覚悟
本日3話目
「ほら、3人が黙っていてくれれば、分からないわよね?」
3人が一斉に首を横に振った。
「すでに侍女たちの間で噂されていると思います。先ほどのハンナの悲鳴に心配して何人も駆けつけておりますので」
そ、ん、な。
「アルバートを、養子にはできないってこと?」
「そうですね。養子にすれば、リーリア様にもアルバート様にも悪評が付いて回るでしょう」
セバスの言葉に蒼白になる。
「養子にしなければ?」
「養子にしようとしていたということは他の方はご存知ありませんから、リーリア様が若い愛人を持ったと、それで噂は終わるでしょうが、アルバート様が今後どのようなお立場になるかは……。リーリア様に飽きられて捨てられたと良縁は期待できないでしょうね」
そんな!
すやすやとこの騒ぎでもまだ寝ているアルバートの幸せそうな寝顔に視線を落とす。
私のかわいい子が……不幸になるというの?
しかも、原因は私。
「わ、私が悪いの、そう、私が全部悪いの!ねぇ、私が遊んで捨てた、アルバートはかわいそうな子だって同情してもらえない?」
3人が首を横に振る。
「少なくとも、女公爵に手を出した過去があるとなれば、要人の警護には付けないでしょう」
Σ( ̄ロ ̄lll)ガーン。
「それって、それって……親衛隊養成学校にせっかく通っているのに……」
親衛隊にはなれないってこと?
「いつまで通えるか……」
小さな声でセバスがつぶやく。
あああああっ!
「私のせいで、私のせいで、アルバートの未来を奪ってしまったってこと?ねぇ、何とかならないの?私、アルバートには幸せになってもらいたいの!そのためだったら、私、何でもするわ!私、私……」
メアリーが、私の元へと気て、手を取った。
「リーリア様、アルバート様の名誉を回復する方法がないわけではありません」
「ほ、本当?何?どんなことでもするわ!」
セバスも私のすぐ前まで歩いてきた。
「ですが、リーリア様は社交界でそれなりに噂されることを覚悟しなければなりません。しかし、アルバート様は親衛隊養成学校をやめることも親衛隊として要人の護衛につくこともできるでしょう」
希望が見える。
「本当?教えて、私は何をすればいいの?私が悪く噂されるのは全然気にしないわ!だって、どうせ、ろくな噂が流れていないんだもの!」
セバスの目がきらりと光った。
「リーリア様がご結婚なさればよろしいかと」
「え?結婚?」
そうか。
私にはちゃんと結婚する相手がいるから、アルバートのことは単なる誤解だと、朝まで一緒だったなんて単なる噂だ。婚約者と私を別れさせようと言う策略に違いないとかそう逆に噂を流して真実を塗りつぶすってことね!
「分かったわ!私、結婚するわ!アルバートの噂がかき消されるくらい、スペシャルな結婚をすればいいってことね?……すごく嫌だけど、でもアルバートのためだもの、ルイードがいいんじゃないかしら?ルイードは腐っても王弟だし、結婚すれば、アルバートとの噂なんて消し飛んじゃうだろうしっ」
メアリーが首を横に振った。
「消し飛ぶのはアルバート様の首でしょうね。俺のリーリアに手を出すものは生かしておけぬと、言いそうですし……王弟の顔色を見てアルバート様と親しく付き合おうという人はいなくなるでしょうねぇ」
なぬ?
ルイードめ!
どこまでも迷惑な男よ!
「じゃぁ、誰と結婚したらいいの?誰でもいいってこと?ああ、油ぎらぎら禿げ散らかしただぶっちょエロじじぃ、公爵家の財産狙いのハゲタカ、女に公爵など務まるはずもないと散々コケにしたピー……。うぐぐ、身から出た錆、子供のため、いえ、子供にはできなかったアルバートのためとはいえ……」
想像しただけで吐きそう。
でも、仕方がないわ。
耐えるの。
だって、アルバートのためだもの。
「ううう、リーリアお嬢様、そこまでのお覚悟、見事でごさいます……」
ハンナが松葉づえをつきながら目の前に来た。
哀れルイードwww
さ、次の話でラストです。ええ、もう、終わっちゃうんです。




