眠り
親が恋しくて恋しくて……泣きつかれて寝てしまうような子供じゃなくて……。
とはいっても、アルバートもまだ18だもの。泣かないだけで、辛いんだろうな。
私……もっと大人だけれど、父が亡くなってとても寂しいんだもの。
セバスの言う通りだ。今日から私が貴方の新しいお義母さんよ。前のお母さんのことは忘れなさい……なんて、なんて酷いことなんだろうか。
性急にことを勧めてはいけませんという言葉が改めて胸にしみ込んだ。
(天の声*当然ながら、アルバートは何にも話は聞いてなかったから、悲しんでいるようなことはない。ただの杞憂である)
アルバートが、言葉を飲み込み、おとなしくベッドの端に腰かけた。ここなら話の途中で眠くなったらすぐに寝られるからね。
その近くに、椅子を一つ持ってきて腰かける。
「あのね、アルバートは18歳でしょう?だから、私が18歳のころの話をしようと思うの。別に何か聞きたい話があったら、言ってね」
と、前置きをして話始めた。例の領地の北の話ね。
初めのうちは、アルバートはニコニコしていたけれど、途中からとても深刻な表情を見せる。
あれ?楽しくないかな、この話?
心配になりやめようかと何度か思ったんだけれど、そういえば、お父様も考え事を始めるとこんな深刻そうな顔をよくしていたなぁと思い出してからは、気にせず話を続けることにした。
北の領地を色々考えながら真剣に聞いてくれてるんだよね。だって、目はずっとこちらを見てる。
資料を広げて時々見せながら説明してるんだけれど、そろそろ、アルバートは眠いかしら?と、何度か顔を見るんだけれど目が合うと嬉しそうな微笑みが帰ってくる。
まぁなんてことでしょう。
領地の話をこんなにうれしそうに聞くなんて……。
もう、時期領主としての自覚が芽生えている?
さすがうちの子。
……セバスが選んで選んで選び抜いて連れてきてくれただけのことはあるわ。
よかった。これで領地は安泰ね。
それにしても、こんなにうれしそうな顔をされたら、話を続けないわけにいかないけれど……。
なんだか、あら……。
ちょっと、私の方が、眠く……。
大きく頭を横に振る。
だめよだめ!まさか、子供よりさきに親が寝ちゃうなんて、ダメに決まってるわ。
ああ、でも、眠気が……。
「リーリア様……?」
誰の、声……。
……ああ、この香り……。
「お父様……」
背中に置かれた手が温かい。お父様の香りがする。
「お父様……生きて……」
生きてたんですね。ああ、そんなはずはない。
いつも話を聞きながら寝てしまった私をベッドに運んでくれたお父様はもういない。
病に倒れてからのお父様は、逆に私の話を聞きながら先に眠ってしまっていた。
眠っている時間が次第に多くなり……。
「ああ、いや、お父様……私を……一人に、しないでっ」
二度と目を開かなかった……。
……。
「お……とう……さ……ま……」
次回よりアルバート視点。




