21:Dining Room
勝一郎たちが猿達の縄張りを突破して、とりあえず安全と思われる地帯へとたどり着くことができたのは、すでに日が傾き、恐ろしく美しい夕焼けが周囲を赤く染めたころのことだった。
ソラトが能力で周囲を監視し、脅威となりそうな一定以上の大きさの生き物がいないことを確認してようやく足を止める。
長期間にわたる全力疾走に加えて、崖登りや戦闘までこなした勝一郎はもはや体力も底をついていて、【千里眼】なる能力で周囲を警戒し、一定の安全が確認できるようになったことは正直ありがたかった。
それでも勝一郎は部屋を作れそうな面を探して、硬く大きな岩の表面に扉を作る。
この世界で生きるにあたり、安全確保は絶対に手を抜けない。そのことを勝一郎は、度重なる危険との遭遇で嫌というほど思い知っていた。
「ああ。流石にもう動けねぇ」
「ご苦労様。あんたはそこで体を休めてなさい。野営の準備は私達の方でしておくから」
部屋の中へと倒れ伏す勝一郎に対して、ランレイがマントの部屋から這い出し、続けて事前に集めていた焚き木を運びながらそう告げる。
言われるまでもなく、自身の体に気功術をかけながら身を休ませる勝一郎だったが、そうしたことでふと思い出したことをランレイに聞いてみた。
「そういやランレイ、あの娘の容体はどうなってる?」
「一応気功術のおかげで傷もある程度は治療できたわ。私はハクレンさんほど【血】の気功術の使い手じゃないから、まだ万全とは言い難いんだけど……。とりあえず今は容体も落ち着いてその中で眠ってる」
「そっか」
勝一郎のマントを指さし、そう報告をくれるランレイの言葉に、ひとまず安心して勝一郎は床の上に横たわる。
思えばこの室内の床も随分と硬い。もちろん、そのことは事前に分かっていたため、勝一郎とて村を出る際敷物となる布くらいは用意していたし、もう一つの部屋の中で眠るあのヒオリという少女の場合は怪我人ということもあってそうした敷物の上へと寝かされているのだが、それでも怪我人を硬い床の上に寝かせなければいけないというのは正直心苦しいものが有る。
(とは言っても、流石にこればっかりは【開扉の獅子】でもどうにもならないしな……)
扉や部屋の大きさと形、あとは扉自体の材質などは自由に設定できる【開扉の獅子】の能力だったが、しかしどういう訳か、室内の内装や、壁や床の質感などは設定を変えることが出来なかった。
何度か試してみたことがないではなかったのだが、床や壁の質感は白く硬い無機質なもののままで、材質はおろか色すら変えることができていない。扉の材質ならば多少帰ることもできていたが、しかし勝一郎自身がやわらかい、人を寝かせられるような扉というものにはついぞであったことがないためなのか、そんな都合の良い扉は作ることができないようだった。
「さて、先にロイドが火を起こしているはずだから、私はとりあえず食事の準備をしておくわ。あんたはそこでしばらく体を休めてなさい」
「それじゃありがたくお言葉に甘えて……、ああ、いや。ただ寝てるだけってのもあれだし、あのヒオリって娘の様子はとりあえず見ておくよ」
「ああ、そうね。それじゃそれだけお願いするわ。後であのソラトって子もそっちに行かせるから」
「了解」
怪我をして意識を失い、その後目覚めた場所が誰もいない真っ白な部屋では目覚めた当人も相当な不安を抱くだろうと、そんな心配を払拭するべく、勝一郎はランレイが出てきたマントから部屋の中へと入り込み、中で一人眠る少女のそばへと腰を下ろす。
自分の能力で作ったものとはいえ、この部屋は一人で過ごすには絶望的に向いていない。無機質で殺風景。最近でこそ壁に拾い集めた食料品などを並べるための棚を作ったものの、それでもこの部屋の雰囲気というのは、何もなさ過ぎてどうにも中に居るものを拒絶しているように感じてしまう。
