だから、な?
「そんなきっぱり言うか、リーリア……まぁ、いい。今更だな。いいんだよ。嫌いじゃなきゃ」
嫌いじゃなきゃいい……?
「ルイード……あなたも、第一王子派第二王子派の人たちに翻弄されて、結婚が遠ざかっていたのは分かりますが、嫌いじゃなきゃいいなんて寂しいこと言わなくてもいいんじゃありませんか?殿方の33歳は遅いとはいえ、遅すぎるような年齢ではありませんし、今もなお魅力的だとモテるんですから。いくらでも選べるでしょう?嫌いじゃなくて好きな人を見つければいいと思いますわ」
ちょっとルイードは確かに意地悪ばかりで、嫌いなところもあるけれど……。
ルイードのことが本当に嫌いなわけじゃない。
だから、やっぱり、ルイードのことは心配でもある。
「だったら、リーリア、結婚しよう。な?」
だから、だったらって、どこにつながる言葉なの?
「ですから」
「魅力的だと思ってくれてるんだろう?」
ルイードが大人の色気のある顔で私の顔を覗き込む。
「それは、世間的に、です」
本当は私も魅力的だとは思うけれど、でも、それ以上にその顔に騙されるものか!きっとまた何かからかって遊ぶつもりだ!という防衛本能が強く働く。……そうね、ルイードには、17、8くらいの若くて純粋な可愛らしい子がお似合いまもしれない。流石にルイードもそれほど年の離れた子であれば、守ってあげようだとか、大事にしてあげようと思うわよね?
「……なぁ、リーリア、お前もこのままじゃまずいとは思っているんだろう?」
急にルイードの声音が真面目な物に変わる。
「ロマルク公爵家に何かあれば、国が荒れる。公爵家だけの問題で収まらない。……叔父は立派な人だった」
ええ。お父様は立派でした。
「リーリアも女公爵としてよくやっていると思う」
ドキリ。
ルイードが私を褒めるなんて。
「だからこそだ。だからこそ……いるだろう、次期公爵が……立派に後を任せられるものが」
ああ、そうか。
心配してるんだ。公爵家の行く末を。そうだよね。ろくな求婚者が来ないってのは、ルイードにも伝わってるよね。
あんな奴らが公爵家に入ってきたら……。
それに、私が死んだあと、世継ぎがいないとなると……公爵領はどう分割されて誰の手に渡るのか。それとも、ボンクラだと言われる分家筋の誰かが後を継ぐのか……。
「俺とリーリアの子なら、立派な跡継ぎになれると思うんだ。な?そう思うだろ?」
「ルイード、私のじゃないな、公爵家のために犠牲になる必要はありません」
「犠牲じゃないぞ、むしろ、いや、だから、分かるだろ?」
犠牲になるわけじゃなくて、国のために尽くす。王族の務め。そして、臣下となる者の……義務。
それとも……。
男の子の意地悪は、女の子にとったら、本当に単なる意地悪でしかない。




