27話 復讐
遅くなってすみません‼︎
次はできたら2週間以内にしようと思います。
ミユの無詠唱を詠唱破棄に変更します
「とりあえず今日はこの辺にしましょうか」
「分かった。じゃあここで野宿の準備か。焚き火は大丈夫だとして水の確保をしないと。最悪血を飲めば何とかなるだろうけど、できれば勘弁したいし」
あれから辺りが暗くなるまでひたすら移動していた奏たちだが、夜は視界も悪くなり、夜行性のモンスターが動き出すため野宿することに決めた。いくら条件が悪かろうが、奏にとってこの付近の夜行性モンスターなら全く引けを取らないだろうが、久々に地上へ出てきて、リラックスできるようになったのと、ミユとの契約による罰で身体的疲労が溜まっていることから異論はなかった。ミユはミユで封印から600年ぶりに解き放たれ本調子ではないため休息が必要だった。
奏たちは野宿する場所を確保してから行ったのは水の確保だ。と言っても水の流れる音を聞き分けると割とすぐに見つかった。これは奏にとってとてもうれしい出来事だった。本人が言っているように種類によるがダンジョンは基本的に水が無い。自ら用意しておくか魔法で生成するしかない。だが魔力の無駄遣いを避けるために奏は本当に水分がないときだけ魔法で生成した。聖竜の扉付近はモンスターが来なかったが、何が起こるかわからなかったためその時も魔力をとっておいた。おかげで血を飲んで生活する羽目になったりした。血液の中に毒が含まれているモンスターもおり、死にかけたこともあった。
そしてもう一つ嬉しかったことが薬草や香辛料の発見だ。これは川へ行くときにミユが採集してきた。奏は肉しか食べてこなかったため久々の植物を食べることにとても満足している。
途中鍋や皿がないという問題が発生したがミユの木属性魔法で解決した。奏は基本肉の丸焼きで食事をしてきたため何とかなっていた。こうして考えると状況から仕方ないとはいえだいぶ野性的な食事をしていたことに悲しくなる奏だった。
そして夕食をとったらアリアの糸で仕掛けを作り寝る事にする。寝ずの番は2人で交代とし、先に奏がする事となった。奏は空を見上げて最近の事を思い浮かべる。ダンジョンでは同じような日々を過ごしていたが、その日常が一気に壊れた。その事に静かに息を吐く。
「これからはどうなっていくんだろう? ……まぁ成るように成るか。そうだ、ステータスプレートを見ておくか」
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カナデ=コトブキ
種族 人間
性別 男
年齢 15
レベル 147
職業 歌姫
体力 9890
魔力 14020
筋力 9040
物耐 8480
敏捷 12670
魔攻 ?
魔耐 7930
魔法属性
火 水 風 氷
ユニーク属性
音
スキル
言語理解 隠蔽 解析 アイテムボックス 聴覚強化 二刀流 投擲術 脚術 音響定位 音解析 聖殺与堕 狂喜乱舞 複合魔法 詠唱破棄 無音 火纏 水纏 風纏 氷纏 掌術 危機察知 声写し 鬼圧 毒耐性 調教 魔力吸収耐性 舞闘術 魔力操作 魔法造形 治癒力上昇 身体強化 皮膚硬化 爪術 環境適応 偽音 体術 糸術 気配察知 隠密 無感情 思考加速 魔力視
称号
異世界人 被虐者 歌姫 動物と戯れるもの リエラ王国第2王女の友人 裏切られた者 絶望する者 災禍の供物 纏う者 アリアの親 剣舞士 魔導士 竜殺し 竜喰らい 契約者(従) 『始まりの迷宮』破壊者 災禍の歌姫 策士
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聖竜を倒したことなどからだろうけどレベルがだいぶ上がって称号も新しいのが増えていた。でもレベルとステータスの上りがおかしい。聖竜を倒したからと言ってここまで上がるはずがない。それにちゃんと確認しておけば飢餓鼠にやられることももっと軽くで済んだかもしれない。そしてなんとなく寝ているミユのほうへ視線を向けると
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ミユ
種族 ハイエルフ/木人種
性別 女
年齢 24
レベル 29
職業 巫女
体力 470
魔力 800
筋力 320
物耐 260
敏捷 580
魔攻 820
魔耐 730
魔法属性
水 風
ユニーク属性
木
スキル
詠唱破棄 生長 状態異常無効 薬物生成 杖術 毒物生成 魔力吸収 魔力感知 魔力視 思考加速 魔力操作 分割思考 自然の恩恵 弓術 苦痛耐性
称号
巫女 契約者(主)
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「ステータスが見えるようになっている……?」
何故かステータスが見えるようになっていた。考えられる理由としては封印されていた時に解析が無効化される力が働いていたのだろう。実際はよく分からないため朝になった時にでもミユに聞いてみようと考える奏だった。それにしても、と奏はミユを見る目を細める。
奏はミユのステータスにに驚いていた。スキルの生長については聞いていたが状態異常無効だけでなく、薬物生成や毒物生成といった便利なスキルを持っているとは。そして魔力吸収は魔物や魔獣で持っている者はいるが、人で持っているのは一部の魔人ぐらいのはずだからだ。人種が2つあることや年齢についても気になる。
