これ、失敗?
どうしましょう。
踏み台を用意する?そのうえで、上から包み込むように抱きしめる?
わざわざ踏み台を?
……玄関に「セバス、踏み台を用意して」というのもおかしくない?
……おかしいわよね。踏み台のある場所から私は動けなくなるし。
近づいて抱きしめるとかできなくなる。……いや、実現しようとすると、常に私の後ろに影のように踏み台を持った使用人が付いて回るという……。
想像してみたけれど、うん、……なしね。
なし。
ってことは。
一旦体を離して、アルバートの顔を見上げある。
「えーっと、お帰りなさいアルバート。ちょっとかがんでもらえる?」
アルバートは素直に膝をついた。
……うん、騎士養成学校だから、さまになるわねぇ。
優雅な仕草で片足を後ろに引いてさっと膝をつく。立てている膝は直角推奨。見上げる顔が何とも美しい。
って、うちの子さすがとか思ってる場合じゃなくて、おかえりなさいをやり直し。
「おかえりなさい、アルバート」
両手を広げて私の胸元当たりまで顔が低くなったアルバートを抱きしめる。
うん。これで、親が子供を包み込むように抱きしめてる感じが出てるよね?
って、思ったんだけれど、アルバートが先ほどよりも体を固くしてしまった。
あれ?何か間違った?
……えーっと。
「あ、あ、あ、あ、あ」
アルバートが口をぱくぱくさせて何かを言おうとしている。
考えるのよ、リーリア。
私、何か間違ったみたい。
「い、行きま……しょ……」
ん?行く?
ああ、そうね。いつまでも玄関って変よね。
疲れて帰って来ただろうに……。
「そうね」
体を離してにっこり笑いか……って、あっれぇ~?
アルバートが私の手を取り、手の甲に口づけして……。
「ご、ご、ご、ごめんなさいっ!」
うわー、大失敗。
これじゃぁ、私がアルバートを従えているみたいじゃない。跪かせてるみたいじゃない。
私が忠誠を誓わせているみたいじゃない。ああ、そういえば、プロポーズするときにもこういう習慣あった?
ってか、違う、とにかく、これ、親子の立ち位置じゃない。
慌ててしゃがみ込んで、アルバートと目線を合わせる。
「あ、あの、その、こ、こ、子供を抱っこするってどんな感じかと、えーっと、ほ、ほら、アルバートは背が高いから、えーっと、ごめんなさい。そうよね。主従関係でもないのに、そんな恰好させられたら、ビックリしちゃうわよね?」
慌てて言い訳を口にすると、アルバートが真っ赤な顔をした。
「こ、子供……」
いつもありがとうございまーす。
何度も言いますが、コメディで……げふげふ




