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【書籍化】帰れない聖女は、絶対にあきらめない!  作者: 真弓りの


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最後の仕事

「よし、これでヤボ用は終わりかな」



ふう、と息をついて、賢者サマがひとりごちる。私達は今、王城の一室で最後の仕事を終えたところだ。



「ありがとうございます……! 僕、なんとお礼を言ったらいいのか」



リーンのおっきな深緑色の目から、大粒の涙が次から次へとあふれ出す。賢者サマがリーンのお師匠様の魔力と生命力の枯渇を癒してくれて、私もこれで心置きなくこの世界とさよならできる。


リーン、良かったね。


最後に嬉しそうな顔を見ることができて嬉しいよ。この綺麗な目からこぼれる涙を見るのもこれで最後かと思うと、お姉さん、ちょっと寂しい。



「ま、キッカと約束したからねぇ。もう間もなく目を覚ますと思うけど、しばらくは動くのも億劫な筈だからいたわってあげてね」


「キッカさん……僕……っ」



もう涙でぐちゃぐちゃになった顔で、リーンは必死で何かを言おうとするけれど、それはもう言葉にならなかった。いいんだよリーン、お師匠様を、大事にしてあげてね。


私は微笑んで、リーンの若草色の髪をそっと撫でた。ふふ、髪の毛もぐちゃぐちゃだ。この髪を三つ編みにするの、好きだったよ。



「じゃあ、僕らはこれで失礼するよ」


「さっきも言ったけど、もう二度と、聖女召喚なんてしないでね。その必要はなくなるんだから」


「……善処する」



苦い顔の第二王子に、内心「だよねー」と相槌を打つ。ぶっちゃけあの王や神官たちが、第二王子のいう事なんて聞いてくれると思えないもの。でも、いいの。



「まぁ、やろうったってできないさ。魔王がこの世界からいなくなれば、魔力の元が薄れていく。土地の穢れもなくなるけど、そのうち魔法もつかえなくなるからねぇ」



そう、物理的にできないから、問題なしってヤツよ。第二王子の力なんてハナから当てにしちゃいない。



「じゃ、さよなら」


「キッカ!」



グレオスさんが。第二王子が。クルクル金髪巻き毛が。口々に名前を呼ぶけれど。


リーンが、瞳まで零れ落ちそうなくらいボロ泣きしているけれど。


本当は、私だって、笑ってさよならって言いたかったけど。


もう、振り返るつもりはない。


私は、私が帰るべき場所へ帰るんだから。……そう、大切な人と共に。



**********************************



「お、戻って来た」


「仕事が遅いぞ、腐れ賢者」



魔王城に戻ると、入り口の扉の前でアルバとハクエンちゃんが出迎えてくれた。


入ってすぐのエントランスで、床に描かれた大きく緻密な魔法陣の中にアイリーンさんが立っている。その傍には、不死王と龍王が、彼女を守るように付き従っている。



「彼らも行くの?」


「まぁ、再会した以上、彼らをアイリーンから引き離すのは難しいからね」


「ハクエンちゃんも?」

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