ある種の無菌室ではあるので、体の弱った人間を寝かせておくには環境としては悪くないのだが、不安を抱きやすい体の弱った状態ではあまり一人でいたい場所ではないだろう。
「おうショウイチロウ。ここにいたか」
「ロイドか。どうしたんだ?」
と、そんなことを考えていた勝一郎に声をかけ、部屋の中へと入ってきたのは、意外なことにソラトではなくロイドの方だった。
「っと、まだ寝てるみたいだな。ランレイの奴には一応治療は終わったとは聞いてたが」
「ソラトはどうしたんだ? 一応ついてるなら顔見知りの方がいいかと思ってたんだが……」
「あのガキならまだ周辺の様子を【千里眼】とやらで探ってるよ。それよか一ついいか?」
「あ、ああ。どうしたんだ」
「いや、飯のことなんだけどよ」
言いながら、ロイドは眠る少女の方にどこか気遣うような視線を向ける。勝一郎としてはロイドのそんな表情が珍しく、それに対する感慨も少なからず抱いたが、同時に彼が言わんとしていることも何となく察せられた。
察せられてしまった。
「……ああ、確かに怪我人病人の類に、この世界の食事はきついな」
「だろ。けどランレイに聞いても、この世界に病人用の料理って概念はないみたいだしよぉ……」
作ってもらっていた身でこういった話をするのは失礼かもしれないが、この世界の食事というのは正直あまりレベルの高いものではない。
というか、もっとはっきりと語ってしまうと、この世界に置ける料理というのは、『時間をかけない簡単料理』か、多少時間をかけて作る『保存食』の二つに分類できてしまうのである。まあ、こんな過酷な世界であるのだから、食事に過度な工夫を凝らす余裕などなかったのかもしれないが、前者の場合大体が焼いただけ、後者の場合はいろいろあるが、しかし保存食というあたりで大体の味の程度はわかるだろう。もちろん、煮込み料理のようなものもないわけではないのだが、全体的な傾向として、どうしてもバリエーションに乏しく、味わいも遠回しに言って素材の味を楽しむ形に落ち着きやすい。
まあ、今はそれは良い。いや、ロイドが今それをよしとしているかは横に置くが、今問題にするべきはそこではない。
問題なのは、この世界で暮らして、食べてきた今までの料理と、この世界の人間の肉食偏重の食事を考えれば、出てくる食事が怪我人には重いものになることはどうしても予測できてしまうということである。
「確かに、少なくとも消化に優しそうな食事は期待できないな」
「まあ、病気じゃなくて怪我で、しかも出血が多かったってことを考えれば肉類が多い方がいいのかも知れねぇが……」
残念ながら、勝一郎にそう言った看護の知識はない。ロイドの方はどうやら少しばかりの医療知識はあるようだが、様子を見ているとそういった部分の知識は無いようだった。
ただ本人の食欲によっては、ああいった重い料理を体が受け付けない可能性というのは低くはない。今のうちに何らかの用意があった方がいいのは確かだろう。
「とは言っても、どうやってそういうものを作るかだな。いや、この場合むしろ問題なのは何を作るかの方になるのか?」
忘れてはいけないことなので何度でも言うが、ここは異世界である。
しかも生態系や文化形態の根本から違う異世界だ。当然、この世界には米は存在しておらず、コメがない以上はおかゆなども作りようがない。これは小麦がないことからもパンについても言えることだった。病人食を作ろうにも、そもそも材料からして存在していないのである。そんな状態でいったい何を作ろうというのかという話である。
「一応、案がないわけじゃねぇ」
言いながら、ロイドは持ってきていたらしき袋を勝一郎へと示し、中から見覚えのあるものを取り出し示す。
どうやらこの世界の主食らしい、勝一郎自身も何度か食べた異世界クッキー。
実はいまだに名前を聞けていないそれは、森で取れる木の実や、恐らくは芋のようなものらしい植物の根などを乾燥させて粉上にし、それを固めて作った保存食なのだと聞いたことがある。
