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アクセルブースト&ファントム


 探索ギルド:バスティーヤより幹夫達へ課せられた奴隷兵士として訓練が終了した。

脱走や、賞罰で、その数は25名に減っていた。

最初の頃は戦い方は基より、剣さえまともに扱えなかった彼等。

しかし、絶対服従の証である”呪印”の拘束力、何よりもまずはこの世界で”生き残る”ことを優先させた残りの25名は、今や立派な一兵士となったといっても過言ではなかった。


そして訓練最終日。

もうだいぶ見慣れた訓練場の広場へ集められた幹夫たち25名の奴隷兵士達。

彼らへ向けて久々に姿を現した、首領のカロン=セギュールは、


「皆さん、訓練大変お疲れ様でした。貴方たちは明日より、バスティーヤの哨兵として迷宮探索を行ってもらいます。それに際し、貴方がたにはパーティーというグル―プ単位で探索活動を行ってもらいますよ」


 カロンの発言に周囲がざわつく。すると野武士のような風貌のブライ副官がいつものように獣の咆哮のような静粛の声を上げ、場を落ち着ける。


「理由は簡単。貴方がたには一日でも長く生き残って貰い、できるだけ多く稼ぎを上げて欲しいからです。せっかく貴重なアイテムを手に入れても、持ち帰らなければ意味はありませんからね。特に大型モンスターに一人で対処するなど不可能です。故に我々バスティーヤの奴隷兵士は皆、パーティー単位で活動して貰うことになっています」


 この探索ギルドは、死者の魂を無理やり呼び起す割には、まともな思考をした組織だと幹夫は思った。しかし同時に、それだけ序列迷宮の探索が一筋縄では行かないことなのだとも感じる。


「そこでパーティー編成に際し、我々の方で五名のパーティーリーダーを選出させていただきました。今後、我々の意図と選出されたリーダーの意見の下、パーティーを編成し、迷宮探索を行ってもらいます」


 幹夫は、これこそが千載一遇のチャンスだと思った。


 智と望を守ると決意はしたものの、実際それらしいことができていないのが現状だった。そもそも兵舎が違うため、二人を身を挺して守るなどは不可能。夜中に人目を忍んで、魔法使いの兵舎へ向かい、二人の愚痴を聞いたり、慰めるのが関の山だった。


――だけど、俺がリーダーに選出されれば、智と望の傍に居られる。


 加えて景昭と風太をパーティーとやらに誘えばいつもの、気の置けない面子が揃う。流石の加藤も男三人に阻まれれば、手出しがし難くなるはず。


 横目でちらりと智と望を盗み見る。

幼馴染の双子姉妹は相変わらず二人はボロボロだった。しかし以前ほど、絶望している様子も無かった。

たかが毒気を幹夫が引き受けただけだったが、それでも多少は効果があったようだった。


――さてさて問題は、俺がリーダーに選出されるかだよな……


 幹夫は気持ち半分、期待を込めてカロンの言葉に耳を傾ける。

しかし結果は、幹夫の予感した通りだった。


 カロンにとても良くご奉公しをしていたという男子四人。

加えて、何故か唯一の女子リーダーとして”加藤”が選出されていた。


 加藤――智とは違う意味でのきつい女子生徒だった。

かつての世界でも周りを先導していじめを繰り返していたと聞くし、外での悪い噂も絶えなかった。

そんな加藤はカロンの脇に立つブライ副官へ、本人にしか分からないように手を振る。

すると、ブライ副官は僅かに頷いて見せた。


――やっぱあるんだな、枕営業って。


 幹夫は一瞬バスティーヤがまもともな組織なんじゃないかと思った自分にほとほと呆れるのだった。

 しかし呆れはするが、諦めたわけでは無かった。

第一、”加藤”がリーダーに選出された。これは最悪の事態だった。

 きっと加藤のことだからリーダーの特権を乱用して、いじめのターゲットである智と望を執拗に連れ回すはず。

 奴隷兵士として呼び出された彼らに、法と秩序と倫理観など存在しない。

そんな状況下で、智と望に命の危険が迫る可能性は十分考えられる。


 このまま状況に流されるか否か。

幹夫の答えは当然、決まっていた。


――上手く行くかどうか分かんないけど、やらないよりはマシだよね!


