久しぶりの港町
「貴様……殺すつもりか」
「ごめんごめん、ていうか思わず転移しちゃったけど、物凄い険悪な雰囲気のまま置いてきちゃって、大丈夫だったのかなあ」
「あんなもん、グレンが動きを止めておる間にあのムカつく賢者が封印を解いて一発だ。だがあやつらも退屈しておったのだろうから、少々遊びたいだけだろう」
「ちょっと、それ大丈夫なの」
「お主らがあの場におる方が無駄に深刻な雰囲気になって互いに引けぬであろうが。人間とは面倒なものだ」
そういわれるとぐうの音もでない。アルバも気まずそうな顔してるとこ見ると、私と同じ気持ちなんだろう。
「それよりも貴様、かなりテキトウに謝ったが、本当に痛かったぞ」
「だからごめんって」
「まあまあ、それよりも一体どこに跳んだんだ?」
「潮の匂いがする。海の近くであろう」
不機嫌そうに毛づくろいするハクエンちゃんを抱き上げながら、アルバがキョロキョロと辺りを見回す。
「ルディに跳んだの。賢者サマが最後の封印の場所に行くようにって言ってたから」
「そうか、三魔将の居城か」
「あー、アレヒアルの祠がある……昔は人など住めぬ、岩肌だらけの土地であったがな」
ん? 今、ハクエンちゃん、祠って言った?
「もしかしてハクエンちゃん、今度も龍王の居場所、わかるの?」
「いや、無理だな。地形が変わりすぎてどこが祠か見当もつかぬ」
そう言いながらもハクエンちゃんは、なぜかちょっと懐かしそうに目を細めた。
「人がどれだけ居城の近くに来ようとも、縄張りの景色を変えようとも気にも留めぬとは、なんともあやつらしい」
意外だ。三魔将、三人が三人とも、想定外な感じなんだけど。
「へー、大雑把なヤツなのか?」
「うむ、あやつは我らや魔王よりも長い長い時を生きておるジジイだからな、何事においても鷹揚だ。魔王なんぞ孫くらいにしか思っておらん。その分、猫っ可愛がりに甘やかしていたぞ」
「ますます龍王のイメージが掴めないんだが」
だよねえ。魔王をデロデロに甘やかす龍王とか、想像の域をこえてる。
「まあ、会えばわかる。祠の入り口さえ分かれば、内部は案内できる。さっさと行くぞ」
「祠の入り口か。伝承か何か残っているといいがな」
うーん、確かにそうなんだけど、私が調べられた内容では祠の入り口なんてものはなかったんだよね。
ハクエンちゃんの洞窟の入り口は浄化ポイントのかなり近くだった。
不死王の居城は浄化ポイントから割と歩いたところにひっそりと建っていた。
龍王の祠は、いったいどこにあるんだろう。少なくとも、浄化ポイントの近くに祠なんて見当たらなかったと思うけど。




