全部まとめて浄化してやる!
さっきから、アルバに群がるゴーストのいくつかが、まるでアルバの体に溶け込むような妙な動きをしていた。
あれってもしかして、アルバに精神攻撃をしかけていたんじゃないの?
だってそうやってゴーストを体に受け入れる度に、アルバは苦悶の表情を浮かべている。泣きそうな顔の時もあれば、怒ったような顔の時も、絶望したようにうなだれることも、何かを叫ぼうとして慌てて自分で口を抑えることさえあった。
感情が抜け落ちたように呆然とたたずんだ後、ハッと我に返ってまた剣を振るうアルバに、申し訳なくて泣きたくなる。
私が怖がって役にたたないから、アルバがひとりで頑張る羽目になってるんだ。
そう思ったらもう怖がってばかりではいられなかった。ゴースト系に一番効果があるのは、私の浄化の炎だろうって考えなくたって分かるもの。
ごめんアルバ。私、甘えてた。
「ゴーストは任せて!」
こちとらこれでも聖女だ。浄化のための魔力なら無尽蔵といっていいほどふんだんにある。こうなったら、厄介なゴースト系全部、出るそばから浄化してやろうじゃないの。
憔悴した顔のアルバの前に躍り出て、私は思いっきり浄化の炎をぶっ放す。
ゴーストの群れから、ぞっとするような金切り声が響き渡った。
うわぁお、一気にゴーストが光になって消え去ったし。怖がってないで、最初っからこうしとけば良かったんだな。
「キッカ……! 大丈夫だ、俺がやる……!」
「あほう、下がっておれ、青瓜のような顔で強がるでない。姿ある亡者など、我の牙でも屠れよう」
ハクエンちゃんが、アルバに襲い掛かろうとしていたグールを一撃でしとめた。さすが獣王、小さな体でもなかなかの攻撃力だ。
それを見て安心したのか、アルバはよろよろと足元をふらつかせながら、石畳の床に座り込んだ。きっと、本当はとっくに限界を超えていたんだろう。
残りのゴーストとグールをハクエンちゃんと協力して倒した時には、アルバは床に伏して肩で息をしていた。
こんなになるまで無理をさせてしまったことに、後悔の念が浮かぶ。
「ごめん、アルバ。すぐに回復と……浄化、するね」
普通だったら回復だけで充分な筈だけれど、あんなに何体もゴーストが体に入ったり出たりしていたんだもの、もしかしたら見えてないだけで一体くらい体に残っていたりしそうだし。
滅多にないアルバの青ざめた姿に、そんな不安すら湧いて来る。
一刻も早く楽にしてやりたくて、私は一心に、浄化の祈りをささげた。




