肉を食べよう
……肉は本当にご褒美だったのかもしれない。それなのに、大したことがないみたいなことを言ってしまって……これって、これってうちは生家と違って裕福なのよぉーどーんと、見せつけているみたいじゃない?
嫌な感じになってますわ!
取られた手をぎゅっと握りしめる。
アルバートが驚いた顔をしてるけど、知らない知らない。普通女性から殿方の手を握るなんて行為はしないんだけれど、親子になるんだし母親は子供の手をにぎるなんて問題ないはず。と、言うことにしておこう。フライング親子。
「さぁ、焼けすぎてしまいますわ!一番美味しいところで食べましょう!」
ぐいぐいと握りしめた手を引いて、テーブルの前に移動。
「お、美味しいところで……た、食べ……食べるなんて……」
アルバートが動揺している。肉を目の前にして、唾を飲み込む音まで聞こえてくる。ふふ、相当肉が食べたいみたいだわ。
もしかして、どれくらい移動に時間がかかったのか分からないけれど、お腹がべこぺこなのかも。
「お肉が好きでよかったわ」
アルバートを席に座らせ、私も座る。
小ぢんまりとした4人掛けのテーブルに向かい合わせで座る。
昔はアルバートが座っていた席に私。そして、今、私が座っている当主の席に父が座って食事をしていた。
ああ、もう、父は亡くなったんだ……と、同じ部屋なのに、見える景色の違いにちょっとしんみりする。
と、またちょっと考え事をしてしまうところだった。当主が先に口をつける習わしよね。私が食べなくちゃアルバートも食べられないわ。
フォークとナイフを手にとり、肉を一口サイズに切る。。
口に運んぶ。
「まぁ、とても柔らかいわ」
アルバートが熱に浮かされたような顔でつぶやく。
「本当に柔らかそうだ……」
「ふふ、見てるだけじゃなく、召し上がって?」
アルバートが、慌てて首をぶるぶるとふる。
もしかして、食べるのがもったいないなんて思ってないでしょうね?なんで唾を飲み込むほど肉が好きなのに食べないのかしら?もしかして、あまり肉を食べたことがないからマナーに自信がないとか?と心配になりながら見ていると、優雅な手つきで肉を食べ始めた。
あら、綺麗な所作。食べてる姿まで絵になるってすごいなぁ。
それにしても、本当に綺麗な顔をしているわね。お父様も若い頃はこんな感じだったのかしら?さぞ、モテたでしょうね……。
ああ、アルバートもモテますね。そりゃうちの子世界一ですから。そうでなくちゃ。
もう、お分かりですね、アルバート、肉じゃない何かを見て会話してるって……(´・ω・`)
さてと。このあたりのアルバートサイドは飛ばすか……な?
ご覧いただきありがとうございます。
こんな、ふざけまくったお話なのに……
もうすぐ別の人出て来るよ。




