僕のこと嫌いなくせに
「可哀想に、もう生きていたくないよねえ。ほんの子供の頃から聖女を守るためだけに血を吐くような厳しい特訓を受けてさあ、戦いになれば自分の防御すらさせてもらえない捨て石みたいな扱いで、あげく役立たずみたいに思われてさあ。笑えるよねえ」
「やめて……」
「ねえ、聖女を連れ帰らなかったら君、どうなっちゃのー? こんなざまで国に帰れないよねえ。君の中の悲しい思い出はどれも素晴らしく甘美だったけれど、なかでもこの女に関わるものは、どれもこれも歪で、とても美味しい記憶ばかりだ」
「やめてくれ……もう、早く、楽にして……」
涙腺が壊れたみたいに、ただただ泣き続けるクルクル金髪巻き毛の姿に、もう黙ってはいられなかった。
「ほんっとに性格悪いわね、不死王! それ以上その鬱陶しい戯言を続けるようなら、私がアンタをひと思いに浄化してやるから!」
本気で言っているのに、不死王は「おお怖い」とおどけて見せる。本当に嫌な奴だ。
「僕ばっかり悪者みたいにいうけれど、あの子が泣いてるのは半分くらいは君のせいなのに。酷いなぁ」
「私のせい? ふざけんじゃないわよ、人のせいにしないで欲しいわね! あんたもピイピイ泣いてんじゃないわよ! いつもの人を小馬鹿にした高飛車な態度はどこにやったの」
言いざま振り返ったら、クルクル金髪巻き毛の涙に濡れた青い瞳と目が合った。
「どうして……」
青ざめた唇がふるふると震えて、大きな青い瞳から、また新しい涙が落ちる。本当に顔だけは一級品だわ。
「どうして今さら、助けようとするのさ……」
それだけ呟くと、辛そうに目を逸らす。肩が大きく震え、クルクル金髪まき毛の喉から、こらえきれない嗚咽が漏れた。
「どうしてって……」
「僕のこと嫌いなくせに」
うっと言葉に詰まる。そりゃあ、嫌いだけど。
「不死王に憑依された僕を見捨てて、アルバと逃げたくせに」
息を呑んだ。止められたから、だなんて言い訳だ。結果的に私は、確かにクルクル金髪巻き毛を見捨てて逃げたんだ。そう思うと、反論なんかできなかった。
「今だって、この世界を見捨てて日本へ帰ろうとしてるくせに。そのために、魔王まで復活させたくせに」
言葉に窮した私を矢継ぎ早に責めたてたクルクル金髪まき毛は、嫌な目でアルバを一瞥すると、こう言った。
「ねえキッカ、不死王に憑依されたのがアルバだったら、キッカは同じように見捨てた?」
ドキリと、心臓が跳ねる。
アルバだったら……私はあの時、どうしただろうか。
ちなみに、新作『魔法学校の首席騎士様は……』はじめました。
よろしければそちらも読んでみてくださいませ。
ストレートに宣伝でした*\(^o^)/*




