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25:集落防衛機構


「さて、ソウセイはこれからどうするんだ?」


 ミリアムと握手を交わし終えた俺は、キャンプファイヤーのところまで戻ってそのまま地面に座った。

 

「集落の周りを木材ブロックで囲って壁にしたいのですが、良いですか?」


「皆、構わないか?」


 ミリアムの問いに後ろにいた猫人族の人達は頷いてくれた。良かった、これで心置きなく壁が置ける。

 

「問題ないようだが、大丈夫なのか?」


 ミリアムは何か色々心配してくれているようだが、問題はないはずだ。

 

「はい、ポンポン設置していくだけなので大丈夫ですよ。高さは一メートルくらいなので、十分壁になると思いますし、ウッドスパイクも設置する予定なので、外敵の迎撃もできるはずです」


 立ち上がり、木枠ブロックを一つキャンプファイヤーの横に設置した。

 

「おぉ」


「いきなり現れた!」


「凄くおっきい……」


「なかなか高いな……」


 猫人族達が様々な反応を見せざわついている。反応は悪くないようだ。


「で、これを強化して……はい、これで木の壁ができあがりました」


 木枠ブロックを石斧で強化して木材ブロックに強化してみせた。

 

「これを集落の周りに設置して、入口部分は木の門を設置するので、大丈夫なはず……です」


「私達に何か手伝えることはないか?」


 ミリアムの申し出に何ができるか考えるが特に思いつかない。

 

「うーん、そうですね……周囲の警戒でしょうか?」


「分かった。戦える者達に見張らせよう」


「俺達に任せてください! やるぞお前達!」


「「「オーー!!」」」


 どうやら猫人族の人達はやる気満々のようだ。だが……。

 

「あの、初めて見るタイプのモンスターがいるかもしれませんし、無理はしないでくださいね」


「ラプターの対処法は皆に説明してあるぞ」


 どうやらミリアムが説明してくれていたようだが、現れるのはラプターだけではない。


「ラプター以外にも出てくると思うので、初めて見るモンスターがいたら戦わずに逃げて私に教えてください」


「分かった。皆もいいな?」


 全員頷いて理解してくれたようだ。

 

「それではよろしくお願いしますね」


「了解した。それでは各自持ち場につけ!」


 ミリアムの号令で猫人族の人達が集落へ戻っていった。凄いやる気だと感心する。

 

 だがミリアムとリコはここに残ったままだが――

 

「私は引き続きソウセイの護衛をしよう」


「リコも残ってるにゃ!」


 二人は護衛に回ってくれるようだ。作業に集中できるので助かるな。

 

「分かりました。ありがとうございます……っと」


 粘土バケツに入っている水が沸騰を始めた。やっと飲めるようになりそうだが、冷ます必要があるな。

 

 とりあえず冷めるまで外壁の設置作業をしていこう。

 

「それじゃあさっそく集落の周りを囲っていきましょう」


 さっそく木の門のクラフトを開始し、その間に仮屋の後ろから集落を囲うように木枠を設置していく作業を始めた。

  

 途中邪魔になる木があれば伐採して整地していく。幸いにも地面は平らで均す必要がないので、この作業が省けるのは大いに助かる。

 

 こうしてあっという間に集落を囲い終わった。集落自体そこまで大きくないので、囲う作業は思ったより楽だったな。

 

「それじゃあ次はこの木枠ブロックを強化していきますね」


「木の枠がいっぱい綺麗に並んでるにゃ……」


「全くズレていないように見えるな……」


 ミリアムとリコが綺麗に一直線に並べられた木枠ブロックを見て驚いている。


 木枠ブロックを強化する前に、ウッドスパイクもクラフトしていこう。整地中に木材のストックも貯まったので、クラフトする余裕ができたのがラッキーだ。

 

 そして木枠ブロックを次々に強化して木材ブロックへと仕上げていく。

 

「あの、二人とも暇じゃありませんか?」


 後ろで護衛してくれているミリアムとリコはずっと俺についてきているだけで、なんだか申し訳ない気持ちになってきた。

 

「見てるだけで楽しいからいいにゃ」


「そうだな。それにどのように設置されていくのか把握しておきたい。だからソウセイは気にしなくていいぞ」


「それならいいんですけどね……」


 俺は強化する手を早め、急いで強化を進めた。

 

 その甲斐あって強化もすぐに終わり、午前中に集落と仮屋を囲い終えた。

 

 時刻は2日目 09:01。

 

「あとはここを門に変えるだけですね」


 仮屋の近くに強化していない木枠ブロックが二個設置されたままになっている。その木枠ブロックを回収し、木の門を設置した。

 

 木の門は高さ二メートル、幅二メートルの両開き式の門……というよりは大きなドアだな。幅五十センチほどの木の板がドアになっている。内側からかんぬきで閉めることも可能だ。

 

