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Become Monster Online~ゲームで強くなるために異世界で進化素材を集めることにした~  作者: 亜掛千夜
第二章

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第二四話 零世界での物資事情

「アナタノコヲウマセテ? なんだろう、この国特有のお別れの挨拶かな?

 ………………って、そんなわけないよねぇ」



 いくらブラットの中身が箱入り娘だからと言っても、彼女が自分に何を求めてきたかくらいは分かる。

 だが言われたことの意味は理解できても、言われる意味が分からない。

 ブラットは倒れこむようにして、硬いベッドの上に寝転がる。



「あの子はショタコンなん?」



 正直恋愛にしても異性にしても大して興味のない色葉でも、ブラットの容姿は非常にいいと感じている。

 だがショタだ。どうみても小学生だ。自分が彼女の立場だったとしても、小学生に将来子供作ろうぜ!なんていうわけがない。



「けどそれは私の日本での常識ってだけで、こっちでは普通なのかなぁ。でも、こちとら中身は女だぞ」



 先ほどのおでこへのキスだって中身が男子高校生であれば赤面の一つでも浮かべていそうなものだが、それくらい色葉は葵に平気でされるし、彼女からも平気でしている。

 彼女にとって、女性同士のそれは仲のいい子とのじゃれあいの一つでしかないのだ。

 突然で驚きはしたが色っぽい高ぶりは一切なかったし、いざそういう場面になったところで女体に興奮するかと言えばしないはずだ。



「だって毎日自分の見てるしなぁ。見たって自分と比べて大きいとか小さいとか、細いとか太いとか、それくらいしか感じないよ」



 確かにアデルはなかなかお目にかかれない美人さんだが、ブラットの心は動いた様子はない。

 まぁそういう場面になりそうでも断ればいいか──なんて、このときのブラットは呑気に思考を切り上げ、眠気に任せて夢の世界へとその日は旅立った。




 翌日。まだまだこの世界で知っておくべきことは沢山ある。

 一回目の就寝ではBMOに帰ることを選ばず、普通に寝て起きた。


 体は子供なせいか、または寝るのが早かったおかげか、かなり早朝に目が覚めた。

 色葉の体ならあちこち体を痛めていそうな硬いベッドでも平気なブラットの肉体に感動しながら、さっそく配給券を〝神の恵み箱〟という名の手持ちスロットにしまい、直ぐに使わなさそうなものは棚に置いて階下に降りた。


 一階まで降りると、昨日案内をしてくれた管理人の老人が挨拶をしてくれる。



「おはようございます、戦士様。お出かけですか?」

「おはよう。街の散策もかねて、貰った配給券で何かと交換してこようかと思って」

「それはようございますね。こちらでも最低限の品は交換できるようにはなっていますが、見ていかれますか?」

「あ、そうなんだ。なら見せてもらおうかな」

「では、こちらに」



 住むことになった寮の管理人室は簡素な交換所としても機能しているようで、品ぞろえはハッキリ言ってよくないが、それでも最低限のものはちゃんと置いてあった。



(いちいち外に行かなくていいから、これは便利だね)



