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不滅のダンジョンマスター  作者: やみあるい
第一章 迷宮転生の章
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03.ステータス確認

あらすじ


真っ白な空間で男が出会ったのは異世界の神を名乗る超常の存在だった。

神は一度死した男を異世界へ転生させてくれるという。

異世界モノの小説が好きだった男は、その言葉に歓喜した。

最後に神は男へ一つだけ願いを叶えると言い、男はそれに間髪入れず「寿命の終わりを失くしてくれ」と答える。

神は男の答えに満足し、楽し気に男を異世界へと見送った。

 自身の意識が覚醒していることに気がついたのは、暫く経ってからのことだった。なにも見えない暗闇が、ただただどこまでも広がっている。己の意識の有無が定かでは無い程に。

 咄嗟に手を動かそうとして、私は自分に起こった異変に気がついた。動かす手が無い。それどころか足も、身体も頭も、瞼すら存在しない。感覚がないだけなのか、本当になにもないのか判断は付かないが。少なくとも意識が覚醒した私は、自分の意識以外何も感じなかった。

 死という言葉が脳裏をよぎる。異世界の神に出会ったことは今際の際の夢でしかなく、ここが死後の世界であるという可能性。

 少しだけ恐ろしく、けれども自分の意識が消えず途切れず続いていると言うことに安堵を覚えた。

 死は恐い。でも、その恐怖の根元にあるのは消えることだ。私が永遠に消えてしまうことだ。それを考えるならば、身体が無くなろうと意識があり続けるのなら、まだいくらかマシだろう。

 私は幽霊にでもなったのだろうか?

 何でもいいから、とりあえず何か知りたい。

 そう思った次の瞬間、私の前の暗闇へ唐突に白線が描かれた。どうやら白線は暗闇の中で、機械的な書式で日本語の文字を綴っているようだ。



 ○メニュー



 これは……まさか、ゲームとかでよくあるコマンドだろうか?

 咄嗟にその言葉が思い浮かんだ。

 その他は一切変わらぬ闇の中だというのに、その文字だけが眼前に浮かんでいる。いや、眼前というのもおかしいか。私は自身の目を知覚できていないのだから。

 これがコマンドであるなら、とりあえず選択してみよう。

 そう念じると、メニューの下へさらに文字が現れた。



 ▽メニュー

 ○ステータス

 ○ダンジョンマップ

 ○ダンジョン拡張

 ○魔物図鑑

 ○宝図鑑



 そこに並んだ文字たちは、ますますゲームのようだった。異世界の神に会ったことといい、異世界転生という単語が現実味を帯びてくる。

 つまりここはそういうタイプの世界なのだと。異世界と呼ばれるものが幾つあるのか私には想像もつかないが、ならばこそ、こんな世界があってもおかしくはないのだろう。

 ただ、だとしたらなぜ、私は自分の身体を認識できないのだろうか。私は一体、どうなってしまったのだろうか。まずはその情報が欲しい。

 となれば、他の項目にも興味は引かれるところだが、まず私が選ぶべきはこれだろう。

 私はステータスと書かれた文字に意識を向けた。



 名前:――――

 種族:ダンジョンコア

 年齢:0

 カルマ:±0

 ダンジョンLV:0

 DP:0

 スキル:『不老』

 称号:【異世界転生者】【□□□□神の加護】【時の呪縛より逃れしモノ】【聖邪の核】



 これが、私のステータス?

 一気に情報が増えた。そこに書かれた内容はかなり興味深い。


 名前は私の名前か? ――――となっているのは、生まれ変わった影響だろうか? そう言えば、先ほどから何故か自分の名前だけが思い出せない。それと関係しているのか?

 記憶が消えるというのは少し怖いが、まあ名前など所詮他者が他者を認識しやすいようにつけられた記号でしかない。特に問題は無いだろう。私が私であることは私が知っている。

 年齢が0となっているようだし、生まれ変わったというのは確かなようだ。


 それはともかく、種族のダンジョンコアとは何だろう? ダンジョンコアと聞いて思い浮かぶのは、最近の異世界小説でよく見る魔物や宝が配置された迷宮、ダンジョンの中核たる心臓部として登場するものか?

 それが種族とは、私はダンジョンになったということなのだろうか? それとももっと別の何かに? いまいちよく分からない。そもそもダンジョンコアとは生物なのか?

 これだけの情報では謎が尽きない。

 よくあるのは、ダンジョン最深部の部屋の中心に浮かぶクリスタルといった感じだが。私もそんな感じなのだろうか?