 意を決した彼は、


「すみませーん! 俺もリーダーやりたいでーす! 立候補だめですかぁー!?」


 突然声を上げた幹夫へ当然のことながら視線が一挙に集中する。

一瞬、ブライ副官は驚きの表情を浮かべるも、すぐさま眉間に皺を寄せ、


「お前! カロン様の御採択にケチ付けようってのか!」

「まぁ、良いですよ、ブライ」


 するとカロンは薄く笑みを浮かべて、舐めるような視線を幹夫へ向けた。


「君、名前は?」

「松方幹夫っす! 前衛職です!」

「ミキオ君ね。じゃあ、ミキオ君、君が立候補した理由を聞かせて貰えるかな?」

「そりゃ、勿論、俺自身がリーダーに相応しいと思っているからですよ、カロン様。俺はここの誰よりも稼ぐ自信があります。それにちょっと言いづらいんですけど……若干一名、リーダーに相応しくない奴が選出されてましてね」


 幹夫の言葉を聞き、カロンの頬が僅かに強張る。


「ほう……して、その相応しくない方とは?」

「加藤です!」

「加藤……?」

「あの女子リーダー候補です!」


 そう云われてカロンはようやく気づいた様子を見せた。


「あいつ、訓練施設でとある奴隷兵士の候補を寄ってたかって毎日痛めつけてたみたいですよ。この探索ギルドがパーティーを組ませるのは生還率を上げ、収益を安定させるためですよね? 個人を痛めつけて喜ぶような奴がメンバーの生還率を気にできるかどうか、俺はあやしいと思いますよ?」


 全てを言い終え、幹夫は息をつく。

カロンは蛇のような目を幹夫から外し、


「ブライ。確か加藤は貴方が推挙したのですよね? そうした事実があったということはご存知ですか?」

「あ、いえ、その、まぁ……へぇ……」


 ブライ副官は曖昧な返事を返えし、加藤は鋭い視線を幹夫へ寄せる。

どうやら加藤は、カロンの”お気に入り”ではなかったらしい。


「まぁ、そんな事実、どうでも良いことです。貴方たちの間でのつまらない諍いなど興味はありません。ですが……」


 カロンはまるで幹夫を舐めまわす様につま先から、頭の天辺までをも見渡す。

幹夫は気味の悪い寒気を感じたが、必死に作り笑顔を浮かべて堪えた。


「その意気込み気に入りました。幹夫くんの意見を尊重しましょう」

「じゃあ!」

「言葉だけではダメです。結果を示しなさい」


 カロンは幹夫の後ろに並ぶ奴隷兵士達を見渡し、そして、


「これより幹夫くんと加藤、どちらがパーティーリーダーに相応しいか決闘で決めます! これは探索ギルドバスティーヤの代表であるこの私、カロン=セギュールの名の下に行われます! 一切の異論は認めません!」


――ここまでは予定通り。でも、こっから先どうしよう?


 正直な話、幹夫はここから先のことは一切何も考えてなかった。


――まぁ、でもやるしかないね。智と望のためにも……!



