貴様……!
アルバ? どうして……!
「今は我慢しろ、封印を解くのが先だ。そのあとに浄化しても十分間に合う」
「まあその方が得策だろうな。グレンの性格からして、気に入りのオモチャは異様に大事にするからな。あの金髪にも傷ひとつつけるまい」
後ろから体を伝って聞こえるアルバの声に、今度はハクエンちゃんの声が加わった。
確かに二人の言うことはもっともかも知れないよ。
でも、でも……! あんなに恐怖に満ちた顔してるのに。
「ははははは! やっと体に入れた。抵抗するからちょっと時間かかっちゃったじゃないか。それにしても、なんと心地いい……やっぱり君は極上の器だ」
頭上から、上機嫌のクルクル金髪巻き毛の声が降ってくる。でもその内容は、もはや不死王のものとしか思えないもので。
高く持ち上げられていた彼の体はゆっくりと降りてくるけれど、表情は既に不自然で、見たこともないような笑みだった。
怖い。
ねえ、これ本当に大丈夫なの? 完全に乗っ取られたりしないの?
アルバに引っ張られるように階段をのぼりながら、私はクルクル金髪巻き毛と不死王が気になって仕方がなかった。
「ああ、最高の気分だ! ねえ賢者殿、さっさとあの方の封印を解いてよ。早く、早くこの素晴らしい体を見せてあげなくちゃ」
「あーはいはい、魔王ね。君の部屋の魔法陣を解放しないとねえ」
「早く! 早く! あの方と無理やり引き離されて、誰も来ないこの城に繋ぎ留められてさぁ、僕がどれだけ寂しかったか。……あの方ともう一度会えることだけを信じて、千年も待ったんだ。もう一秒たりとも待ちたくないよ」
不死王の言葉とともに、私の目の前で厳めしく重そうな扉が、驚くほどの勢いで開く。不死王の「待ちきれない」という気持ちに、まるで呼応するみたいに。
「分かった分かった、そこが君の部屋だね。さあ、封印を解こう」
賢者サマが苦笑する。その顔を見て、私もキリリと唇を引き結んだ。そうね、一刻も早く封印を解いて、そしてクルクル金髪巻き毛を解放すればいいんだもの。
今はそれに集中しよう。
私はアルバと頷きあって、共に不死王の部屋だという荘厳な部屋に足を踏み入れた。足元でハクエンちゃんのしっぽが揺れるのが頼もしい。
「僕らも行こう」
部屋に入る賢者サマの後ろから、満面の笑顔のクルクル金髪巻き毛……いや、不死王が、跳ねるようについてくる。
「待て!」
その、不死王の腕を第二王子がしっかりとつなぎとめた。
「貴様……何者だ! ロンドをどうした……!」
「バカなの? 今の話の流れで分かるでしょう、不死王グレン、って……聞いたことない? 美しき魔王の、忠実なる駒だよ」
凄絶な笑みを浮かべて、不死王は優雅に膝を折り、流れるような仕草で礼をした。
「君の駒はもらい受けた。ほら、もうこんなに彼の体に馴染んだよ、僕が存分に使ってあげる」




