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俺の部屋はニャンDK  作者: 白い黒猫
俺の俺の部屋はニャンDK

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テッペンをとる

 今俺たちはYouTubeチャンネル【ねこやまもり】の撮影中。根来(ねこ)神社の中にある小山(こやま)の頂上に立つシマさんとタマさんに俺はカメラを向ける。

「どんな気分?」

 ニコニコと下から聞いてくるジローさんに二人は手を振る。

「これで俺達はてっぺんとれるかな~」

 シマさんの言葉に、タマさんがオイオイとツッコム。

「テッペンとったる~だろ、こういう時言うのは」

 今日ノラーマンの二人と俺が登っていうのは根来(ねこ)山森町にある根来(ねこ)神社の富士塚。

 江戸時代に流行った富士信仰の名残りで、旅が出来ない病気や身体が不自由な方や、年寄りの方、女人禁制の為に富士山に登れない女性の為にミニチュアの富士山を作りそこに登る事で誰でも富士参拝が出来るようにしたモノ。


 公園の大きめの遊具サイズの小山。ソレを登った事で、富士山にある浅間神社にお参りしたのと同様のご利益が受けられるものなのかは怪しいものの、今とは違い富士の麓に行くことさえ困難な時代。

 富士山への憧れは今の比では無かっただろう。俺は知らなかったが、日本各地の神社仏閣の中に、このような富士塚というものは存在しているらしい。

 ここの富士塚のように現在でも登れるものは数少ないようだ。

「日本人の自然への敬意、富士山への愛の深さを正に具現化した素晴らしいモノだよね。

 単に富士山のミニチュアを代用品にするというのではなく、強い想いがあるからこそ、富士山を自らが作り敬いそして愛する。

 そういう日本の宗教観は本当に面白い……」

 やはりこういう日本的な事は気持ちが盛り上がるのかジローさんが珍しくカメラに向かって熱く語りながら富士塚を登ってくる。

 和装の金髪碧眼の白人が、流暢な日本語で神社の境内の中で解説をするという姿に妙な絵力を感じるのは気のせいだろうか? ノラーマンの二人よりも、正直なところ映像として面白い。

 その言葉に影響されたのではないが、確かに何故か山頂に登ると気持ち良さを感じ、チョットした感動さえする。登ってきたジローさんに、シマさんとタマさんがハイタッチをして迎える。


「どう? てっぺんにいる気持ちは?」

 そう聞いてくるジローさんにノラーマンの二人はいやいやと顔を横にふる。

 裏方にいつも回っているジローさんが今日はロケ中カメラの前で熱く富士信仰を語りノラーマンに絡むのはエールの気持ちからである。

 二人は今度テレビで開催される【お笑いグランプリ】にて予選突破した。

 そうTV出演出来る。その祈願も兼ねたのが今回のロケだった。

 そういう事もあり、気合いも高まると共にナーバスにもなっている二人が、少しでも気分転換出来るようにというジローさんが企画した。

 カメラを動かしている時ははしゃいでいた二人もカメラを止めると、その表情から明るさが鳴りを潜める

「しかし、俺らだけ無名だしな~不安やわ」

 そう零すタマさんにジローさんは柔らかく笑う。

「よく知られている人は、みなその癖に慣れて飽きている所もあるから、逆に知られてないという事は観客にとっては新鮮で有利なのでは?」

 ジローさんは冷静でいて優しい言葉をかける。

「そうですよ! それにノラーマンにはこの街という強い組織票もありますから! 俺もどんなにスベったとしても投票しますよ!」

 言ってから、少し言い方を間違えたことに気がつく。でも二人は笑ってくれて良かった。

「トラ~! お前な!」

 タマさんに背中を叩かれた。

「まあ、一回戦で落ちても、テレビに出られる。それだけでも大きいから、ダメ元でやるしかないか!」

 シマさんの言葉に俺が「そうですよ!」

 力強く頷いたら、苦笑された。

「お前さ、実は全く期待してないだろ?」

 俺は頭をブンブン横に振る。

「そんな事ないですよ! 俺二人のコントが大好きですから! だから今度多くの人に見て貰えるのが嬉しくて。

 ソレに期待しているからこそ、あの勝負パンツをお二人にプレゼントしたんじゃないですか!」

 

 ノラーマンのネタ俺は大好きだが、逆にアクの強さとか毒がなく押しもそんなに強くない所が、ノラーマンという存在感を薄くしているのが残念な所かもしれない。

 だからこそ、今回優勝は無理でも、出る事で少しでも二人の魅力が世間に伝わってくれたらなと俺は考えている。

 決して二人の才能を認めてない訳でも応援していない訳でもない。

 父親が大事な試験の時に使えと持たせてくれた七福神の宝船のついた真っ赤な勝負パンツ。

 今の俺にはイマイチ使い所なかったので、ソレを二人にプレゼントしたのも。俺なりのエール。

 タマさんは少し照れたように笑い、俺の髪をグシャグシャと撫でる。

「あんな派手なパンツ履いたことないけど、当日はアレで頑張るわ~」

 シマさんはそう言ってくれた。

「せっかく神社にきたのですから、絵馬書いてしっかり優勝祈願しましょうよ!」

 俺の誘いで四人で絵馬を書いてみた。それぞれが書いた絵馬がコレ。


【すべりませんように

    ノラーマン縞田】


【少しでも長くTVに映れますように

       ノラーマン玉田】


【根来山森から、はばたけノラーマン!

  トラオ】


【ノラーマン敢為邁往の精神で挑み続けろ!

  Giraud】


 なんか誰も優勝を祈願していない感じで良いのだろうか? とも思ったがコレでいくことにした。

 でも後で後悔することになる。ここは皆で【優勝】をハッキリと祈願するべきだったと。

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