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38:赤い月

 

 あれから特に変わったことも起こらず、10日目の夜を迎えた。

 

 一つ変わったことがあるとすれば、月が赤くなっていたことだろう。

 

 時刻は21:30。リコとゲイルも一緒にいる。


「月が……赤いにゃ」

 

 リコが月を見上げてつぶやいた。

 

「オイ、これはどういうことだ?」


 ゲイルが俺に詰め寄ってきた。

 

「これが私の話していたことですので、安心してください」

 

 予めゲイル達には作戦の説明をしていたが、赤い月の説明はしていなかったのを思い出した。

 

 採掘所は作業が終わったが、赤い月にざわついていた。

 

 ドワーフ達は既にボロ小屋に入れられたが、兵士達は慌ただしく月を見ている。


「……本当に起こるんだろうな?」


 ゲイルが訝しげに俺を見ている。

 

「起こる、はずです」


 確証は無かったが、ワールドクラフトのモンスターや資源が存在しているのなら、可能性はかなり高いと踏んでいた。

 

 そしてこの赤い月。この世界の住人の反応から、今まで月が赤くなったことはなかったようだ。つまり事態が起こる確率は非常に高い。

 

 もし想定している事態にならなかったとしても、他にもやりようはあるので問題はない。

 

「本当にソウセイは大丈夫にゃ……?」


 リコは心配そうな顔をしていた。

 

「大丈夫です」


 正直分の悪い賭けなので、大丈夫より駄目なほうが大きいのだが、二人に余計な心配をさせないように大丈夫と答えた。

 

「それじゃあ行ってきます」


「本当にリコたちはここにいなきゃダメにゃ?」


「何が起こるか分からないですし、危険ですからね」


「援護はしてやる」


「お願いします。じゃあ行ってきます」


 ゲイルに軽く頭を下げ、俺は山を下りて行った。

 

 赤い月が照らしてくれているお蔭で、スムーズに移動することができた。

 

 時刻は21:38。残り二十二分。採掘場まで行くには十分な時間だ。

 

 俺はウッドスパイクを握りしめ、採掘場まで走った。

 

 夜の冷えた空気が肺に入るが、走り続けていることで体温が上昇し、体が冷えることはなかった。

 

 体の状態は悪くない。あとは運を天に任せるだけだ。

 

 

 ▼

 

 

 時刻は21:48。採掘場の前へやってきた。

 

 門番達が何か話しているようだ。

 

 心臓の鼓動がバクバクと早まる。

 

 俺は大きく息を吸って、吐いた。

 

「よし……」


 覚悟を決めた俺は採掘場の門へ近づく。

 

「すみませーーん」


「なんだ貴様、どこからやってきた!」


 門番が槍を構えて大声をあげた。

 

 この世界での人間との初めての会話。こんな異常事態なときに現れた人間を怪しまないほうがおかしい。

 

「新しいモンスターとかいてちょっと冒険してたら、急に月が赤くなっちゃって、それで不気味になってこっちに採掘場があるのを思い出して、一晩だけ保護してもらえないでしょうか」


「…………」


 もう片方の門番が俺の姿を確認するように、上から下へと視線を移動させていた。

 

「随分変わった格好をしているな」


「そうですか? 動きやすくていい格好ですよ」


「武器はその木の槍だけか?」


「お恥ずかしながら、これしかなくて――」


 門番の後ろから、赤い鎧を着たあの女兵士が現れた。


「何をしている」


「はっ! この者が一晩保護して欲しいとのことです! いかが致しますか!」


 声の大きな兵士が女兵士に状況を説明した。

 

 その間俺は女兵士の姿を観察していた。

 

 金髪にすっと整った美しい顔立ちに、堂々とした佇まい。

 

 頭に赤い羽根飾りを付け、胸、胴、肩を保護する赤を基調とした鎧に金の縁取りや装飾が施されており、兵士というよりも貴族の騎士という感じがする。


 手から肘にかけて篭手で守られており、色も胴部分と同じだ。

 

 下は白いフレアスカートで、足部分も手と同じように赤い鎧を装備していた。

 

 見た感じ、全身セットになっている装備のようだが、露出している部分や下半身の保護があまり見られないので、戦闘向きの装備とは思えない。

 

 一般兵士と思われる門番のほうは、全く露出面積が無く、全身を灰色の鉄鎧で覆っていた。

 

 肘や膝といった可動部分には、更に装備を重ねて保護しているように見える。

 

 兵士の鎧を観察していたら女兵士から視線を感じたので、視線を女兵士に戻した。


「あ、どうも……」


 女兵士と視線が合う。向こうは神妙な表情をしているが、俺は軽い愛想笑いで誤魔化した。

 

「……この異常事態だ。国民を保護するのも私達の役目ということを忘れるな」


「はっ!」


「何も無い場所だが一晩の安全だけなら保障しよう。ゆっくりと休んでゆくがよい。厩舎まで私が案内しよう。お前達は引き続き警戒を怠るな」


「はっ! 了解しました!!」


 兵士二人は敬礼して、門の警備に戻り、俺への興味を無くしていた。


「こっちだ。ついてくるがいい」


「ありがとうございます」


 こうして俺は女兵士に連れられて、採掘場の中へ入ることができた。

 

 時刻は――10日目 22:00。

 

「GUOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!!」


 耳をつんざくような野太い雄叫びが聞こえ、空気が震えた。

 

 それは大襲撃始まりの合図だった。

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