おやつはなににすればいいかなぁ
「ハンナァーーーッ!教えてちょうだい!子供のおやつは何がいいのかしら?」
そう。困るんだけれど、私には強い味方がいる。
うん、ハンナはまだ歩けないので、ベッドの上で大人しく……侍女たちからの報告書を読んだり、指示書をしたためたり……仕事、してますね。
ごめん、仕事の邪魔して……。
ああでも、もし動けたらきっと私が執務室にいる間にはあっちこっち飛びまわていてどこにいるのか使用人に聞きまわって探さないと見つけられないわね。
そう考えると、ハンナの部屋に来れば会えるの便利。
「あら?リーリア様、今は執務中では?どうなさったんです?」
う。ハンナの目がキツイ。仕事さぼってるみたいに思われたのかな。うん、こんな時は包み隠さず本当のことを言えばいいの。
ええ、私、本当のことを言うだけです。
別に仕返ししようとか、人のせいにしようとか、ざまーみろとか思って言うわけじゃないですからね。
「ルイードが今まで来ていたのよ」
ハンナの眉根が寄った。
「そうでしたか……。王弟殿下はどのような用件でいらしたのですか?」
「ロマルク公爵家乗っ取り……を宣言して言ったわ」
「は?」
「俺がロマルク公爵になる!とか言っていたわね」
「はぁ?」
「結婚すれば俺がロマルク公爵だと。行き遅れをもらってやるありがたく思えと。相変わらず私への嫌がらせに来たのよっ!」
ハンナが額を抑えた。
「なんとなく、王弟殿下の様子が目に浮かびました……」
はぁーっとハンナが小さくため息をついた。
「ったく、もうちょっとうまいやり方があっただろうに、どうしてああこじらせたのか……。うちの息子たちには悪い見本として真似しないように教育するのに大変役にたちましたが……」
ぼそぼそとハンナが何かをつぶやいている。
「悪気があるわけじゃないんですよね……。お嬢様が馬に乗ってみたいと言えば、一番立派な馬を連れてきたり……。はじめて乗る馬は小さくて気性が優しい人懐っこい馬にするべきなのに、城で一番大きくて早くて立派で乗りこなすのが困難な将軍の馬とか持ってくるとか……。馬鹿なの?馬鹿なの?馬鹿なの?ああ、いけませんわ。思わず不敬なことを考えて……馬鹿よね?」
まだ、ハンナがぶつぶつとつぶやいている。まるで呪いの言葉のように、なんだか、こう、音色が怖い……。
「えーっと、ハンナ、大丈夫よ。はっきり後継者問題は近く解決すると言ってやったわ!」
ハンナがこめかみを引きつらせている。
「そんなことで引き下がりますかね?あのこじらせ……いえ、王弟殿下が」
「え?でも、アルバートが養子になってくれれば、ルイードが私と結婚する意味ないよね?」
ハンナがふっと遠い目をした。
リーリア視点に戻りました。




