そうですよね(棒読み)
アルバートの行為をどう理解すればいいのか。家族になる覚悟はできているから気を使わなくていいっていうこと?
それとも、もう今更セバスを呼んでドアをノックするところから始めるのもバカみたいだってこと?
眠いんだから、用事があるならさっさと済ませてほしいってこと?
分からない。
「リーリア様、ど、どうぞ、その、少し驚いただけで、寝る前に顔が見られて嬉しいです」
にこりとアルバートがほほ笑んだ。よかった。と、胸をなでおろす。
「ああ、そんなかしこまらないで」
アルバートが、テーブルと椅子を用意しようとしている。
ちなみに、部屋はだいたい同じ。
南側に窓。東側にクローゼット。西側にベッドが寄せてある。中央には、ちょっとしたお茶を飲むためのテーブルと3客の椅子。物を書いたり本を読んだりする机は、北に配置してある。
「ほら、ここに座って」
ベッドに近づき、ぽんぽんとアルバートに座るようにジェスチャーをする。
「あ……の……」
顔を真っ赤に染めるアルバート君。
あ、そうか。子供にするって、子ども扱いするって意味と勘違いしてるのかも?
さすがに私、なんて言ったかしら?バブミ?なんか赤ちゃんゴッコをしたいから養子を迎えるわけじゃないんだけど。
「ああ、別に、子供扱いしてるわけじゃないわよ?添い寝が必要なおこちゃまとか思って見に来たわけじゃないの。えーっと、そう、2人の子供を育てているハンナにね、親子ってどう過ごすのか聞いたら、小さいころは添い寝。少し多くくなって絵本を読んであげる、もっと大きくなるとお話をしてあげると聞いたので、えーっと、話をしに来たのだけれど」
私の言葉に、アルバートが小さな笑いを漏らした。
「あ、はは、あー、は、そうですよね、話、ああ、そうだ。寝る前によく母も……あ」
しまった。本当のお母さんを思い出させちゃった?
……ズキンと胸が痛む。
仕方がないこととはいえ、公爵家の養子にするからには、実家との縁はすっぱり切ってもらう必要があって、二度と実家の人間を母とも父とも兄とも呼んではいけないし、向こうにもうちの子だと言うことは今後一切ダメだと……いう話はしてある。公爵家と縁続きになったと、よからぬ事件にお互い巻き込まれないためだ。もし、正式に養子縁組の誓約書を提出した後にアルバートを「我が子だ」と言う発言をすれば、犯罪者になってしまうというくらい、取り決めは厳しい。わがもの顔で権利を主張し始める実父や実母、得体のしれない親戚たちという問題が過去に色々あったからできた決まりだ。
思ったよりも、大きな子だったけれど、これで良かったのかもしれない。




