へ行くと言われて向かっている道中、町の中だというのに外壁ほどではないが、中規模な壁と開きっぱなしになった大きな門があった。
開け閉めしている形跡はなく、基本的にここの門は開いたままにしているのがうかがえる。
「モンスターどもに中に入られちまったときは、ここを閉めて足止めすんだよ」
「こっから先は重要な施設も増えてくる。俺たち五級戦士なんかは用がないときは、うろつくような場所じゃないからな」
ボンドとエルフのワーリーが、門と壁を見上げるブラットにそう説明してくれた。
それに頷き返しながら、ブラットはそこを通ってより町の中心地へと入り込んでいく。
壁より内側は重要施設が増えてきたからか、ブラットたちが普段住んでいる場所よりも建物の構造がしっかりして頑丈そうなものが多くなってきた。
それから少し行ったところに、お目当ての場所はあった。
今回の交換所は以前の商店街のような小さな建物ではなく、モンスターの襲撃を受けても扉を閉めればしばらく籠っていられるくらい一軒一軒しっかりとした作りをしていた。
窓には割られても簡単には侵入できないよう、鉄格子までガッチリと嵌められていた。見ようによっては牢獄のようである。
しかし別に中の人が捕らえられているわけもなく、普通にこちらも中へと入っていけた。
一番最初に入ったのは白に塗られた頑丈そうな扉の食料品交換所。
内装はいたってシンプルで特別飾り立てることもなく、来る人が見やすいように加工された食品が置かれていた。
品はやはり干し肉がメインだったが、それらも分厚く質も良さそうな肉が使われている気がする。
それ以外にも肉は肉でもソーセージやハム。臭いはきつそうだがチーズもあるし、漬物だが野菜もレタスの芯のようなものが一種類だけ置いてあった。
ガンツたちは白券を握り締め、それらを嬉しそうに物色していく。
(うーん……。グレードの高い交換所でもこういう感じなのか。
それでもちゃんと質は良くなってるし、私も少しここで仕入れておこうかな)
BMOから持ってこられた食料はまだ少なく、こちらの食料品にも頼らなくてはならない。
ブラットの肉体は別にそれでも問題なく食べられるが、精神的に疲弊はする。
これは慣れるのが早いか、それともBMOからの食料供給を安定させるのが先か。どちらか怪しいところである。
食料品を交換した一行は青の扉の『武器、防具、衣服』、黒の扉の『雑貨』、緑の扉の『嗜好品』の順に回っていく。
青ではガンツは愛用の槍をヤツハネガラス戦で無くしたばかりなので、ほぼ全ての青券を使って一番いい槍と交換していた。
他のメンバーもブラット以外は、いつもよりもいい手入れの品や防具を買い替えたりしていた。
ブラットはデザインはともかく、ゴワゴワじゃないパンツや衣類があったので優先して買っておく。
黒の雑貨では真っ先にベッドを探してみれば、手持ちのほぼ全てを放出すれば色葉の肉体であったとしてもギリギリ妥協できるレベルのマットレスがあったのでそれに決めた。
(ただの木の板にしか思えないベッドにこれを敷けば、かなり快適になるはず)
「なんだ? そんなもん交換するのか。もったいねぇな。寝床なんて横になれればなんだっていいだろうが」
「何言ってるんだ。睡眠を馬鹿にするもんじゃあない。いいか睡眠って言うのは人生の──」
「お、おお……そうか。邪魔して悪かったな。俺はあっちを見てくる!」
「ここからが重要な話だったのに。いったいなんなんだ」
いつも以上に気迫をみなぎらせて睡眠の重要性についてブラットは語ろうとしたが、ボンドはこれは触れたらめんどくさいやつだとすぐに察して逃げていった。
(他にもシーツやブランケットなんてのもあるけど、今回はマットレスだけで精一杯だな。
けどシーツだけはせめて、もう少しまともなやつに交換しておこう)
次に欲しかった綺麗なシーツは足が出てしまっているので交換はできそうにない。なのでボロでも汚くもないが、手触りが微妙なものを選んだ。
そんな懐事情なのでブランケットなど無理だし、もっと機能性のある棚もあったがそれも手が出なかった。
(黒券をもっと稼がなきゃ!)
