危機
本日2話目
「へ、部屋にいらっしゃらないから、探してみれば……」
ん?部屋にいない?
顔を上げて改めて部屋の中を見回す。
あら、本当だ。ここ、アルバートの部屋だ。
うっかり寝ちゃったのね。
ううーんと声を上げながらアルバートがもぞもぞと布団の中で動いている。
アルバートってば、ハンナのあの大きな悲鳴でも起きないなんて……。
ちょいちょいとほっぺをつついてみる。
うーんってちょっと反応して可愛い。ふふふ。つい、寝てる子で遊んじゃうわね。
「だ、だ、だ、誰ですか、そ、その殿方は……」
殿方?
「ああ、ハンナはまだ会ったことが無かったわね。殿方じゃないわよ?アルバートよ」
ベットから降りる。
「ア、アルバート様?え?」
「ふふ、ハンナのアドバイスでなかなか仲良くやれてると思うの」
あわあわとハンナの口がパクパクしている。
「うちの息子(10歳)と同じくらいだと伺っていましたが……」
「ええ、ハンナの息子(16歳)とよりは少し上の18歳よ」
ハンナがふらりとよろめく。
「じゅ……1、8、さ……」
危ない!
倒れそうになったハンナを、さっそうと現れたセバスに支えられた。
その隣にはメアリーの姿もある。
「ああ、メアリー、セバスも……わ、私ったら、勘違いをして、とんでもないアドバイスを……お嬢様に……まさか、アルバート様が少年ではなく青年だったなんて……」
え?
あれ?
ハンナは知らなかったの?
あれ?
「何をアドバイスしたのかは存じませんが……一晩ベットを共にしてしまったようですね?」
セバスが口を開く。
「ああ、そんな言い方、違うわ、お酒が入って、うっかり眠ってしまっただけで」
慌ててアルバートの身の潔白を主張する。
「つまり、お酒も飲める成人した男性と朝まで一つの寝室で過ごされたと……」
メアリーが小さく首を横に振った。呆れたような目で見られてる……。
「で、でも、ほら、親子だし、お父様の寝室で夜を明かしたことだって何度だってあったから、だ、大丈夫よね?」
ハンナが泣きそうな顔をしている。
「公爵様とリーリア様は間違いなく親子でしたから……誰も何も申しません。ですが、アルバート様とリーリア様は、親子ではありません」
「そ、そりゃ、今はまだ、親子じゃないけど、でも、半年後には養子に……」
メアリーがハンナの肩を慰めるようにたたく。
「困りましたねぇ、まだ親子ではない成人した男女が朝まで一緒のベットにいたとか……」
セバスが首を縦に振って同意を示す。
「そうですね。このことが社交界で広まれば、アルバート様は、次期公爵になったとしても貴族たちに受け入れられることはないでしょうねぇ」
え、何?どうして、どういうこと?
分からなくてハンナの顔を見る。
「リーリア様が若い愛人に入れ込んで財産を渡すために養子にしたと噂されます、アルバート様はリーリア様をたぶらかしてまんまと公爵家を乗っ取った者として、誰にも受け入れてはもらえないでしょう……!」
さめざめと涙を流し始めたハンナ。
「あ、そんな、だって……、だ、大丈夫よね?」
嘘!
そんな!
どもー。
なんか、勢いで書き始めたわりに、ついつい書きすぎた感。
途中あとがきにあるように当初の予定変更したラストですが、まぁ、基本的にはコメディなんで。
大方の予想通りの……
後日のアルバートの様子とか知りたくもあり、想像できちゃったり。




