アルバート君の妄想
このまま幻に身をゆだねるべきか、頬っぺたをつねって現実に戻るべきか……。
究極の選択を迫られている。
どうする僕。
どうする。
このまま幻のリーリアの背に手を回してみるべきか。
なんて、悩んでいる間に、幻のリーリア様が僕の腕の中からいなくなる。
ちぇっ。こんなことならさっさと手を回して思い切り抱きしめて、柔らかな熟女の背中の感触を楽しめばよかった。
ただし、妄想の中だけどな!
と、思ったけれど、僕の妄想は実に優秀だ。
僕の腕の中からいなくなったkと思えば、可愛らしい表情で僕の顔を見上げてお願いしはじめた。
「えーっと、お帰りなさいアルバート。ちょっとかがんでもらえる?」
くぅーーーっ。
最高っす。妄想の中のリーリア様は、目じりのうっすらと現れ始めたシワまで美しく……。こんなところまで細かく妄想できる僕、ちょっと変態かもしれない。
ああ、認めよう。僕は、熟女好きに書けては右に出る者もいないほどの……違うか。
うん。
たぶん、今、ダンスの先生や保健医が僕の目の前に現れてもときめかない。
リーリア様だから、こんなにも心乱されるんだ。
かがんでほしいと言ったよね。
もちろん、かがみますとも。
ええ、どうかがんだらいいんでしょうね?
ああ、これは、もちろん愛しきリーリアの前なら、膝を折るべき。
そう、僕の心はあなたのもの!
騎士としての最上級の礼をリーリア様に。
片膝を付けば、すぐにリーリア様がふわりと笑った。
「おかえりなさい、アルバート」
!!!!!!!!
こ、言葉にできない。
「あ、あ、あ、あ、あ」
なに、この妄想リーリア様。
胸を僕に押し当てて、いったい、いったい、どういうこと?
誘ってるのかな?
うん、僕の妄想だし、そりゃ、誘ってるんだよね。
当たり前だよ。
僕の都合のいい妄想リーリア様だもん。
で、今頃本物のリーリア様はどうしてるんだろう。もう、とっくに入り口で立ち止まったまま妄想を開始した僕のことなど無視して、部屋に戻っていったのではないだろうか。
ということは、僕は、この、僕が作り上げたリーリア様の妄想を堪能してもオッケーってこと?
はぁ。
はぁ。
だったら、もう、好きなようにさせてもらう!
僕の妄想リーリア様。
てんてんてーん。コメディです。




