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【書籍化】帰れない聖女は、絶対にあきらめない!  作者: 真弓りの


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帰還

すっかり拗ねてしまったハクエンちゃんを宥め宥めの帰路は、率直に言って辛かった。


当たり前なんだけどさ、行くときと同じだけの距離、日数かけて歩くんだよ?


一回行った場所には基本転移できる私にとっては、この『帰路すら転移が使えない』という状況が思っていたよりもストレスで。賢者サマが行くの大変、って嫌そうな顔をしていたのが今ならものすごく共感できる。


転移なら一瞬なのに、帰りまでこんなに時間をかけて歩く羽目になるなんて。


手持ちの携行食も尽きかけてきたころ、ようやく出口が見えてきたときには正直ほっとしてしまった。


だって、もともとは街と浄化ポイントを転移で往復しながら獣王の城を探すつもりだったんだもの。携行食だって念のため、くらいの気持ちでそんなに大量には用意してないじゃない?


このダンジョンったら最深部まで曲がりくねった一本道だったけど、魔物も多いし往復にはそれなりの日数を要した。ご飯足りないかもしれないって内心心配だったんだよね。食い扶持だって二人分増えたし。


まあ賢者サマが魔法で水は作ってくれるし、さすがに獣王のダンジョンだけあって美味しいお肉をお持ちの魔獣達も多いんだけどさ。圧倒的に野菜が足りない、お肌に悪いと思うわけよ。


一刻も早くダンジョンから出たい、ダンジョンから出さえすれば転移が使える、と鈍る足を叱咤してようやくダンジョンを抜けた時には思わずガッツポーズしたよね。



「あー、ちゃんと隠れてるね。さすが僕、優秀」



賢者サマの呑気な自画自賛に振り返ったら、あら不思議。


たった今出てきたばかりのダンジョンが、跡形もなく消え去っていた。


これがあの魔法陣の効果なのかと思うと、本当に凄い。あれだけの規模のダンジョンが、千年もの間この荒野に隠されていて、人の侵入を許さなかっただなんて。



ああ、それにしても久しぶりの外の空気。



とはいえ、開放感はあるけど心地よくはないな。太陽の光が強烈に照りつけて来て、ああ、ここってカラッカラの荒野だったっけと改めて肌で感じる。なんせ陽射しのジリジリ感が半端ない。


肌から水分が一気に蒸発するような感覚にげんなりして、思わず足元へ視線を落とすと、もう影は随分と長く伸びていた。


もう夕暮れも近いようなのに、なかなか温度って落ちないのね。



「被ってろ。ここの日差しは落ちきるまで厳しい」



バサリと音がして、頭から布がかけられた。アルバが気を利かせて日よけのために布をかけてくれたみたい。



「ありがとう」



振り向いてお礼を言った私の目に映ったのは、ずいぶん傾いた太陽を厳しい目で睨むアルバの姿だった。


元々がこの近辺の出身だと言うアルバは、さすがに気候の特性にも詳しい。ここは彼の言うことを素直に聞いた方が無難だろう。



「そうだね、転移でさくっと戻ろうか」

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