子供部屋
そうよ!思いだしたわ!領地のことよ。あの頃は、確か北端にある国境沿いの街の話をしていたような気がするわ。
隣国との関係も問題ないから、道をつなげて貿易をするかどうか。隣国から商人を受け入れるべきかとか、そんな相談をしていた気がする。
で、結局、商人を入れる、隣国の人間を行き来させることでスパイや、下手をすると暗殺者などよからぬ者も呼び込む危険があるということで、許可制にして、許可した商人のみ商品のやり取りを国境の館で行うことにしたのよね。
巨大なマーケット用の建物を設置。出入りの際には身分を確認。
でもって、もちろん荷物も改めるし、何日も商談にかかる人用に、近隣に宿泊施設を建てたのよね。
そうしたら、今度は、宿泊している商人たち相手に食事やらなんやら商売をしようとする商人が来るようになり。さらには隣国へ物を売りこみたい商人が許可のある商人に商談を持ちかけるようにもなり。
なんだか、気が付けば人が集まり、商人の街として北一番の街が出来上がっていた……。
単に商人を行き来させていたら、ただの通過点だったはずの街が、商人を行き来させなかったことで発展するとか、世の中は面白いわよね。
と、この話をすれば、アルバートも楽しんでくれるかしら?
そうしましょう。
寝る準備がすっかり整う。
寝間着に、ガウンを羽織り、アルバートの部屋をノックする。
ああ部屋は、父が使ってた部屋はそのままにしてある。父が使ってた部屋は当主の部屋でもあるんだけれど、夫婦の部屋でもあるから、独身の私が使うにはちょっとサイズ感が合わない……というのは言い訳で。
あの部屋には父の想い出が多く過ぎて……まだ父が生きているような気持ちにもなるし、逆に父が息を引き取ったときのことを思い出したり……もう、なんていうか……っと、しんみりしちゃった。
私はずっと使っている自分の部屋。アルバートの部屋はその隣。私が使っている部屋もそうだけれど、先祖代々当主の部屋の隣に子供部屋が並ぶ配置になっているからね。私が使っている子供部屋(もう大人だけれど、当主である父の子供ということで)の隣が、子供になる予定のアルバートの部屋で、なんら不思議はない。まだ正式に養子になると決まったわけではないとはいえ、客間に半年間というのも変でしょ?
「アルバート、もう寝たかしら?」
もしかしたら、移動や緊張で疲れてすでに寝てしまっているかもと、ドアの外から声をかける。
実際私も、昨日からちょっと興奮気味で、昨日の夜はあまりよく眠れなかったし、今日もすごく緊張していたし。だって、ハンナがそばにいないんだもの。そりゃ、それだけで緊張も増えるよ。子供なんてはじめて持つんだしっ。
まぁ、いろいろハンナのアドバイスのおかげで、今のところとってもうまくやれていると思うわ。ふふふ。
私、親になる才能があるのかも!なんちゃってね。
……うまくやれてる……の?ハンナ先生……