 とはいえ本当に最低限の物しか置いていないので、本来は急遽入用になった間に合わせの品を入手する程度の場所なのだろう。嗜好品や良品の類も置かれていない。

 けれどとりあえず欲しいと思っていたパンツに、いざというときの簡単な着替えを入手することができた。

 サイズの問題であるかどうか心配だったが、小人族の戦士もいるのでちゃんと子供体型のブラットにも合うものが置かれていた。


 パンツはトランクス型のものが五枚セット、部屋着は上下一組三着。布地はごわごわで、品質はよくないがそれら全部で青券二枚。

 他は粗悪な武器や防具、それらの手入れセット、獣臭のする石鹸、表面がボコボコの紙、羽ペン等がおいてあったが、スルーした。


 結局ここでは青券二枚だけ消費し一度部屋に戻ってパンツを履く。

 色葉が普段履いているショーツとは比べ物にならないザラザラゴワゴワ感にげんなりしたが、無いよりましだと我慢する。

 残りの服やパンツは綺麗に畳んで棚に置いてから、また階下に降りなおす。



「ガンツたちがオレのことを聞いてきたら、少し外に出てるって言っておいてくれないかな」

「はい、かしこまりました」



 昨日の様子だと夜遊びしていそうなので早朝に来ることはないだろうが、念のために管理人に伝言を頼み、ついでに交換所の位置などを大雑把に聞いてから外へと出た。




 この世界の人類は本当に多種多様だ。

 そのため活動時間も夜型、昼型、朝型と生物的にサイクルが違うこともあって、配給券の交換所はほぼいつでもどこかが開いている状態になっている。

 色葉のいる時代の日本もネットで二十四時間いつでも注文し商品をピザの配達より早く即時受け取れる状態なので、早朝に店が開いていないという認識もなく、それを当然のように受け入れ探しに行く。



(自分で歩いてお店に行くなんてゲームみたい。っと、ここだ)



 ガタガタの石畳を歩きながら辿り着いたのは、昔ながらの商店街のような佇まいの交換所が立ち並ぶ場所。

 早朝ごろから活発に活動する種もいるが、やはり昼型が比率的には多いので空いていた。

 大概の物はここで揃え、無い物は別途職人に注文しに行くのがこの国での常識だと管理人は言っていた。

 何の交換所なのかは配給券の色に対応した旗が立っているので分かりやすい。



(ワーリーがあるって言ってた黄色と紫の旗はないね。確か魔道具と住居だっけ。

 住居はまだしも魔道具もないか、冷やかしで見てみたかったんだけどな。

 よしじゃあ、まずは青から行ってみよう)



 見える範囲でも薄く光り輝くスライム、二本足で歩くクワガタ、人の形をした触手など異形の店番や住民たちもいる光景に少し面食らったが、BMOではそれほど珍しくもないので気にせず物色していく。


 青は武器、防具、衣類と交換できる場所。

 見やすいように並べられた棚を物色していくが、特別目を引くものは何もない。



(そもそも武器は自分の肉体と魔法の刃で今のところ間に合ってるし、防具も今着てるサクラさんお手製の衣装の方がここにあるどの防具より頑丈そうだからいらないなぁ。

 そっちもどっちみちランランとのイベント戦で手に入れた、毒蜥蜴王の鱗をBMOで加工して作ってもらう予定だし。まだお金もコネもないから作れてないけど……)



 服も機能性ばかり重視してデザインは二の次で、まったくブラットの心は惹かれない。普段着も今着ているもので十分だと判断した。

 自動修復がついていて大きく破損しなければ破れても元に戻り、汚れも勝手に落ちる。

 進化してサイズが大きくなっても、それに合わせて体にフィットするようにBMOでサクラがエンチャントしてくれているので、将来的にもこれ一着でいけてしまう。



(いずれは、お洒落にもっと衣装を揃えたいところではあるけどね。

 このままだとBMOじゃ、ずっと体操服だし……)



 早々に青券の交換所に見切りをつけて、雑貨と交換できる黒券の交換所に足を向ける。

 ここには生活雑貨から、効果の弱い回復や解毒などのポーションまで置かれていた。



(あ、これは匂いもいいし欲しいかも)



 手に取ったのは甘い香りのする石鹸。住んでいる場所で見せられた石鹸とは違い、こっちは普段使いでもいけそうな代物だ。

 BMOから輸入してこようと考えていたのだが、これならその必要もない。

 ただし獣臭い石鹸は三個で一枚だったのに対し、こちらは一個で三枚。ここいらでは高級品の類である。


 しかしいざとなれば、ブラットはBMOから物資を持ち込める。

 嫌でもこれからここで戦っていくことになるのだから、これからどんどん配給券も増えていくはずだ。

 ここでケチケチする必要もないと判断し、悩むことなく交換した。

 他にもゴワゴワじゃないミニタオル、木製のコップ、洗面器くらいの大きさの木桶も交換し、持っている黒券全てをここで使い果たした。


 次に嗜好品を取り扱う緑券の交換所へ。

 並んでいるのは酒やたばこ、茶葉、アメなど生きるだけなら必要としないものが置かれている。



(お酒やたばこに興味はないし、アメも美味しくなさそう。

 どうせ緑券は一枚しかないし、この茶葉でも貰ってこうかな)