味もクッキーに近いが、砂糖がないためか味は薄く、やはり味は満足のいくものではない。
「こいつを煮溶かしてみようとか思ってんだが」
「煮溶かすって、鍋はどうするんだ? またあの魔術を使うのか?」
「いや、【掌中鍋】は水分を含ませるような料理には向いてねぇんだよ。魔術を解除した後、料理に含まれていた魔力の水が一気に消えちまうから、瞬く間に乾いてパサパサになっちまう」
魔術によって魔力から作ったものは、時間経過とともに元の【全属性】に戻り跡形もなく消滅してしまう。これはロイドの世界の魔術という文明の、基本ともいえる大原則だ。何度も耳にしていい加減覚えていた勝一郎は、確かにそうだと思いつつ思考を代わりの手段へと移す。
「だから、鍋の代わりにはおめぇの部屋を使う」
「部屋ってこの部屋か?」
「ああ。鍋くらいの大きさの部屋を作って、そこに水をぶち込めばとりあえず鍋になる。熱は焼けた石を鍋の中にぶち込んで加えりゃいい。まあ、鍋部屋の壁に発熱系の術式を触媒で書いて、儀式魔法陣を仕込むって手もあるが……、こっちは熱湯に耐えられるような触媒を作れねぇ上に、食いもん作るには元から向いてないからな」
「なるほど……。部屋を鍋替わりってのは思いつかなかったな」
確かに、勝一郎の作る部屋は鍋の代わりには向いているかもしれない。相変わらず材質はよくわからないが、まずどんなに破壊を試みても傷一つつかないのだ。熱伝導も内側に熱源を入れて使うならば問題ないし、むしろ熱が逃げない可能性の方が高いため熱効率についても期待できる。
「そう考えると俺の部屋って、オーブンとか作るのにもいいかもしれないな」
「実際適当な大きさの部屋を壁に作って、あとは燃えてる炭火なんかと一緒に閉じ込めりゃできんだろ」
「……なるほど。もしかして俺達、この世界の料理に革命を起こせるんじゃ……!!」
「相当な手さぐりになるだろうがなぁ。まあ、まずはそのための第一歩だ」
顔を合わせて頷き合い、まずはと手元にあるクッキーもどき――名称不明――へと視線を向ける。
次の瞬間から、勝一郎達はこの世界に置いて新たなる料理を生み出すべく最初の一歩を踏み出す訳だが。
思えばこのとき、勝一郎だけでも思い出しておくべきだった。
勝一郎の世界に置いて『手探りの料理』などというものが、いったい何のフラグとして扱われているのかを。
最終的に、作った料理は作った奴がおいしくいただきました。
まあ、冷静になればわかり切っていた、当たり前とも言える結果である。
出来上がった代物は一口で臨死体験ができるような、とびぬけてまずい代物というわけではなかったのだが、しかし期待していた割に大したことがないというべきか、どろどろのペースト状になった物体は我慢すれば食べられなくはないがおいしくもなく、少なくとも胸を張ってお出しできるような代物とは言えない出来栄えだった。
「くそ……。せめて味付けをもう少し工夫できれば……!!」
「まあ、調味料がそもそも塩しかないからな……」
材料に関しても、あるのは途中でとった野菜や果物、あとは、バリエーション豊かな肉や魚類があるだけで、調味料と言えるものはほとんどない。最近食べた食事も、ほとんどこれらを焼いて塩を振っただけのものだ。
(……まあ、塩で味をつければ多少はましになったし、果物で甘みを付けるって手もあるかもしれないが……)
正直そのあたりに関しては、今度余裕があるときにでも試すしかない事柄である。食料事情や置かれている危険な状況を踏まえると、その余裕ができるのはいつになるかわからない状況であるが。
「というか、あんた達ってまともに料理とかしたことあったわけ?」
「客観的に見ても二人が料理できそうにはあんまり見えなかったんだけど」