●●●



 意図せずすっかりと馴染んでしまったバスティーヤ城塞の訓練広場。

そこを正規構成員と、同級生や、先に召喚されただろう奴隷兵士の面々がぐるりと円を作って囲んでいた。

 正規構成員の魔導師がギャラリーの正面へ半透明の魔力障壁を発生させる。

訓練広場は、歴史の教科書でみたコロシアムさながらの様相を呈していたのだった。


「おいおい、幹夫あんなこと言って大丈夫なのかよ?」

「あはー」


 風太の心配に幹夫は笑って答えるしかできない。


「心配するな。幹夫なら大丈夫だ……だよな?」

「あ、うん」


 迫力のある景昭に気圧され、つい生返事を返してしまった。


「幹夫くんっ……! ひっく……」

「はいはい、望はすぐに泣かないの。大丈夫だから」


 望の不安と心配が入り混じった態度には、そう答えるしかなかった。


「ミッキー……」


 一番心臓が飛び跳ねたのが、智の声だった。

妙に真剣で、その声一つだけで、とても心配している様子が感じられる。

だからこそ幹夫は、盛大な笑顔を彼女へ送った。


「そんな顔しないでよ智。まるで死にに行くみたいで不吉じゃん」

「何無茶なことしようとしてんのよ。私達なら大丈……」

「はい、強がりはダメ―」


 智のツンと尖った唇を人差し指で塞ぐ。

彼女の頬が珍しく真っ赤に染まった。


「バ、バカ! いきなり何してんのよ!?」

「智、最近俺のことバカバカ言い過ぎ。そんなに俺バカって自覚ないけど?」

「バカにバカって言って何が悪いのよ! 加藤はああ見えて、後衛職の魔法使いの中じゃトップクラスの実力なのよ!? もしもミッキーになにかあったら……」

「俺なら大丈夫。信じて」


 幹夫は智の黒髪へそっと手を添えた。

すると智は口を噤み、それ以上何も言って来なくなった。

 幹夫はもう一度、智の頭をポンと撫でて、彼女を過った。


「そいじゃ行ってくる」

「幹夫!」


 踵を返すと、そこには彼の良く知った、強気で芯の強い森川 智の姿があった。


「加藤なんかに負けんじゃないわよ! 無様に負けたりなんかしたらひっぱたくし、今後一切口聞いてあげないんだからね!」


 幹夫はそんな智へにっこり笑顔を返して、魔法障壁の向こうへ踏み込むのだった。


「アンタ、松方だっけ? 良くもやってくれたねぇ……」


 対峙した下の名前さえ覚えて居ない女子生徒の加藤は、淀んだ視線を幹夫へ向けてきた。彼女から発せられた負の感情に、幹夫は一瞬飲まれそうになる。

しかし気持ちを立て直し、加藤からのプレッシャーを跳ね除けた。


「それはお互い様だよ。俺の目の届かないところで散々智と望に色々としてくれたみたいだね? この御代は高くつくよ?」

「何、あんた切れてんの? キモッ……ホントむかつくわ、あんたみたいなグズ!」


 何か言いたいことはあるのだろうが、加藤の語彙力ではこれが限界だったらしい。

幹夫は苦笑いを浮かべざるを得なかった。


壁召喚サモンウォール!」


 そんな中魔導師が新たな呪文を叫ぶ。

幹夫と加藤が対峙する楕円形のフィールドへ幾つかの岩壁が、不規則に召喚された。


「幹夫くん、これは私から君に与えるハンデです。この壁を上手く活用して戦ってみてくださいね? 勿論、加藤も使って構いません。宜しいですね?」


 首領のカロンの配慮に加藤さえも、何も言い返せなかった。

それよりも幹夫へ注がれる、カロンの甘く、妖艶な視線が気になって仕方がない。


――これからは後ろに気を付けないとな。特にお尻の辺りとか……


 そう思う幹夫なのだった。


「双方、どちらかが死ぬか、戦闘不能になるまで続けなさい。そしてここで勝った方を五人目のリーダーとします」


 カロンへ幹夫と加藤は頷き返した。

荒野に風が吹きすさび、薄い砂塵を巻き上げる。

そこにいる誰もが息を飲み、そして対峙する幹夫と加藤へ注視していた。


「では……始めなさい!」


 カロンの宣言が響き、加藤は手にしたロッドを構えた。


――まずは加藤の力を見極めないと。


 幹夫は目前の加藤へ意識を集中させる。


「フレイム!」


 加藤がロッドから放ったのは、真っ赤に燃え盛る小さな火球だった。

打ちだされた火球は真っ直ぐと幹夫へ向けて降り注ぐ。

しかしその速度は、彼でも見切れるほど遅かった。

 幹夫は僅かに魔力を込めた足で地面を蹴り、横へと飛ぶ。


「――なっ!?」


 すると火球は突然、向きを変えて着地したばかりの幹夫へ降り注いだ。

咄嗟に”障壁シールド”を発生させ、火球の直撃を防ぐ。

だが、既に加藤はロッドから新たな火球を放っていた。

 やはり速度は遅く、見切るのは容易。

幹夫は新たにステップを踏んで回避行動を取るも、先ほどの同じように火球は方向転換をして向かってきた。


――くそっ、あの火球追尾機能があるのか! だったら!


