おかえり
ルイードは、本当に、私のことをずっと家族だと……弟だと思ってたんだ。
って、弟かよ!そういえば、7歳くらいのころに、木刀を持たされたことがあった。お父様とルイードが剣を交えて稽古をしていたから。それをずっと見ていたら「リーリアもやりたいなら稽古をつけてやる」とかなんとか言って……。
まぁいいわ。弟だと思われたとしても、家族だと思ってくれてたのは素直に嬉しい。
きっと、騙されてるんじゃないかとか、ごちゃごちゃ口うるさいのも、家族として心配してくれているんだ。
まぁ、うん。そうよ。お兄様なんて大っ嫌いみたいな嫌いよ。結局。
求婚をしてくる他の貴族への嫌悪感みたいなものとは全く違う。……本当は好きなの。いっぱい恨み言はあるけれどね。嫌いにはなれないの。
いっぱい根に持っているけどね。
いつか、ルイードの好物を目の前で食べてやるんだからっ!
……あら?ルイードの好物って何だったかしら?
おっとこうしてはいられないわ!
玄関でお出迎え、お出迎え。
本来であれば「アルバート坊ちゃま(仮)がお帰りです」とかなんとかセバスなりメアリーなりが知らせてくれるんだろうけれど。
王弟殿下が帰るためのお見送りで出払っている。
ので、玄関で待つことにした。
そわそわ。
そわそわ。
朝の失態……アルバートにハグされて思わず体が固くなってしまったことを取り戻して、私はアルバートのお義母さんになるのよってことを伝えないといけない。
自然に、自然に、おかえりなさい、ぎゅっっと。
家族っぽく、自然に。
……ううう、緊張しますわ。
(天の声*自然になんて考えれば考えるほど……察し)
あけ放たれた扉の向こうにアルバートの姿が見えた。
「お帰りなさいっ!」
これ、どうすればいいの?
両手を広げて待っていればいい?
「ただいま戻りました」
アルバートの表情はなんだか硬い。
あれ?
両手を広げて待ってても、来ない……。
えーっと、やっぱり、朝のことがトラウマになっている……。傷ついている。
それとも、待ってるだけじゃダメかしら?
それなら。
てこてこと歩み寄り、アルバートを抱きしめた。
「おかえりなさい。無事で何よりです」
腕の中のアルバートが固まる。
……というか、身長差。
なんか、思ってたんと違う。
私の顔が、アルバートの胸にある?
おや。これ、まるで私がお父様お帰りなさい!と、お父様の胸に飛び込んだみたいな形と何ら変わりがないのでは?
待って、私が親。
私が親なの!こう、親が子供を包み込むような、そういう感じと違うんだけれど……。
えーっと。
アルバートも困るわよね。まるで子供が胸に飛び込んでみたみたいに急に私に抱き着かれても……。




