魔王をね、ちょっと復活させようかと思って
「封印を解く……?どういう意味だ」
第二王子が声を荒げる。
今日はさっきから随分と短気だ。いつもはもっと何考えてるか分からない笑顔の時が多いのに。
一瞬不思議に思ったのが悪かったのか。
「ああ、魔王をね、ちょっと復活させようかと思って」
「け、賢者サマ!!!!!」
なにさらっと言っちゃってんの!?
コイツらにそんな事言ったら、全力で止められるに決まってるじゃない!
「馬鹿な事を……もう良い、グレオス、キッカを捕縛せよ」
忌々しそうに第二王子が宣ったのとどちらが早かったのか。この暗く薄気味悪い城に、高らかな笑い声が響いた。
「ああ、今日は人生最高の日だ! こうしちゃいられない、君、さっさとその器から出て行ってくれないかい?」
「う……うあああっ!?」
不死王のアメジストの瞳が怪しく光り、同時にクルクル金髪巻き毛の体が宙に浮かんでいく。
足をバタバタと動かし、苦し気に呻いて、両の手はもがくように首のあたりを掻きむしっているのは……もしかして、不死王がやっているの?
顔がどんどん青くなっていくんだけど、ちょっとコレ大丈夫なの……?
「ちょ、ちょっと……」
「グレオス! 聖女はあとだ、その小僧をなんとかしろ!」
さすがにあまりに苦し気なクルクル金髪巻き毛のようすに不安になったけれど、第二王子も危機を感じたのか、急にグレオスさんに指令を下す。
グレオスさんは一瞬だけ私を悲しそうな目で見て、さっと踵を返した。
手慣れた様子で瞬時に不死王を羽交い絞めにしたけれど、その途端に不死王の体がダランと力を失って、グレオスさんもつられて体のバランスを崩しかけている。
「でかした、グレオス」
「じ、自分はまだなにも……」
まるで命を失ったかのように急に体の力を失い、虚ろな瞳になった少年の姿に、グレオスさんは焦った様子だ。……強面だけど、本当は優しい人だからなぁ。
「危ない、危ない。もうその体はいらないよ、だってこの子の方がずっといいもの」
「や……やめ、やめろ……!やめてくれ……!」
「そうそう、君は中身も含めて素晴らしいんだったね。一緒にあの方の元へ行こう?」
な……なに、なんなの? クルクル金髪巻き毛に、濃い紫色の靄がまとわりついている。
さっきの美貌の少年とは似ても似つかない、まるで骸骨のような靄。
それが、くるくる金髪巻き毛の口をむりやりこじ開けて、煙となって体の中に入っていく。
「ロンド! リーン、魔法で何とかできないのか!」
第二王子の叫びにハッとした。あまりのおぞましさに体が硬直していたけれど、きっと私の浄化が一番効果が高いはず。
いくら嫌な奴でも、さすがにこれは放ってはおけないもの。浄化の呪文を唱えようと、私は必死で精神を集中し、口を開いた。
「やめとけ」
その口が、いきなり後ろから押さえつけられた。




