ちょっと賢者ーーーー!
「調子に乗るなよ、アルバ。魔王が貴様ごときにどうこうできるわけがなかろう。グレオス、お前はアルバを! リーンはあの男をなんとかしろ、封印を解かせるなよ!」
「ああ、煩い」
第二王子の叫びに呼応するようにクルクル金髪巻き毛……いや、不死王の声が小さく聞こえた瞬間。第二王子の体が吹っ飛んだ。
「ルッカス様!」
「人間ってさあ、自分たちに都合が悪いかもって可能性を、容赦なく排除するよねえ。まだ起こってもいない事をあれこれ心配してさあ。ばっかみたい」
壁に凄い勢いでぶつかって、力なく石の床に転がったルッカス様に、リーンは必死で回復魔法をかけている。呻き声が聞こえるから、リーンの回復魔法でなんとかなるレベルだろう。
「アルバ! この者たちは危険だ、分からないのか!」
グレオスさんが鬼の形相でアルバに叫ぶけれど、アルバは堅く唇を引き結んだまま答えようとしない。意を決したようにグレオスさんがアルバに斬りかかろうとした時、賢者サマがゆっくりとこちらを振り返った。
「やれやれ、ここは僕に任せてもらった方が無難だね。君達がいると話が進まない」
突然の爆発音。
もうもうと立ち上がる煙の先には、大きく穴が空いた壁。その外には、どんよりと曇った空が広がっている。
「乱暴で悪いね、先に最後の封印の場所に行っててくれる?」
相変わらずの呑気さで、賢者サマが笑う。
突風が、私の体をいきなり持ち上げて、気が付いたらさっきの壁の穴から外に放り出されていた。
「うわああああ!?」
「貴様! 乱暴すぎるだろうぅぅぅ!!!」
アルバとハクエンちゃんも、一緒に空に放り出されている。ちょっとコレ死んじゃうパターンじゃないの!?
「もうそこ、城の外だから転移効くよー、頑張って!」
ちょっと賢者ーーーー!
だとしても酷いよ、これは!
「アルバ! 私とハクエンちゃん、捕まえて!」
アルバに向かって必死に手を伸ばす。体のどっかが接触してた方が、絶対にうまくいく。こんな場所で一緒に連れて行き損ねたら命にかかわるもの。
アルバの手が私の腕を掴んで、同時にハクエンちゃんの尻尾を握り込んだ瞬間、私は必死で転移を唱えた。
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「うわっ」
「いたっ」
「ギャフッ」
ドサドサドサッと重たい音をたてて、私達三人は港町ルディの町はずれに着地していた。
「お……も、い……死ぬ……」
もとい、うまく着地できなくて、重なり合って落ちていた。ごめん、ハクエンちゃん。下敷きにしちゃって。




