話
「あはは、それは良かったです。うちの子たちは、差し入れられた肉を見て「肉だー!」「肉ぅー」と、ジャンプして踊り出していましたよ。口に出すのを我慢していたなんて、お行儀がいいですね」
ハンナも楽しそうに笑う。
うちの子、お行儀がいい。褒められたわ!嬉しい。子供のことを人に褒められるのって、とても嬉しいことなのね?
「それから、好物は……人参だって……」
あれ?ってことは、あの「に、に、に」って人参だぁ!だったのかもしれない。……まぁ、どちらでもいいか。肉も人参もおいしそうに食べていたし。なんか、すごく恍惚とした表情をしていたから。大満足だったんだよね?
「まぁ、人参が好物なんて!」
ハンナが口元を抑えた。
「まさか、もっと食べる?とか自分のお皿の人参をアルバート様に食べさせようなんて考えてないですよね?お嬢様……」
うぐぐ、なんか、見抜かれてるっ。すでにやりましたとは言えない……。
「わ、私だって、人の親になるんですから、セバスに3日に1度人参を出すように言ったわ。も、もちろん私もちゃんと食べます」
ハンナがふふっと楽しそうに笑う。
「流石ですよ、お嬢様」
ハンナに褒められた。うん、子供が褒められるのも嬉しいけれど自分が褒められるのも嬉しい。なんか、嬉しいことが倍になった?すごい!
親ってすごい!
「それで、ハンナに教えてほしいのは、夕食の後は何をして過ごすの?」
ハンナがんーと考える。
「そうですねぇ、寝るための準備はすべて使用人がするでしょうし……」
寝るための準備?そうか。使用人がいないと自分でしたり親が手伝ったりするのか。
着替えとか風呂とか……。
アルバートの着替えを手伝っている姿を思わず想像しかけて、慌てて頭をふる。
ないない。流石に、1人で着替えはできるでしょう。
「やはり、寝かしつけ……も、まぁ、必要ないでしょうね。……んー、そうですねぇ……ああ、まだお話はしてあげてますね。寝る前に。昔は絵本を読んであげてたのですが、今は絵本なしでお話だけ、寝る前にしてますね」
「ありがとう!お話ね!そうね!そういえば、私も小さいころしてもらっていた記憶があるわ!」
ハンナにお礼を言って屋敷に戻る。
話といっても、絵本はとうに卒業してるだろうし。
18歳……のころは、私、何の話をお父様としていたかしら?
本日2話目。短めでごめんなさい。




