1.プロローグ
新連載始めました!
ストックがあるので、しばらくはテンポよく更新出来そうです。
いつも私の中で声がする。
『なぜそんなことも出来ないのです?貴女はそれでも由緒正しいケルフェン伯爵家の令嬢ですか?』
『旦那様が御心を壊したのは、何も出来ない貴女のせいですよ。』
『せめて良家に嫁げるよう、死に物狂いで努力なさい。貴女の存在価値はそれしかないのですから。』
どれも義母から言われた言葉だ。
幼い頃から息を吐くように無能だ、無価値だと言われ続け、呪いのように私の心を縛って頭から離れない。
ー 私が生きている価値って何かしら…
気付くとふと、そんなことを考えてしまう。
それでも私は、私を諦めるわけにはいかなかった。私が壊れれば、継母の毒が今度は大好きな妹に向かってしまうから。
そんなこと絶対にさせない。
不幸になるのは私だけでいい。
妹には妹の幸せを掴んでもらいたい。
それを支えに、厳しい淑女教育に耐え続けた。
でも、どんなに頑張っても褒められることは決してない。求められるレベルが上がるだけでゴールが見えない。それはまるで生き地獄のよう。
ー いつまでこんなことが続くの…
私の心は限界だった。
食事を抜かれたり、意味もなく執拗に責め立てられたり、窓のない部屋に監禁されたり、時には折檻を受けたり…そんなことは日常茶飯事。
ー 誰でも良いから、早く私のことを貰ってくれないかしら…
夜空の星に祈りを捧げる。
そんなことをしても無意味だと知りながら。
それでも何かに縋らずにはいられない。
日中は義母の非道な仕打ちに耐え、
夜は星空に願う日々。
そしてようやく迎えた18歳になる年。
成人し、婚約を交わすことが出来るようになる。
それは私にとって、自分の役目を果たして何もかもから解放されることを意味した。
今のこの状況より劣悪な嫁ぎ先なんてあるわけがないのだから。
ー なんて素晴らしいのかしら。
私の中に初めて希望が芽生える。
新たな未来に、期待をせずにはいられない。
それなのに、
お相手はあの『完璧公爵』だったなんて…
一瞬で目の前が真っ暗になった。
お読みいただきありがとうございます!