それから嗜好品の店にいったが、こちらは酒やたばこはもちろん、茶葉や菓子類も前のところより種類が豊富だった。さらにこの面子では誰も興味を示してはいなかったが、太鼓や笛のような楽器まで用意されている。
菓子類は砂糖自体珍しいのか、はたまた採れないのか、甘味類はどれも素材の甘さで補うような物ばかり。
ガンツたちは酒とたばこに手を出していき、ブラットは前とは違う茶葉を交換していった。
そして最後にブラットが一番来たかった、黄色の扉の建物『魔道具』の交換所。
こちらの世界にはどんな物が置いてあるのかと意気揚々と入っていくが、ブラット以外のメンバーはこれまでで一番興味がなさそうだ。
店の内部にはケースに入れられた品とセットで説明文が記載されていた。
ラインナップは小型ながら中に入れたものを冷やしてくれる物、飲み物や食品を温めてくれる物、水を入れると氷に変えてくれる物、涼しい風を送ってくれる物。
冷蔵庫、電子レンジ、製氷機、扇風機などの電化製品を彷彿とさせるような品物の数々がそこにはあった。
贅沢は敵だと言わんばかりの空気が流れるこの国で、それをあざ笑うかのような物ばかりである。だがしかし──。
「いや、どれも交換できないじゃん……」
「だから言っただろう。一枚じゃ大したものは交換できないってな。
一枚で交換できるとなると、ほら──そこにあるちっこい明かりが精々だ」
「ただし燃料が欲しいならチケットをもう一枚用意しなきゃいけないけどな」
「世知辛い……」
ガンツが指さす先にあったのは、子供のブラットの握りこぶしほどもない小さな光を放つライト。
だというのに純人のトッドが言うように、それを起動させるための燃料は一枚の中に含まれていない。
「ちなみに燃料って、なにを使ってるんだ?」
「モンスターの廃棄物を溶かして抽出した魔力や、魔力は多いが何の適性もない人間なんかが仕事として注いだ魔力を固めた物らしい。
ちなみにそれを成しているのは昔の賢者さまが用意してくださった、人類が守りぬかねばならない重要な魔道具の一つであり、その燃料は国の重要施設を動かすのにも使われている」
物知りなトッドがブラットの質問にすぐに答えてくれる。
「賢者……っていうと、オレみたいに神の恵み箱を持った?」
「そうだね。その方の作ってくださったいくつかの魔道具のおかげで、人類は今これだけ安定した生活を送ることができていると言っても過言ではない」
「それほどなんだ。じゃあその燃料を作る道具以外には何があるの?」
「この国の住民全員に行きわたらせるほどの水を生み出す魔道具が次に有名かな。
今稼働しているのは四つらしいが、もし今後一つでも壊れたら大勢の人が国を追い出されることになるだろうね」
「まじか……」
「ああ、だからそこも全力でモンスターたちから守り抜かねばならないんだ」
作ることはおろか直すことも、その賢者にしかできないとされている魔道具が他にも何点かあり、それがこの国をまだ支え続けている。
さらにそんな話を続けてトッドはブラットに聞かせてくれた。
「似たような……代替品にはならなくても、それに近いような物を作れる人もいないのか?
ここには色んな魔道具が置いてあるじゃないか」
「それも重要な機構の部分は、賢者様が作られた魔道具で作られているそうだよ」
(……いやちょっと待ってよ。そんな綱渡りな状況なの? この国は)
もともと余裕のある国ではないとは分かっていたが想像以上にまずかった。
まさかその賢者の作った重要な魔道具のどれかが一つ不調をきたすだけで、残っている人類全員がぐらつきかねない状況だとは思いもよらず、ブラットは背筋が寒くなる。
(これ……もしかして思ったより時間は残ってない?
作ることもできず直す方法もない道具に、人類全体が大きく頼って生きてるって絶対に危ないじゃん。
魔道具のことも何か考えないとダメかも。劣等種の生産に適性ありそうな子を進化させればいけるかな?
うーん……でも純粋な戦力も欲しいんだけどなぁ)
結局そのまま誰も魔道具を交換することなく、その場を後にした。
随分と静かになってしまったブラットの様子を見て、ガンツたちは何も交換できなかったことがショックだったのだろうと勘違いする。
「ブラット。お前なら俺たちと違ってまだ伸びしろは十分にある」
「そうそう! もっと大きくなれば、あそこにある魔道具の一つや二つ簡単に手に入れられるようになるさ!」
「──こんなことで落ち込むんじゃない」
「……え? ああ、うん。それもそうだな!」
ガンツ、ワーリー、それにここまでずっと無口だった小人のデンまで気を使ってくれていることに気が付いたブラットは、こんなことで心配させてどうするといつもの調子で返事をした。
──が、それを見計らったかのように突然、『カンカカカン──カカカカカン──カカン』という鐘が町中に鳴り響く。
「っち、もう襲撃か! もう少しゆっくりさせろってんだ」
「東と北、ワーム系、中規模か。ブラットも行けるな?」
ぼやくボンドをよそに、ガンツがそうブラットに問いかけてくる。彼なりの、もう引きずってないかの確認だ。
だが、それなら答えなど決まっている。
「もちろんだ。寝ている間に鍛えた成果、ガンツたちにも見せてやるよ」
「……はぁ? なんのことか分からんが、とにかく行くぞお前ら!」
「「「「「おう!」」」」」」
次は土曜更新予定です。