 ”加速アクセル”を発動させ、移動速度を上げた。

”障壁”で防ぐ選択肢もあったが、それでは足止めを喰らうばかり。

距離が空き続けていること、それすなわち近接戦の術しかない幹夫にとっては自殺行為に他らなかった。

 加速のお蔭で追尾機能のある火球はワンテンポ遅れて、それまで幹夫がいた所へ降り注ぎ、炎を巻き上げる。

 そうして火球を回避しながら彼は、確実に加藤との距離を詰めて行く。


「ちょこまかウザいんだよ! 糞男子がぁっ!」


 加藤の手にするロッドが妖艶に輝き、彼女自身からも炎のような魔力が沸き起こる。

 幹夫の肌へ鳥肌が浮かび、第六感が危険を知らせてくる。

 足元へ降り注ぐマグマのような火球。

その速度も、量も、威力も、先ほどまでの比ではなかった。

 乾燥した地面さえ、加藤の放った火球が真っ黒に焦がす。

 加速で避けるにも数が多く、障壁で防ぐにはあまりにも威力が高すぎた。


「松方ぁー、さっきの元気はどうしたんだよ? あはははっ!」


 まるで勝ち誇ったかのように加藤が笑い声を上げていた。

 幹夫はカロンがハンデとして召喚した壁の裏に潜み、火球を凌ぐ。

だが、壁から一歩でも飛び出せば、それこそ一貫の終わり。

だからといっていつまでも壁の裏に居続ける訳には行かなかった。

加えて、加藤の激しい火球の応酬から幹夫を守っている壁が、徐々に熱を持ち始めている。壁が崩壊するのも時間の問題に思われた。


――やっぱ智言う通り無茶だったのかな。


 苦しい戦況はそんな弱気を彼に抱かせた。


――ああもう、どうしよう。もっとちゃんと考えてから行動に移せば……


「幹夫くんっ! が、頑張って! 望は信じてますっ!」


 すると壁の向こうから望の声が聞こえてきた。


「しっかしろ幹夫! 加藤なんてぶっとばせ!」

「幹夫、加藤を駆逐、破壊、撃滅だ!」


 風太と景昭の声援も響いて来る。


「ミッキー! 負けないで! アンタなら勝てる! 絶対によ!」


 元気な智の声を受けて、幹夫は心が沸き立つ感覚を得た。


――そうだ。俺はここで負ける訳にはいかないんだ。だって、俺は智と望をこの世界で守ると決めたんだから!


 弱気は再燃した闘志で燃やし尽くされ、彼は力を取り戻す。

すると不思議なことに、頭が明瞭になり、身体が軽くなる感覚を得た。

そんな幹夫が着目したのが、加藤の放つ火球の追尾機能。


――確か、速度が遅かった時はそれまで俺がいた所に落ちてたっけ。

となると、あの追尾は熱感知辺りなのかな。


 確証はない。しかしじっくりと検証している暇もない。

今できる最善を、全力ですべし。

その考えと、自分の手札を見比べ、検証し、一つの結論に至った。


――なら試してみるか!


 その時、幹夫が隠れ潜んでいた壁がついに、火球によって砕かれた。

瞬間、彼は”加速アクセル”を”増幅ブースト”で強化した。

 降り注ぐ火球がスローモーションのように遅く見え、彼は次の壁へ向けて全力で駆けて行く。そして壁の裏へ身を潜め、加速を解除すると、今度は”隠密ステルス”を発動させた。


 時間が元に戻った火球は新たな壁に潜んだ幹夫を追尾することなく、地面を焦がすのみ。


隠匿ステルス”のスキル。

止まっている間のみ気配はおろか熱さえも完全に遮断する術。

代わりにその場から一歩でも動けば、遮断していた全ての要素が露呈してしまう。

これで火球の追尾が熱感知だということは分かった。


――これなら勝てる!


