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34:無限水源

 

 あれから採掘所を観察していたが、特に変わったことはなく、ドワーフが岩を運び、倒れ、人間が鞭打ち、ドワーフは立ち上がり、岩を拾い上げて――という繰り返しだった。

 

 ドワーフが岩を運んだ先には二つの小山があり、岩置場と鉱石置場として乱雑に置かれていた。

 

 鉱石が何なのかまでは分からなかったが、鉄鉱山と言われているこの山から、鉄鉱石があるのは間違いないだろう。それ以外にも複数の鉱石らしき物もあるので、何があるのか非常に気になるところだ。

 

「ソウセイ、リコは先に寝るにゃ……」


「分かりました、おやすみなさい」


 時刻は4日目 21:20。辺りは暗く、月の光だけが俺達を照らしていた。

 

 採掘所は松明の灯りで照らされているので、どこに誰がいるのか把握することができる。

 

「おやすみにゃ……」


 リコは後ろに作った小屋へと入り、眠りについたようだ。

 

 この場所は小山が壁になって、道側から見られることはないので、安全に休息できるように急場しのぎだが小屋を用意した。

 

 標高が高いせいか、ここは風が強く体も冷えてしまうので、両側には風よけの木材ブロックを設置した。これで多少寒さは凌げるだろう。

 

 なるべく目立たないよう小さく作ったので、採掘所からも見られることはない。

 

 小屋の広さは高さ、奥行き、幅、全て三メートルで作ったので、三人では狭く感じるかもしれないが仕方ない。

 

 リコは眠ったが、俺とゲイルは引き続き観察、いや、監視を続けた。

 

 それから暫くして、兵士が終了の号令をかける。

 

「今日はこれで終了とする! ドワーフどもは小屋へ戻れ!!」


 その言葉とともに、洞窟にいたドワーフが十名ほど現れ、続いて兵士達も数名出てきた。

 

 広場にいた五人のドワーフと合わせて十五人、兵士は二十人ほどだろうか。

 

 ドワーフ達がボロ小屋に入ったところで、門番の兵士が交代した。交代するときに槍を渡していたので、槍の予備はあるだろうがそこまで数はないのだろう。

 

 主な武器は腰の剣、長さからロングソードと仮定。小回りは利いてもリーチが問題か。そして兵士の数は二十人前後。

 

 問題は、無いな。

 

 いくら練度が高くとも、アレを対処するのは難しいはずだ。兵士は問題にならないと思うが、俺はあの女兵士が気になっていた。

 

 一人だけ赤い鎧を装備していたあの女性。亜人に対して敵意を持ってるようには見えなかった。

 

 決行の日まで、彼女がどういう人間なのか見定めたい。

 

「おい」


 隣にいるゲイルが、俺に視線を向けず話しかけてきた。

 

「お前は先に寝ておけ」


 その言葉から察するに、当番制で監視を続けるということだろう。

 

「分かりました、ではお言葉に甘えて先に寝させてもらいますね」


 ゲイル一人に監視させるのは正直不安だが、リコもいる手前、おかしな真似はしない、と思いたい。

 

 小屋へ入るとリコが草の寝袋の中でグッスリすやすや熟睡しており、可愛らしい寝顔だった。

 

 時刻は4日目 22:11。寝るにはまだ早い時間だが、眠れる時に寝ておかないと、寝不足のマイナス効果がつくかもしれない。寝られるときに寝ておこう。

 

 リコと反対側にある寝袋に入り、俺も目を瞑り眠りにつく。

 

 ◆   ◆   ◆

 

 ………………。

 

 …………。

 

 ……。

 

 目を開けると、木材の壁が目に映った。

 

 表示されている時刻を見ると、5日目 06:00だ。

 

 起き上がり室内を確認すると、リコが寝ていた場所にゲイルが横になっていた。

 

 外に出ると、リコが伏せて採掘所を見張っていた。

 

「あ、ソウセイ、おはようにゃ」


「……おはようございます」


「特に変わった動きはないにゃ」


「わかりました」


 崖上という環境に合わせ早朝の冷えた空気、それを運ぶ風もやや強く、いつも以上に冷える。

 

 よく見るとリコも体を震わせていた。

 

 俺はすぐさまキャンプファイヤーを四個クラフトを開始した。

 

 風よけにしていた壁の片方を壊し始める。

 

 採掘所にはまだ誰も出てきていなかったので、音でバレることはないだろう。


 迅速に壁を破壊して、一個分位置をずらして、再び壁となるブロックを二個並べて設置した。

 

 壁と壁の距離は四メートルで、内側にクラフトしたキャンプファイヤーを二個並べて設置したので、これで暖をとれるはずだ。

 

 設置した四個のキャンプファイヤーの火をつけた。


 流石キャンプファイヤー四個設置だけあって、あっという間に暖かくなってきた。


「……あったかいにゃ」


「お風呂も用意するので楽しみに待っててくださいね」


「えっ、できるにゃ!?」


 リコが物凄い勢いで振り向いてきた。

 

「流れ落ちてくるお湯は無理ですが、湯船を作るくらいならすぐできますから。それまで採掘所の監視、お願いしますね」


「分かったにゃ!」


 見張りをリコに任せ、俺は小屋の後ろへ移動した。

 

 まず木枠ブロックで小さな囲いを用意する。囲いの中の広さは木枠ブロック二個分だ。

 

 そしてその中に残り一つの粘土バケツに入った水を入れた。

 

 すると水は木枠ブロック二個分のスペースを埋める。

 

 次は流した方とは反対側の水を粘土バケツで組み上げる。すると今汲み上げた場所の水は隣の水源から少しだけ流れる程度まで減り、最初に流したほう、水源となっている場所には、木枠ブロック一個分の水が減らずに残っていた。

 

 これはゲームであった小技なのだが、このようにニマスブロックのところに水を流し、水源ではないほうから汲み上げると、水源側が残り、水源側の水も回収できるので、一つの水バケツから二回水を汲めるという仕組みだ。

 

 これが三マスブロックで、両端から水を流すと、中央から水を汲んでも再び水が流れ、無限水源として、無限に水を汲み上げることが可能なのだ。

 

 ただし最初に流したマス、水源となっている場所から汲み上げると、ニマス目の水も無くなってしまう。

 

 これを使っていけば無限に水を生み出すことができるので、現実ではチート過ぎるテクニックだ。物理法則も何もあったもんじゃないな。この世界の神様に怒られないか少し心配だ。

 

 こうして得た水を使って、インベントリにあった粘土バケツ二個に水を汲み、片方を温泉ユニットに変えて温泉を用意した。

 

 流石に野ざらしはあれなので、小屋と連結させる形で作り、小屋の中から入れるように改造してある。

 

「リコさん、温泉の用意ができたので、入ってきて大丈夫ですよ」


「わかったにゃ!」


 リコと見張りを代わり、今度は俺が採掘所を見張る番だ。

 

 時刻は5日目 06:52。まだ兵士たちは出てこない。

 

 俺は採掘場にどうやって入るか考えながら、監視を続けた。


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