勝利
もしかしたら、アルバートの方も、急に家族っぽく突っ走らないようにセーブしてた?
本当はすぐにでも私と家族になりたいと思ってくれていた?
「ありがとう、アルバート」
嬉しい。
お酒が入ってきっと、本心が漏れてしまったのね。
手をの場してそっとアルバートの頬に触れる。
一瞬びくりと動いたアルバートの頭がかしいで、私の頬にお休みのキスをおと……さずに、そのままアルバートの顔が私の肩へと落ちた。
首筋に、アルバートの唇が触れた。
え?
あ……
こ、これ、お休みのキスじゃない……よね?
経験したことがない感覚に、思わず目をぎゅっと閉じる。
くすぐったいようなそれでいて、なんだか気持ちいような、不思議な……。
ん?
あれ?
えっと……。
「アルバート?」
首に顔をうずめるようにした体制のまま、アルバートは、静かに寝息を立てていた。
ね……むって……る?
すーすーと規則正しい寝息が耳元近くで聞こえる。
私の上に、アルバートの鍛えられたたくましい体が乗り、胸が上下しているのも感じる。
「ああ、そうだ……人って、温かかったんだ……」
……アルバート。
そっとアルバートの背に手を回してぎゅっと抱きしめる。
お父様と同じ香り……。
お父様と同じ金の髪に……お父様と同じようにお酒が弱くて……。
……。
お父様とは違ってずいぶんと若々しくて。
お父様と違って丁寧な言葉遣いをして。
お父様と違って……る……けれど。
けれど、アルバートが好きだわ。
お父様に似ているから好きなんじゃないわ。お父様に似ていなくてもアルバートが好き。
絶対に……家の子になって……
「家族に、なりたい……」
横を向くと、綺麗なアルバートの寝顔がある。
ふふ。
そっと、金色の髪をなでると、ふわりと懐かしい整髪料の香りがした。
さ、そろそろ自分のベットに戻らないとね。
……いい香り。
もう少し、このままいても大丈夫かな?
それにしても、今日は私、アルバートに勝ったのよ。
眠らなかったもの。
お酒の力を借りるなんてちょっとずるいかなと思うけれど、勝ちは勝ち。
あれ?
勝負なんてしてたかしら?
そもそもなんだっけ?
そうそう、親が子供より先に寝ちゃうなんて恥ずかしいと思ったんだった。
これは親の意地なんだわ。
バタンッと、大きな音と、ぎゃぁーーーっという激しい悲鳴で目が覚める。
「え?何事?」
慌てて目を覚ますと、ドアの入り口で松葉杖をついて顔面蒼白のハンナの姿がある。
「ああ、ハンナ。無理しなくていいのに、今日から出勤?」
松葉杖を突いてはいるけれど、しっかり侍女の服装を身につけている。
「そ、そうです。メアリーと相談して、サプライズで仕事に復帰して、今日は朝、お嬢様を起こしに行って驚かそうと……」
上半身をベットからおこしてふっと笑みがこぼれる。
「それにしては、私じゃなくてハンナの方がずいぶん驚いた顔をしているわね。というか、私も悲鳴に驚いたけれど、どうしたの?」
ハンナがワナワナと震えて指をさしている。
ども。間が空きました。ラストスパート、ラストまでどんどーん。
最終話としてアップしようと思ったら、意外と文字数があったので分けて投稿しますが。
続けて最後まで投稿しまぁす。
お楽しみいただけるとうれしいですが、
いいですか、
コメディです
最後まで、コメディなんだってば。




