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28/48

28:両親の言葉

 本日二話同時投稿です。こちらは二話目になっています。


「きちゃった、にゃ……」

 

 そこになんとリコがいた。

 

 どうしてリコがここに? 


 なんで?


 どこかへ行っていたのでは?


 もしかしてずっと俺の後をつけていたのか?


 何故?

 

 おれは こんらんしている!

 

「ど、どうしてリコさんがここに? 来たら危ないって言いましたよね?」


 俺は慌てて舵を取り、川岸へと乗り上げた。

 

「……どうしても心配だったにゃ」


 リコは俯いて、耳と尻尾を垂らしながら話していた。その表情は見えないが、今にも消えそうな声から察するに、リコが今一体どんな顔をしているか予想はつく。

 

 だがやはりどうしても気になる。丁度良い機会だ、ここで聞いておこう。

 

「どうしてそんなに人間である私に近づこうとするんですか? 人間が今のこの状況を作り出した元凶であり、憎むべき対象だと思いますが」


 嫌われこそあれど、好かれる理由はあまり無いはずだ。俺がここにきてやってきたことを足しても、あの惨状を見ればまだまだプラスにはならない。

 

「……パパとママが言ってたにゃ」


 リコの両親……そう言えば会ったことがないな。恐らく戦争か、あるいは何かの戦いで命を落としてしまったのだろう……。

 

「人間の中には良い人もいるから、どんなことがあっても全ての人間を憎んではいけないって……教えてくれたにゃ」


 なるほどな。死んだ両親の言葉を今でもしっかり覚えているのか。とても良い子だが、だからこそ――危うい。

 

 とても素晴らしいその言葉は、リコを縛り付ける呪いの言葉にもなってしまう。

 

「……そうですか。ご両親はそんなことを仰られていたんですね。確かに人間には良い人間もいると思います。でも、圧倒的に悪い人間のほうが多いんですよ」


「で、でもソウセイは良い人間にゃ!」


 リコは俯いていた顔を上げ、泣きそうな顔でそう言ってくれた。その言葉は嬉しいが、この子はもっと、更に人を疑うことを覚えたほうがいい。

 

「……そうですね、今回はたまたま私が良い人だったかもしれませんが、ゲイルも言っていましたよね、信用させるために良い人を演じている人だっているんです」


「そ、それは分かってるにゃ……でもソウセイはミリアムを助けてくれたり、お風呂作ってくれたり、リコも守ってくれたにゃ! だからほかの人間とは違うって、リコはそう思ってるにゃ!」


 俺は猫人族達の信頼を得るために行動してきたし、ここまで言ってもらえるのは嬉しいが、今は状況が状況だ。一緒に連れて行くのは――


「だからリコも一緒に行って戦うにゃ! 絶対役に立つにゃ!!」


 リコの目は真っ直ぐ俺を見ていた。その瞳に強い意志を感じる。これ以上は何を言ってもダメそうだな……。

 

「……はぁ、分かりました」


「やった、それじゃあリコも一緒に行くにゃ!」


 リコは飛び上がって喜んでいるが、それとこれとは別だ。

 

「話は分かりましたが、連れて行くのは別問題です。命がかかっているので、リコさんは集落に戻って待っていてください」


 ダメもとで説得を試みる。


「いーーーーやーーーーにゃーーーー!!」


 しかしリコにしがみつかれてしまった!

 

 これがゲームならハンデを背負っての戦いになるから燃えるのだが、現実で他人の命を背負えるほど、俺にはまだその覚悟がない。

 

 だが……ドワーフ達を救出して連れ帰る時にも、同様のリスクはある。

 

 リコがいれば多少のリスクはあるかもしれないが、成功率は、上がるかもしれない。

 

 それにここまで言ってくるなら、俺も腹を括るしかないか……。

 

「分かりました。その代わり絶対私の言うことは聞いてくださいね」


 俺もまだまだ弱いな……。命を落とすかもしれない状況なら、怒鳴り散らしてでもこの子を帰らせるべきなのに、俺にはそれができなかった。


 だがその分、俺は何としてもドワーフとリコを必ず生きて連れて帰るという決意をした。


 戻ったらリコはミリアムに叱られるだろうが、その時は俺が庇ってあげないといけないな。


 なんだかフラグを建てているように見えるが、気のせいだろう。


「分かったにゃ! 何でも言うこと聞くにゃ!」


「ん? 今何でも言うこと聞くって言いましたよ――」


「ソウセイ、グレイヴウルフにゃ!!」


 リコの知らせを聞いて俺は急ぎ舵を取り、イカダを川へ進めた。

 

 振り返るとグレイヴウルフ二匹が、枯れた雑木林から早いスピードで迫っているのを確認した。まだ距離はある。逃げるには十分な距離だ。

 

 イカダを川岸から離し、グレイヴウルフが襲ってこられないように逃げた。

 

 離れたことで迫っていたグレイヴウルフは川岸で足を止め、こっちを見て唸りをあげているように見えた。

 

「なんとか逃げれたみたいにゃ」


 俺とリコはほっと一息ついた。

 

 リコがついてくるのは想定外だが、まぁなんとかなるだろう。

 

 こうして俺とリコの二人で、ドワーフが捕らわれている鉄鉱山へと向かった。

 今回短めで二話に分けて同時投稿してみましたが、いかがでしたでしょうか。


 読みづらい、物足りない、など、何かあれば感想などで教えてもらえると今後の参考になりますので、よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] 予定通り糞餓鬼がって展開大嫌いなんでキブ寸前 このあと大活躍なんで主人公が誉めるとか続くゴミテンプレなら もうバイバイです
[一言] 言うこと聞かない糞ガキが無理矢理ついてくる テンプレ展開がとても不快なので 失礼します
感想一覧
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