「ああもう、どこだ! どこに消えた、松方あぁぁぁ!!」


 相変わらず加藤は無茶苦茶に火球を放っている。

そんな獣のような加藤の位置をきちんと確認した幹夫は、自分自身へ”増幅ブースト”のスキルを施した。しかも一回ではなく、何度も。他のスキル発動へ支障を来さない、ギリギリまで。

そしてタイミングを見計らい、幹夫は加速アクセルを発動させ、壁の裏から飛び出した。

次々と壁から壁へ移り、更には加藤へ向けて、荒野をジグザグに進んでゆく。


「やぁ、加藤!」


 既に幹夫は加藤の懐へ潜りこんでいた。

彼の背後には無数の幹夫の姿があった。大量の火球は全て、その後ろの”幹夫達”へ降り注ごうとしている。



秘匿ステルスの性能――止まっている時は気配や熱を遮断するが、動いた途端にそれは感知される。

加速アクセルの性能―― 一時的に脚力を強化し、矢よりも早い。

そして増幅ブースト ―― 大量の魔力を犠牲にして、あらゆる力を増幅させる。


 故に、予め増幅で力を増し、秘匿の解除の際に発生される、自分自身の”熱”を敢えて増幅させた。

当然、熱を感知する火球はそこへ飛来する。

そしてタイミングを見計らって、加速。


 増幅ブーストされた秘匿ステルス加速アクセルの連続は常人の視覚では追いきれず、まるでいるかのように見せていた。

熱をもった幻影ファントム。僅かに実態を持った残像。

複数の幹夫達。


これぞ幹夫が窮地の中で考え出した秘策――【アクセルブースト&ファントム】


「なっ――!?」

「女の子をぶん殴るのは気が引けるけどさ――加藤! これは智と望にしてくれたことへのお礼だぁっ!」

「かはっ!」


 幹夫の渾身の拳が、加藤を穿ち、くの字に折り曲げて吹き飛ばす。

彼女はそのまま障壁にぶつかり、泡を吹いて倒れた。

死んではいなさそうだが、起き上がる気配はない。


「素晴らしい! 素晴らしいですよ、幹夫くん!」


 カロンは興奮気味に拍手を送る。

しかし幹夫は気にせず、障壁を叩き割って、目の前で唖然としていた智と望の前へ立った。


「ってことで、智、望、俺と契約してパーティーになってくれないかな?」

「はい! 幹夫くんのパーティーなら、喜んでっ!」


 望は二つ返事で了承。

しかし智はそっぽをむいたまま、顔を真っ赤に染めていた。


「あ、あれ? 智?」

「ミッキーがリーダーってのはちょっと癪だけど……ま、まぁ、良いわ。組んであげる。感謝しなさい!」

「あはー、ツンデレ―」

「うるさいバカ! って、ミッキー!?」


 魔力が底を尽き、ぐらりと幹夫の身体が倒れ込む。

そんな彼を智は優しく抱きとめた。

 

「ごめん、ちょっと寄りかからせて。さすがに疲れたわ」

「まったく、仕方ないんだから……ねぇ、ミッキー」

「何?」

「ありがと。見直したわ」

「いえいえ」

「姉さんばかりずるいですっ! 望も幹夫くんを支えますっ!」


 ぱたぱたと足音を立てて、望も支えてくる始末だった


――これからも守るしかないよなぁ。

望と、可愛げは無いけど案外泣き虫な智もね。


 幹夫はそう想い、眠りに落ちる。


 もはや幹夫たちが元の世界に帰ることは叶わない。

だったら、この世界で生きて行くしかない。

それでも幹夫は決して投げやりにはならなかった。

 彼には守りたい人がいる。


 その大切な人をこれからも守り、この世界で必死に生きて行こう。

そう思う幹夫なのだった。


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