「おお、リコでも簡単に開けられるにゃ!」


 簡単に開けられてしまうのは門としてどうなのか疑問が残るが、あるだけで脅威に見えると思うので、今はこれだけでも十分だろう。あとは耐久だが――

 

「簡単に壊せてしまいそうだが、大丈夫なのか?」


 ミリアムが不安そうに門を見ていた。

 

「うーん、そうですね……」


 俺は試しに門を石斧で一回叩く。すると493/500という数字が浮かび上がってきた。

 

「……」


 もう一回叩いてみる。

 

 486/500。耐久値は7ずつしか減っていない。石斧で木材を叩くときと同じ数字だ。

 

「ミリアムさん、ちょっと思いっきりぶん殴ってもらっていいですか?」


「……いいのか?」


「はい。壊れてもすぐに作り直せますから。あ、ちょっと待ってください」


 俺は門の後ろに回り、門を注視して『門を閉める』の選択肢を選び、閉めた後は『鍵をかける』を選択して門に鍵をかけた。

 

「何もしてないのに門が勝手にしまったにゃ!?」


 俺が手を触れずに門を閉めたことにリコが興奮していた。

 

「はい、これで大丈夫なので、思いっきりお願いします」


「分かった……」


 そう答えるとミリアムは木の棍棒を構る。

 

「……行くぞ!」 

 

 思いっきり門の扉を木の棍棒で殴りつけた。

 

 強烈な打撃音が響き渡り、集落にいた猫人族の人達もこっちを向いていた。

 

「なんでもないにゃー!」


 リコが説明して何事もなかったようにみんな作業に戻っていた。

 

「……本気で攻撃したのだがな、傷一つついていないとは」


 ミリアムが本気で攻撃した場所には傷一つついていなかった。これはシステムの問題で、耐久値が一定以上減らないと壊れたグラフィックにならないことが原因だろう。

 

 耐久値を見てみると、441/500と表示されていた。45も減らしたのか……。武器が違ったら一気に半分くらい削りそうなほど、ミリアムの力には凄まじいものを感じる。

 

「いえいえ、結構削れていたようです。あと10回くらい叩いたら壊せると思いますよ」


「……そうか。見た目によらず頑丈なんだな」


 ミリアムは神妙な顔つきで門に触れている。


 ミリアムの本気でこれだ。普通の人間だったらもっと抑えられるかもしれない。門としては十分効果を発揮してくれそうだ。


 俺は石斧を左手に持ち替えて門の修理を始めた。門の修理も木材をいくつか消費するだけで済むのでリーズナブルだ。門のグレードが上がってくれば修理素材も高くなってくるが、それ相応の効果を発揮してくれるので、必要経費として考えれば問題ない。

 

 それから俺は門の修理を終えて、集落を囲った木材ブロックに隣接させてウッドスパイクを設置していった。これで大抵のモンスターは迎撃できるはずだ。

 

 ただこれの弱点は一点集中されると壊れたところから攻め込まれてしまうので、その点には注意したい。ゲームなら移動して誘導させられるが、現実では知能を持つ相手だとそうはいかないからな。早めにその部分の対策も取りたい。

 

「……よし、これで集落の簡単な防衛機構ができました」


「あっという間に壁と罠を用意してしまったな……」


「これで夜も安心して眠れそうにゃ……」


 だが、壁と言っても一メートルだ。簡単に飛び越えられてしまう可能性がある。整地したことで木材に余裕があるので、二段に重ねて二メートルの壁を作ったほうが安全度も段違いになるかもしれないな。

 

「やっぱりもう一段積み重ねましょうか」


 善は急げということで、俺はパパパパッと木枠ブロックを木材ブロックの上に重ね、次々に強化していった。

 

 時刻は2日目 9:46。やはり石斧での強化は四回叩く必要があるので時間がかかってしまうな……。

 

 だが二メートルの外壁が完成した。木材だが十分壁としての役割を果たしてくれるだろう。

 

「こんな短時間で外壁を用意してしまうとはな……。こんな芸当、ドワーフの熟練職人でも無理だろう……」


「はえー……すっごいにゃ……」


 自分達の身長よりも高い、二メートルの木材の壁がそびえ建っている。綺麗に一直線に設置された木材の壁は、まるで一種のアートのように美しく感じられた。

 

「これで内地で畑作業とか安全に行うことができますね。あ、いずれ上から迎撃できるように、足場とか銃眼とか、えーと、ツィンネ、だったかな? ああいうのも設置してみようと思います。それにオートターレットや有刺鉄線とか――」


「わ、分かった、ソウセイがまだまだ何かしたいというのは分かった」


 ついつい興奮して早口で言ってしまったか。こういう迎撃拠点は男のロマンだから仕方ない。

 

「これでもうモンスターに怯えて眠る必要も無くなったのだな……本当にありがとう」


 ミリアムの目には涙が浮かんでいた。過去に何かあったのだろうか。

 

「……いえいえ。ですがこれはあくまで仮置きです」


「どういう意味にゃ?」


「私はこれからドワーフを仲間にしにいきます」


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