予定確認
「さあ、食べましょう。しっかり食べて、勉強頑張ってね!」
と声をかけると、さらに表情が……。
あれ?
「僕は……まだ、学生だということを悔しく思う日がくるなんて……」
ん?聞き取れない声でアルバートが呟きを漏らす。
……こ、これは……。
「もしかして、朝食に嫌いなものが並んでましたか?えーっと、好き嫌いなしでちゃんと食べないとダメですよ?」
テーブルの上に乗っているのは、セバスなのか料理長なのかが気を使ってくれたであろう、人参のソテーと分厚く切ったハム。
アルバートの好物だという人参と、朝とはいえ肉っぽいものをと気を使ったものだろう。それに加えて、薄くスライスして軽く表面を焼いたパン。
あと、リンゴとバナナ。それから野菜ジュースだ。色は緑で一見するとまずそうに見えるんだけれど、これが意外と美味しい。緑色はアボカドという果実とソフトケールという苦くないケールの色だ。栄養があるからと、何でも野菜を使えばいいと作られたまっずい野菜ジュースとは違うのですよ。
……野菜嫌いな私のために、約20年前に開発された、それはもう特別な……って、今は、そこまで野菜は嫌いじゃないですよ。大人ですし。
「そういえば、騎士科では体が資本ということで、野菜ジュースが訓練中にも出される風習があると聞きましたが、本当ですか?もしかしてそれは……とてつもなくまずい味なのかしら?」
お父様が昔行っていた。風習とはいえ、あれはきつかったと。むしろ精神的苦痛で健康を害するかと思ったとか。それに比べればピーマンは美味しい方だと……って、やっぱりピーマンが嫌いだったんですよね。
そうか。お父様も騎士科を卒業しているから、アルバートと似ているのかもね。騎士科の人たちは立ち姿が違うと言うし。
「安心して頂戴。見た目はそっくりらしいけれど、我が家の野菜ジュースはとても美味しいのよ」
にこっと笑うと、アルバートも安心したのか、こわばっていた表情が緩んだ。
私が食べ始めるとアルバートも朝食を口にし始めた。
「リーリア様は、今日はどのように過ごすのですか?」
「今日は、午前中は領地の視察ね。この野菜ジュースの原料であるソフトケール生産地を見て回るのよ。耕作地をどこまで広げるべきか農家と相談することになっているのよ」
アルバートが首を傾げた。
「そんなことまで?穀類……税金で納められない葉物の野菜は農家に栽培を任せるのではないのですか?」




