いやいや、ホント困るから
「ちょっと! え、一緒に行ってくれるんじゃないの? 私、封印の解除なんて」
あと二つ、魔王を封印している魔法陣を解除しないと、魔王って復活しないんじゃないの?
他力本願で申し訳ないけどさ、だいたい、魔王を封印した経験がある賢者サマが一緒だから安心感があったのであって、自分たちだけで魔王を復活させろと言われても不安しかないんですけど。
私のあからさま過ぎる動揺に、賢者サマは「大丈夫だって」と軽く請け負う。
「今回とことん魔力つかっちゃったからねえ。魔力回復のために家で寝てくるからさあ、次の封印解く時になったら連絡してよ。はいコレ」
通信用だというペンダントをひょいと渡して「じゃーね」と去ろうとする賢者サマ。
いやいや、ホント困るから。
「えっ、ちょっと、ハクエンちゃんどうするのよ」
「あー、ハクエンね。どうする? キッカ達に呼ばれるまで、僕ん家で一緒にまったりする?」
「気色悪いことを言うな!」
賢者サマの言葉に、ハクエンちゃんは盛大に身震いしている。体中の毛が逆立って、フグみたいにまんまるになっちゃった。これはこれで可愛い。
お店を出たから自由に話せるようになったらしいハクエンちゃんは、ここぞとばかりに言葉を繋ぐ。
「貴様と二人で時を過ごすなど怖気が走るわ!」
「あら残念、猫じゃらし的なもので構い倒してあげようと思ったのに」
「最悪だ……貴様にだけはやられ構い倒されたくない……!」
仲がいいのか悪いのか、息の合ったやりとりを見せたあと、賢者サマは来た時とおなじくらい軽いノリで「じゃーまたね」と一言告げて一瞬で去っていった。
「行っちまったな」
「なんかよく分からない人だったね」
「アイツは千年前からあんな感じだ」
なんだかポカンとしてしまったけれど、いつまでも屋台通りにいるわけにもいかない。あたしとアルバはハクエンちゃんを連れて先だって泊まった宿屋へと足をむけた。
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「潜入成功ー」
ハクエンちゃんを抱っこして、ベッドにごろんと横たわる。
さっきご飯を食べたところでの女将さんの反応で、さすがに魔獣を連れていると何かと面倒なことになるのは学習済みだ。
受付をすませたて部屋に通してもらったあと、私が転移でハクエンちゃんを部屋まで連れてくるという姑息な手段で本日は無事になんの問題もなく宿屋に泊まることが出来ている。
「明日すぐに次のポイントに向かうのか?」
アルバの問いに私は「うー……ん」と声を漏らした。