対面に座る二人の白い視線に、勝一郎は白状するように首を振る。世の中にはできる男もいるのだろうが、生憎と勝一郎自身は学校の調理実習以外ではほとんど料理をしない、非家庭的な男だった。
ただ、どうやらロイドの方はそうでもなかったらしい。
「まあ、確かに俺も簡単な料理くらいしか作んねぇけどよぉ」
「――えっ!? おっさん料理できんの!?」
「言ってんだろ、簡単なもんだけだよ。一時期一人で食うことが多くなった時期があってな、軽くなら覚えたんだ」
『それよりおっさん言うなクソガキ』と悪態をつくロイドを前に勝一郎とソラトは意外な思いで顔を見合わせる。他のメンバーと常識がずれているランレイももちろん驚いてはいたが、近しい価値観を持つらしいソラトとの方が、勝一郎の抱いた驚きは共有できるものだったらしい。
現在勝一郎たちは、岩面に作った部屋の中に料理などを運び込み、食事をしている真っ最中だった。ソラトと一緒に逃げてきたヒオリという少女はまだ目覚めていなかったが、そちらの様子はソラトが見ると請け負って、今は彼が自身の能力を行使してその様子を見守っている。なぜか少女が眠る勝一郎のマントの部屋に片足を突っ込んでいるのが少し気にはなったが。
「それにしてもこの肉、言っちゃなんだが少し臭みが強いな。香辛料でもあれば少しは味付けも変わるんだけど……」
「悪かったわね。仕方ないでしょ、初めて見る生き物だったんだから。今度作る機会が有ったら、少しはましに作るわよ」
「つうか、香辛料って言うなら、俺がとってきた植物ん中に香草っぽいのならあっただろうが。なんでそれ使わなかったんだ?」
「「「え?」」」
ロイドの言葉に、三人がそろって驚きの表情を向ける。対してロイドは一度はその反応に驚いたものの、『なんだよ、まさか気づいてなかったのか?』と不本意そうな表情で聞き直してきた。
「ああ、いや。お前がとってきた植物って、たまによくわからない植物とかあるからさ」
「それだって、あの葉っぱなら匂いの一つも嗅げばわかんだろうが。俺の母親が庭で育ててたのと同じような匂いだったしよぉ」
「それってどれのこと? あの棚の一番右上?」
「つうか、あの辺一体全部だよ。一応食べられそうなもんだけ選んで拾ったんだ。まあ、害が全くないとも言い切れないから、あんまりたくさんいっぺんに使うのはやめた方がいいが……」
「じゃああれもそうなのか? あの一つだけ扉を閉めちまったやつ」
言いながら、勝一郎は並ぶ開けっ放しの扉の隅の、一か所だけ扉が閉じられ、ただの壁となっている場所を指摘する。
勝一郎の作る扉は閉じてしまうと外からは全く感知できないが、扉の作成者である勝一郎自身だけはその例外だ。勝一郎だけはどこに扉があるかを、たとえ扉が閉じていてもきっちりと感知することができる。
勝一郎の質問は、その性質故に分かってしまった、一つだけ閉じられている扉への純粋な疑問だったのだが、意外にもロイドの返答はあまり芳しくはなかった。
「ああ、いや、あれはその、なんだ。食えるもんもんじゃねぇから閉めといたんだが……」
「……? 食べられないものを何で拾ってきたんだ?」
「そりゃあまあ、役に立つかと思ったんだが……。いやまあ、未練もあったっつうか……」
「なんだそりゃ? いったい何が入ってるって――」
「――なんでもねぇよ。どうでもいいだろ、んなこと。とにかく、いろいろ拾ってあんだから次からはもう少し活用しろって話だよ。つっても、俺はもうこの肉の生き物に会うのはごめんだがな」
強引に話を打ち切り、手にしていた肉を口の中に押し込むロイドの姿に、勝一郎もすぐにあきらめ、己の手にある肉を胃袋の中へと迎え入れる。
生前がどんな生き物であろうとも、己の槍で貫き、奪った命だ。生憎と回収できなかった【谷翼竜】や【鯨蛇】と違ってこちらは回収できた獲物である。ならば最低限の礼儀として、どんな味や匂いであっても食べきってやるべきなのだろう。
