アルバートくんのおでかけとおかえり最終話
「あのね、行ってきますとアルバートが抱きしめてくれたでしょう?だから、帰ってきたら私が抱きしめてあげようと思ってたの。でも、なんだか、私が子供みたいにアルバートに抱きついてるみたいだなぁと思ったから、ごめんなさい」
必要以上に申し訳なさそうに謝るリーリア様。
ああでも、僕が出がけに抱きしめたことを嫌がっていたわけじゃない。それどころか、抱きしめ返してくれようとしたのは素直に嬉しい。
だけれど、胸を押し付けても……誘惑されたと僕は勘違いするようなあの行為も……。
リーリア様にとっては、ただの親子の抱擁のつもり。
どこまでも僕を子供扱いするんだ。
12歳の年の差はそんなに大きなもの?
決して僕を男として見れないほどの年齢差なの?
リーリア……。どうしよう。
リーリア様が熟女じゃなければよかったのにって考えるなんて。僕は本当にどうしちゃったんだろう。
リーリア様が大人の女性として僕を抱きしめるんじゃなくて……。
リーリア様が……
「子供みたいに……僕に抱きしめられればいいんですよ……」
思わず声が漏れる。
おっと、つい感情が口から洩れてしまった。
幸いにしてリーリア様の耳には届かなかったようで小さく首をかしげている。
話題を変えよう。気持ちを落ち着かせなければ……。
「来客があったようですが」
「来客?……客っていうか、あれは、客扱いもしたくないわね」
リーリア様が顔をしかめた。
客扱いをしたくない?その割には使用人たちが丁寧に見送りを……。
一体誰?何の用だったの?
「え?それはどういう……リーリア様にそんな顔をさせるなんて」
「親戚筋の人間で、結婚しろと言いに来たのよ。何度もうるさいんだから」
親戚……まぁ、うちも遠い遠い親戚ではるけれど。
近くの親戚だろうか。
結婚しろと何度も……か。
ご心配なく。僕がリーリアと結婚するんだ。
「心配せずとも近く問題は解決すると……僕が貴方と……一緒に……」
そう。結婚したら、すぐに子供を作るんだ。これで跡継ぎの問題だってクリアする。
「……僕が、あなたに子供を……」
って、これ、聞く側にとっては、体目的とか思われるんじゃ。
「あ、いえ、あーっと……それはその、それが目的ということではなくて」
慌てて言い訳をしようとして、よく考えたらまだ口説いてないし、結婚したいって話もしてないし、何言ってんの、僕。
……うううう。
怪しいやつじゃん。
「ああ、ごめんなさい。いつまでも引き留めてしまっては、疲れも取れないわね。部屋に戻ってゆっくりして頂戴。そうだ、おやつを運ばせるわ。何がいいかしら?いつも私は書類仕事の合間には頭が疲れているから甘いものを食べるのだけれど……」
よかった。リーリア様には不審に思われていないみたい。
ほっとして笑顔を浮かべる。
で、おやつか。
「ありがとうございます。リーリア様が僕のために考えて用意してくださったものであればなんだって嬉しいです」
甘いものは苦手というわけじゃないし。
お腹が満たされるならなんだっていい。
できれば、リーリア様が手ずから僕の口におやつを運んでくれる妄想がはかどるおやつなら最高なんだけど。
次回より、リーリア視点に戻ります。




