魔王を、復活、させるの!?
「賢者様! どうか、日本に帰る方法を教えてください!」
バッと頭を下げたのに、賢者サマからは何の返事も無かった。しばらく頭を下げたまま待ってみたけれど、反応がなさ過ぎて不安になる。
チラリと見上げてみたら、なんだか辟易したような顔で見下ろされていた。
「うわー、急に丁寧になった。賢者様とか」
「それだけ切実なの! どれだけ大変なことでもやるわ。お願い、教えて!」
「土下座でもしそうな勢いだねえ。うーん仕方ないか、正直オススメできないんだけどねえ」
必死で頼み込んだら、口をへの字に曲げていた賢者サマがしぶしぶ帰る方法を口にする。
その内容に、私は思わずまぬけな声を上げてしまった。
「……………は?」
だって、そんな声もでるよ。
「魔王を、復活、させるの?」
「そうそう」
いやいや、そうそう、じゃないから。
「え、魔王ってそもそも、生きてるの?」
「うん、封印してるだけだもん。倒せるわけないっしょ」
「賢者サマでも……」
「あー、ムリムリ。倒したと思ってもさ、大気中の魔力が凝縮して魔王の体は瞬時に復活するんだよ」
「なに、それ……」
「だろ? どうなってんだか知らねえけど。しょうがないからさあ、倒した直後にこのハクエンみたいに時の流れを極限まで遅くして、封印してるのさ」
パチリとウインクをした賢者サマは「ねー♪」とハクエンちゃんに話しかけてはモフモフと撫でまくっている。
ハクエンちゃんには超嫌がられてるっぽいのにそんなのどこ吹く風。どうやら思いのほか猫好きらしい。
「僕じゃね、もう無理なんだよ。魔王は倒せない。この世界の、どんなスゴイ魔導士でも無理」
「どういう事?」
「魔力がね、この世界に馴染んじゃったんだ。この世界の魔力は魔王や上位の魔族にとってはエサにしかならない。だから本当の意味で僕に倒せるのはそこらへんのちんけな魔獣だけ」
そう聞いて、私の心は急にドキドキと鼓動が早まっていく。
だって。
こんな凄い魔法が使える賢者サマでも倒せないって分かってる魔王を復活させるだなんて、自殺行為じゃないの。
「何青い顔してんの」
「だって。そんな凄い魔王、復活させたら」
「それが大丈夫なのさ。僕がその昔長い年月かけて浄化した上に、君たち聖女がそれこそ気の遠くなる期間をかけて浄化し続けたこの大陸に今や魔力はほんの僅かだ」
そう言って笑った賢者サマは、マタタビでふにゃふにゃのハクエンちゃんのおでこをツンツンとつつく。
「三魔将もこのありさまだし、魔王だって体は命を繋ぐのが精いっぱいなタイミングで時を止められてるしねえ。しかも回復するための魔力はもうこの地にはごく僅か。さすがの魔王でも、復活してすぐ世界を脅かすような真似はできないっしょ」
そろそろタイトルを色々考えてみようかなーと思ってます。ある日突然変わるかも。




