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俺の部屋はニャンDK  作者: 白い黒猫
俺の俺の部屋はニャンDK

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26/65

愛につつまれて

 サバは和室に置かれたケージの中で眠っている。ケージはさくらねこの活動用のものを、ジローさんが借りてきてくれたもの。

 畳が傷まないように物置にあった古いマットの上に置いた。中には大家さんがくれた古い毛布が敷かれている。

 先程までエリザベスカラーが気になるようで身体をモゾモゾ動かしていたが、それで疲れたのか眠ってしまった。ケージの横ではモノが身体を凭れさせた体制で眠っている。


 今日は金曜日。大学の方は友達に代返を頼んで休んだ。病院にサバを迎えに行ってサバを引き取ってきた。そのまま部屋で一緒にいる。

 モノも心配なのか俺の部屋に上がり込んでケージに引っ付くように座っていた。

 一緒にしてやりたい気はする。しかしモノは腹帯を剥がそうとしたり傷の辺りを舐めようとしたりといった干渉をしようとするのだ。その為にケージの外にいてもらうしかない。

 サバは時々起きては少しの水と餌を食べる。

 夕方になるとジローさんが様子をみにきてくれた。手にレジ袋を下げている。

「落ち着いているようだね。

 コレ乕尾用のご飯」


 俺は恐縮しながら、袋を受け取る。サバの生活道具を用意してもらい、皆に気を使わせて世話になってばかりである。しかも手術入院費用の足しにと、お見舞金まで頂いた。

 しかも見舞いの返しも拒否られる。


『メンバーのほとんどが外国人なので、そういった日本な文化や風習が分からない。お礼とかされても困るだけ。物とかお金のお礼はいらない』


 そう言われてしまった。キチンと熨斗袋に入り、筆文字でメンバーと金額が書かれたものを渡してきてくれたというのに……。

 俺は頭を下げてお弁当を受け取る。

「そう言えば、手術と入院代をかなりまけてもらいまして……」

 薮先生は、事情を汲んで最低限の金額にしてくれたようだ。その代わりしっかり面倒を最後まで見ろと釘は刺された。ジローさんの言う通り、良い先生であることは強く感じる。飼い主となる俺を甘やかさない良い動物のお医者さんだ。

「でも、元気になっても予防接種とか何かとお金はかかるから、サバ予算に使っていなさい」

 ジローさんはそんなふうに言ってくる。マシロも待っているからと帰っていった。


 早速、俺が頂いたご飯を食べようとすると、強い視線を感じる。サバかと思ったらが彼女は眠っている。そしてその隣でモノがジッとコチラを見ていた。目が合うとニャーと鳴きながら近付いてける。俺と言うよりお弁当の入ったレジ袋を期待に満ちた目で見つめている。

「モノ……コレはお前のご飯ではないよ。お前お腹空いたのか?」

 ニャーニャーと俺に訴え掛けてくる。サバには身体に負担をかけないように消化の良いキャットフードを今食べさせている。それをあげる訳にはいかない。仕方がなく皆から頂いた固形のカリカリフードを取り出してモノにあげる事にした。

「モノ、今日は特別だぞ! コレはサバのご飯だからな」

 俺の言葉など気にする様子もなく。モノはカリカリフードを貪り食べて、サバの近くに戻り満足そうに毛繕いを始める。その呑気な様子を見て、なんか深刻な顔でサバを見守るのもマヌケに思えてきた。俺は友人から写メで送られてきたノートを見ながら勉強することにする。それが終わるとテレビを見ながら二匹の気配を身体で感じながらお弁当を頂く。


 七時過ぎにスアさんがあの事件の日に俺が着ていた洋服を洗濯したものを持ってきてくれた。

 若干シミは残ったものの、あの惨状からは見間違えるように綺麗になっていて感動した。

「こんなにアレがキレイになるなんて!

 それになんか良い香りもする」

 俺が洋服を見ながらそう言うとスアさんは楽しそうに笑う。

「私に包まれている気持ちになるかもね」

「心強いです」

 そんな会話をして二人で笑い合った。そしてスアさんはサバをケージ越しに様子を暫く見守ってから帰っていった。

 

 九時過ぎにシングも手土産をもってお見舞いにきてくれた。そして根来神社で買ってきたという【病気平癒守】のお守りをケージに下げて帰っていく。


 タマさんとシマさんだけでなく、ミケさんクロネコさんシロネコさんまでもサバの様子を気にしてくれている。

 サバはあんなに可愛くない猫なのに、どれだけ人望があるのだろうか? 改めてサバとアパートの皆との関係の深さを感じた。

 モノの呑気さと、皆のサバへの愛。一人でサバを抱え込まなくて良いと思えるようになり気もかなり楽になった。


 サバと寄りそうモノの写真を撮る。

『このように二匹はのんびりとしています――』と

 LINEグループに報告をしつつお礼の言葉を返しておいた。

 心配している皆に、サバの面倒をちゃんと見ている事を行動で示そう。サバが怪我と戦う姿をしっかり伝え報告することが、飼い主となった俺の役割だ。


「サバ、皆お前を心配して見守っているよ。だから早く元気になれよ。皆お前を愛しているから」

 そうサバに声をかける。サバはなにも聞こえてはいないようで何の反応も示さず眠っているまま。

 今夜はサバに寄り添うモノをそのままにして、布団をゲージの前に敷いて眠る事にした。

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