いっちご、いっちご、いっちご
「こちらにお持ちすればよろしいのですか?アルバート様とご一緒に召し上がらないので?」
ふわぁ!
そうだったわ!そうだった!
「行く、行きますわ!もちろん、えっと、そうよ。アルバートと一緒にお茶をいただくわ!」
そうよ私には子供(仮)がいたんだわ!
仕事に没頭するあまり、家庭を顧みないような糞親にはならないんだから!
ちゃんと子供との時間を大切にするいい親になって見せるんだ!
お茶をいただく場所は、中庭の噴水が見える部屋だった。
部屋に行くと、料理長が料理人3人と一緒に壁際に控えている。
おや?珍しい。いつもはお茶とお菓子を侍女が運んで準備するだけなのに。
アルバートはすでに席に座っていた。私が入ってきたのを見て、立ち上がり近寄って手を差し出してくれる。
エスコートしてもらうほどの場面ではないんだけれど、親子の関係をお父様を私の想い出の中から探し出す。
「お父様、お父様、早く早く、今日はイチゴのケーキなのよ!」
……うん。早く食べたて待ちきれず席を立ち、お父様の手を引っ張った想い出があったわ。
そうね、うん。ハンナが言っていたわ。男の子はいつも腹ペコだって。
待ちきれないのね。
てなわけで細かいことは考えずに素直にエスコートされて席につく。
「まぁ、素敵ね」
なんと!
なんと!
料理長を振り返り声をかける。
「ありがとうございます。こちらは、カリカリのラスクにチョコレートをかけたものとなります、いっぽうこちらは柔らかいパンを一口サイズにしてチョコレートをコーティングいたしました」
料理長がテーブルに乗っている「菓子パン」の説明を始める。
柔らかいパンとカリカリパン。うん、うん、なるほど。
「そして、ご指示はありませんでしたが、こういったものも合うのではないかと作ったものです」
料理長、待ってました!それをそれを!その説明を早く。
「柔らかなパンを薄く切り、生クリームとイチゴをサンドいたしました」
ふいーっ!来た!イチゴ、きたぁー!
「パンに、いちご?生クリーム、チョコレート?……始めてみます……」
アルバートが呆然としている。
「そうね、私も初めて見るわ」
だって、お菓子よりもお腹が膨れるものがいいって、男の子はそういうものだってハンナが言ってたから。
「食べましょう」
イチゴ、イチゴ、イチゴ。
「あら?これはどのように食べればいいのかしら?ケーキのようにフォークを使って?それともパンのように手で持って?」
料理長の顔を見ると、料理長が料理人たちの顔を見回してから小さく頷く。
料理長も、よくわかっていらっしゃることで……www




