そんな平和主義者は魔王じゃねえだろ
タイトル変更しております。
まだちょっと迷っているので、変更する場合はお伝えしますね。
確かにそれなら、とりあえず魔王を復活させた途端にこの世界の危機、なんては目にはあわなくて済みそうだけど。
でも。
そんな私の気持ちを、アルバが簡潔に代弁してくれた。
「だが、ギリギリ生きてる状態の魔王が、キッカをもとの世界に戻すほどの力を発揮できるのか?」
「僕や三魔将の魔力を分けてあげれば可能だね」
「ちょっと! そんな事したら結局危ないじゃない」
思わず口からその言葉が飛び出たけれど、本当にそう思う。魔王に魔力なんか補充しちゃったら、結果、危ないことになるんじゃないの?
素直に話にのっていいものか、私は迷った。
だって、苦労してやっと守った世界にまた危機を呼び寄せるなんて、そんなこと出来る筈がない。そりゃ王家やクルクル金髪巻き毛達はクズだと思ってるし心底腹を立ててるし、なんなら地獄に落ちろって思ってるけど……でもこの世界には、港町のヴィオや領主様みたいに優しい人達だっていっぱい生きてる。
あの人達が辛い思いをするのは、嫌だなあ。
「ま、普通に考えて、魔王を復活させるなんて不安しかないでしょ? だから僕、最初にオススメしないって言ったと思うけど?」
う、と言葉に詰まる。確かに言われた。
「まあでもさ。君は日本に帰りたい、そしてそれは魔王にしか出来ない。君としては迷う必要はないんじゃない?」
「そう、だけど……でもそのせいでまたこの世界が恐ろしいことになるのは、やっぱり後味悪いよ」
私の答えに、賢者サマはくすっと笑って黒縁メガネを押し上げた。
「いいねえ。さすが聖女、そこで結局他人の事考えちゃうんだね」
「悪い?」
「まさか。本当に魔王を復活させてもいいって思えてきた」
なぜか賢者サマは嬉しそうに破顔する。
「大丈夫だよ。魔王に世界を滅ぼしたり、誰かを攻撃しようなんて意思は微塵もない」
賢者サマの黒縁メガネの奥の瞳は、確信に満ちた輝きを持っていて、私は言葉を失ってしまう。封印したなんて口にする一方で、賢者サマの言いようはまるで魔王を信頼しているみたいに聞こえて、違和感がぬぐえなかった。
「そんな平和主義者は魔王じゃねえだろ。だいたい、それならなんで封印までされるんだよ」
「魔王の存在自体が土地を汚染し魔を呼ぶからさ。あんなに世界が魔に満ちてしまったら、汚染の元を封印するしかない」
「汚染の、元……?」
私が想像していた魔王とは、あまりにもかけ離れていている。
「まあとにかくさ、状況的にも性格的にも復活させたところで今や魔王は脅威にはならないから安心して。あれから随分、長い長い時が経ってるから魔王を復活させられるなら、僕も会って伝えたいことがある。だから、君たちにもちゃんと協力するよ」