 今のブラットの身分では水の使用には制限があるらしく、日本での暮らしのように好き勝手に使える資源ではない。

 お茶を飲むための水ですら許可を取らなければいけないので、気軽に飲める飲料ではないのだが……、そこはちゃんと見越してこちらに来ているので問題はない。

 ブラットはBMOで手持ちの全財産をほぼ使い果たして購入した、水を生み出す魔道具を持ち込んでいた。



(とは言っても個人用だから、いっぺんに大量の水を出せるわけじゃないし、無限に出せるわけじゃないんだけどね)



 海外では水が合わないなんてこともある。零世界なんていう訳の分からないワールドなら、なおの事だろうと用意しておいたのだ。


 水の当てもあるからと緑券も悩まず消費し、食料品のある白券のところへ。



(うわぁ、見事に干し肉ばっか。いったい元は何の肉なのやら。

 うげっ、あのくそ不味い飲み物まで売ってんじゃん。誰が買うか!)



 どれもこれもまったく食指が動かず、白券交換所は特に何もせずに離れた。



(うーん、この国にももっと良い物はあるのかもしんないけど、今の私の身分だとこれくらいしか交換できなさそう。

 現状だと本当に欲しい物とかBMOじゃ手に入んない物以外は、BMOで仕入れて手持ちスロで持ってきた方がいいねこりゃ)



 まず食料。保存食に限ってもプレイヤーたちの趣味嗜好が爆発し、もっと美味しくお腹に溜まるものがBMOには溢れている。

 その分ゲーム内のお金はかかるが、今のブラットなら頑張れば用意できない額ではない。嗜好品なんかも以下同文。


 回復アイテムもここの交換所にある物よりも、BMOの安物ポーションの方が効果が高い。

 行き来するたびに、安物でもいいから零世界に持ち込んでおいたほうが味方の生存率も高くなるだろう。


 武器、防具も自分の物を用意する場合は、今のところ断然BMO製の物に軍配が上がる。

 こちらはさすがに良いものになるほど費用がかさむので、簡単に用意できるものではない。

 けれど生死にかかわってくるので、できるだけコツコツとやり繰りして持ち込めるように計画しておくべき代物だろう。



(将来的に自分のパーティを育てるってなった場合は、その子たちの装備も私がBMOから持ち込んでくることになるかもなぁ。

 いったいどれだけBMOで稼がなくちゃいけなくなるんだろう……。

 戻ったら今の内から治兄に効率のいいお金稼ぎでも教えてもらわなきゃね)



 逆に最低限の雑貨なんかは今のところ使えればいいので、こちらの物でも我慢できるし事足りる。持ち込みの優先度は低いと見ていい。



(うん、やっぱり零世界に一回来てみて正解だったね。

 ここだけ見ても、BMOでやっておいた方がいいことの優先度がどんどん決まってく)



 明確に必要な物資の準備ができるなら、ゲームを楽しみながらでも効率的に動くこともできる。

 今のブラットの認識では、零世界に来ているのはあくまでBMOをこの先も楽しむため。

 こちらにばかり気を取られて、ゲーム自体が楽しめなくなったら本末転倒だ。


 交換所の物色だけで大して国内の探索はできなかったが、日も高くなってきたのでガンツたちもそろそろ起きるだろうと、ブラットはやることリストを頭の中で思案しながら宿へと戻った。

次話は火曜更新予定です。

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