 ……とりあえずこの考えは置いておいて、他を見てみようと思う。

 カルマは……罪とか業のことだろうか? 仏教方面の言語だった気がするが、私の知識はどちらかというとゲームや小説よりなので確かなことは分からない。

 0となっているということは、現状良くも悪くもないということでいいのかな。良いことをすると増えるのか、悪いことをすると増えるのか、良い悪いの基準はどこか。まあ厳密に言うと、業は良い悪いで括るものではないが、罪と言うのなら順当に行けば、増えるというのは悪いことなのだろうが。気になる。


 ダンジョンLVはなんだ? LVはレベルか? 私がダンジョンだとするとダンジョンLVとは私のレベルか? そのレベルが0というのはどういうことだ? ここがあの神の言う異世界だと仮定して、ここではレベルが存在するのだろうか? そしてダンジョンとついているのには何か意味があるのだろうか? そもそも私の思うレベルで合っているのなら0は不味いんじゃないだろうか?


 DPは雰囲気から言ってダンジョンポイントの略か? 私のファンタジー知識が正しいなら、これを使ってダンジョンの拡張や、魔物や宝の召喚などをするのだろうと思うが、如何せん0ではどうにもならないだろう。ゼロ以下のマイナスや借用が可能ならばその限りではないが。DPがどのようなものなのか分からなければ、それが起こり得るかも予想できないし、その場合のデメリットも分からない。


 そして、スキルの欄にただ一つある『不老』。

 認識できない胸が高鳴るのを感じる程に、私は興奮している。これこそ私が求めてやまなかった代物だろう。

 今の状況は全く分からないし、これからどうなるのかも未知数で、神の言ったことが本当ならば、またすぐ死ぬ可能性も十二分にあり得るというのに、それでも私はあの異世界の神に感謝を捧げた。

 身体が動くようなら小躍りしてたことだろう。

 ずっと私を蝕んできた恐怖がこれで消える。

 まだまだ色々と考え、試してみなければならないことは多いだろう。そもそも表示されたこのスキルが本当に私の思う通りの効果なのか、それ以前にこのステータスは信用できるのかと疑い出せば切りがないが、それでも私は嬉しい。とてもとても嬉しかった。

 産まれたときからずっとずっと強制的に走らされ続けてきて、何処までも果てしなく、ゴールはあれどそれは目指すべき場所ではなく、最も恐れるべき象徴であり、逃れられない終焉だった。

 しかし今、希望が生まれたのだ。

 この異常な状況も合わさって、私はその可能性に希望を抱けた。この文字を噛み締めて喜びに浸ろう。

 種族的に考えて、たとえそのスキル自体に意味が無くとも、この選択に後悔はない。


 スキルはその一つだけだった。神も願いは一つだけと言っていたしな。

 ステータスの表示の最後は称号。4つある。

 一つ目の【異世界転生者】は、まあそのままだろう。

 ここが異世界であり、転生というくらいなのだから、私はたぶん生きているのだろうというくらいの情報か。


 二つ目は【□□□□神の加護】。神の加護もまあ、言葉通りなのだろうが、神の名を示すであろう所にその名が入ってない。いや、入っていないわけではないか。私の名前とはどことなく雰囲気が違う。神の名は無いというより認識できないという方が正しい気がする。それが神の名であると言うことは何となく分かるのだから。

 出来ないのか、させないのかは定かではない。ただ加護というからには私と関わりのある神だろう。一番関わりの強い神と言えば、まあ言わずもがな。つい先程会ったばかりの、私をこの世界に導いた神だろう。

 これから敬う予定の神なのだから、名があるのなら知りたかったけれど、無理ならば仕方がない。

 けれど一つ目標ができたな。いろいろと試した後になるだろうからどれだけ先かは分からないが、この神にお礼を伝えに行こう。名前もしっかりと調べて、出来れば本人、本神? に直接? でなければ、この神が祀られている場所でもいい。

 色々と確かめた後、いつか必ず。

 さて称号の三つ目、【時の呪縛より逃れしモノ】。これもそのままだな。私が神に願った言葉通りであり、神の加護やスキル『不老』などとも関連があると思われる。

 あの時の私の言葉を引用しているのだとしたら、なかなかにウィットの効いた称号だ。

 そして最後、【聖邪の核】。これだけはさっぱり分からない。何のことだろうか?

 核と聞くとダンジョンコアを連想しないでもないが、それだろうか? だが聖邪がわからん。

 と、ステータスに関しての考察はこんなものか。

 一応さらなる情報が出てくるかと、メニューからステータスを選んだときのように、各項目へ意識を集中させてみたが、特にこれ以上得られる情報はないようだ。分からないことだらけだが、考察の余地があると前向きに受け取っておこうか。

 どうせこれから時間は沢山あるのだから。


 私がステータスから意識を離すと、ステータスの画面は閉じて、また元のメニューへと戻った。


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