とは言え、そんな獲物に対する感慨は、生憎とこの場の全員に共通するものではなかったらしい。
「あのさ、兄ちゃんたち、一つだけ聞いていい?」
食事をしながらソラトが少し怪訝そうな顔で肉を見つめて、そばで食事をする三人に呼びかける。
勝一郎たちがそろって視線を向けると、ソラトは恐る恐るという調子で、二人が三か月以上前にしたのと同じ質問をぶつけてきた。
「気になってたんだけどさ、この肉っていったい何の肉?」
「ああそれか? ほら、二人が逃げ込んできたときに、俺が一匹猿を仕留めたじゃん。そいつの死骸をその後マントに部屋作ってしまってあったから、さっきそれをロイドが解体して肉にしたんだよ」
「ってぅおい!! これあんときの猿かよ!!」
驚き、慌てたように串に刺さった肉を見直して、ソラトが悲鳴交じりの大声を上げる。
だがそれを見ても、勝一郎はいまさら同調するようなことはない。ただ『青いな』と、そう思うだけだった。彼がこれから言いそうなセリフなど、すでに勝一郎もロイドも三か月前に言い尽くしている。
「まったく、異世界人っていうのは何でこう食事に文句ばかりつけるのかしら。獲った獲物を食べないなんてありえないわよ……」
「まあ、俺らの世界では食べる生き物って大体決まってて、初めて見る生き物をいきなり食べるってあんまりしないしな」
「つか、それ以前の問題として、俺らの世界じゃ食べる生き物を選ぶからな。あんま人に近い生き物とか、身近な生き物は食べないし」
「私にはむしろ、その身近な生き物っていうのがよくわからないのよね……」
元の世界では食べる生き物とそうでない生き物を様々な理由で分けていた勝一郎達だったが、しかしこの世界の価値観は食糧事情などのせいなのか、食べる生き物を選ぶということを基本的にしていない。
基本的に殺した生き物は食べられる限りは食べてしまうため、手ごろな生き物だけではなく、自分たち襲ってくるような生き物ですら仕留めたら解体して食肉にしてしまう。
加えて言うなら、遭難中である現状、保存のきく食料はできうる限り温存するのが望ましい。
勝一郎の作った【冷蔵室】があるとはいえ、現状の設備だけでは保存食を作る余裕もないのだ。食べられるものは全て食べるくらいの気持ちでいないと、この先を生き残るのにも支障をきたす。
「つか、これでもお前がドン引きしねぇように気を使ってんだぞ。俺らが村にいた時なんか、よくわかんねぇオオトカゲの脳味噌とかを煮込んで喰わされたからな」
「ああ、あったなそんなこと」
当時のことを思い出し、勝一郎は遠い目で虚空を見上げる。
まだ冬も真っ盛りなころ、冬眠しているところを掘り出されたらしい人の腕くらいの巨大なトカゲが、村の女たちによって煮込まれて晩の食卓へと登場した。
頭蓋骨を切り取って露出した脳が珍味であるということで、勝一郎とロイドは周囲の“勧め”でそれを泣く泣く口にしたことがある。
そんなことが何度か続いてからは、もう二人とも食事に対して達観した価値観を持つようになってしまった。
「つうかよぉ、食事の話もいいけど、そろそろ明日のことも込みで真面目な話に移ろうぜ」
自分に割り当てられた肉を飲み込んで、ロイドはソラトの方へと視線を向けながら他の三人へとそう提案する。
「まずはお前だクソガキ。さっき言ってたお前の能力の縛りって奴、どういう状況で能力が使えなくなるのか、早いところ吐きやがれ」
「食事中に吐けとかいうなよおっさん」
ジト目でそうツッコミを入れて、その後ソラトは食べていたものを飲み込んで口の中を空にする。どうやら彼自身、自分の能力について語る機会をうかがってはいたらしい。
「そうだな。まずは前提として、能力の性質についてから話した方がいいか」
そう言って、ソラトは順を追うように己の能力について話し出す。
勝一郎の今後にも関わることになる、彼自身の能力の、それが抱える重大な制限事項を。




