アルバートくんの帰還
ロマルク公爵家に到着し、馬車を降りて中庭を通り過ぎる。
来客があるようで、入り口正面に馬車が置けないということで裏から回ったので少し歩くことになった。
……来客?
中庭に面した部屋に通したのだろうか。綺麗に整えられた庭は客をもてなすには最高の景色だ。
どんな客が来ているのか、気になって窓から中が見えないかと屋敷に目を向ける。
んー、西日になりかけた太陽の光を窓が反射して全然中が見えない。
見えないかなぁと、思わずゆっくりな足取りになる。
いや、違うんだ。
本当は、朝の失態の結果を知りたいような知りたくないようなと……もし本当に嫌われたりしてたらどうしようと。
その気持ちが心に重くのしかかって足が重たくなっているだけで……。
はぁー。
のろのろと歩いていくと、屋敷の入り口付近が騒がしくなった。どうやら、客人が帰っていくようだ。
どんな人間だ?
姿を一目見てやろうと思ったけれど、セバスや他の使用人に囲まれるようにして移動していたため姿を見ることができなかった。
使用人があれだけお見送りに出るなんて……高貴な人間ということ……だよな?
……落ちぶれ子爵の実家じゃ考えられないような人なんだろうな。王族だったりして。
いや、流石にそれはないか。王族ならこちらが呼び出されるか。
玄関のドアをくぐると、リーリアが一人立っている。
使用人たちは見送りで出払っているのだろう。
……両手を広げて、まるで通せんぼをするような恰好をしている。
ああ、これは……。
やはり朝のことを怒っているのだろう。
緊張が顔に現れているし、もしかしなくても「これ以上通しませんわ、もう養子候補でも何でもありません」っていう意思表示なのだろう……。
どう、言い訳しようか。聞いてくださるだろうか。
「お帰りなさいっ!」
リーリア様が緊張しつつもニコリとほほ笑み、お帰りと言ってくれた。
え?あ……。
「ただいま戻りました」
帰ってきていいのだろうか……。
僕は、まだ、この屋敷に足を踏み入れてもいいんですか?
「おかえりなさい。無事で何よりです」
僕の心の声が聞こえたのか、リーリア様が動けないでいる僕の元に近づいてきた。
そして。
うっ、っひゃぁぁーーーーっ!
あれ、これ、僕の幻かな。
リーリア様が僕の腰に手を回すようにして、僕に抱き着いてきた。
きっと幻。絶望が見せた都合のよい妄想に違いない。
ど、ど、ど、どうしよう。
いつもありがとうございます。
ルイードに羽交い絞めにさ……いえ、抱きしめられてるリーリアを目撃してしまうアルバート君はやめた。めんどくさそうだから……