……それにしても、これが普通なんだろうけどステータスは数字だけを見ればとても弱く見える。
聞きたいことや気になることはいろいろあったが起こすわけにもいかないので、とりあえず今はその考えを打ち切る。焚き火に新たに木を投入し、ユラユラ揺れる火を見つめる。
しばらくぼぅっとしていると余裕ができたことからか、ふと疑問が湧き上がる。『歌姫』という職業は実際はどのような職業なのか。スキルや魔法は音に関するものはたくさんあるが、今のところ歌に関しては一つもない。地球では『歌姫』と呼ばれるのは、歌や表現力の評価が著しく高い女性歌手であったはず。ゲームではエンチャント付与であったりだった。歌に関する能力があるスキルや魔法があるはずだ。それらの研究もしないといけない、そこまで考えると見張りの交代の時間になった。
「ミユ、そろそろ時間だよ。起きて。」
奏は最初は口だけで起こそうとしていたが、起きないため、頬をペチペチと叩く。それでもミユはうーんとかうーとか寝言を言うだけなので叩く力をだんだん強くする。強く叩いてから少ししてミユは起きた。
「ふわー、おはようございます。あれ、ここは? ……あぁ、そうでした。思い出しました。ん? でもまだ夜ですよ? 起こすの早いですよ」
ミユは自分がどうして森にいるのかは思い出しても早く起こされた理由は忘れているらしい。
「本当に忘れたの? それともまだ寝ぼけているだけ? まぁいいや。見張りの交代の時間だよ。僕はもう寝るからちゃんと起きてよね」
奏が状況を丁寧に説明して数秒、ようやくミユは理解した。
「あぁ、はい! 大丈夫です。あとは私に任せてゆっくり寝てください」
笑顔で答えるミユに奏はホッとする。理由は簡単で、移動している時、時折難しい顔で考えていることがあったからだ。話を振れば普段通りに戻るがたまにハッとしたような顔をしていた。仮にも仲間になったためそのようなことは気になった。
そして安心したためか眠気が急に襲ってきた。瞼を閉じた時、ミユがこちらをじっと見ていたような気がしていた。
「寝ましたか。仲間にこのようなことをするのは心苦しいのですが、私にも時間が必要なのですみません。寝ている人に言っても意味はありませんか。さて早く行かないと朝になってしまいます。少しの間だけ離れさせてもらいますね」
真剣な顔をしたミユが奏を見下ろしながら言う。そしてゆっくりと離れていくが急に立ち止まる。そして振り返ると
「そうだ。魔物達から守る柵などが必要ですね」
その言葉とほぼ同じタイミング奏達の周囲に幾重もの柵や罠ができた。
「これで安心ですね」
そして今度こそミユは立ち止まることなく離れていく。
ミユが奏のもとを離れてから数時間後、夜明けにはまだ早いが起きだすモンスターが増える時間となってきた。
「んん。くぁー、よく寝た」
奏は起きると軽くストレッチをする。ポキッと小気味よい音がする。ようやく周囲を見渡すとミユは居らず、代わりに周囲に柵があった。すると柵の外から足音が聞こえる。服が昨晩と変わり、濡れた髪を拭いているミユが歩いてくる。
「おや、もう起きたんですか? まだ寝ててよかったんですが」
「うん、何だか目が覚めてね。ねぇ、それよりどこ行ってたの?」
朝食の用意をしながら奏はミユに尋ねる。
「近くの川へ水浴びに行ってたんですよ。この柵はモンスターに襲われないように予防として一応作っておいたんですよ」
「いや、今じゃなくて僕が寝てからだよ」
「ッ!? ……起きていたのですか? でも確かに眠らせたはず」
奏の問いかけに驚き頭を回転させあの時のことを思い出すが起きていたという印象はなかった。
「確かにあの時は寝てたよ。意識もほとんど失っていたし。でも寝ていても話が頭に入ってきたり、特定の言葉を聞いて起きるとかあるでしょう? あの時君の話、というか独り言ががボンヤリとだけど耳に残ってね。起きたら居ないし、知らない柵ができてるしで、もしかしたらと思って、ね。……今さら何か隠し事をしようなんて考えていないよね? ちゃんと説明させてもらうよ」
目を細めながらミユを見る奏に対してしばらく口をつぐんで見返していたミユだが肩を落として息を吐いた。
「そう、ですね。そこまで知っていて聞かれたのに何も答えないというのは仲間に対してあんまりですね。……まずは隠し事をしていたことと勝手に離れたことは謝ります。すみません。私は私が昔居たエルフの里に行っていました。あぁ、身構えないでください。別に仲間を呼んで貴方を害そうなんてことはありませんから」
ミユがかつて自分が居た里へ行ったという言葉を聞いて奏は警戒を強め、いつでも戦闘可能な状態にする。その様子をみてミユは落ち着かせようとする。
「ただ私は復讐がしたかっただけです。貴方も少なからず彼らに思うことがあったとは思いますがこれだけは私が一人でやりたかったんです。ですから睡眠を促す粉を生成して眠ってもらいました。……私からは以上です」
話が終わると静かに目を閉じる。その様子はまるで判決を待つ被疑者のようであった。
「それであなたの復讐は終わったの? 良ければ詳しく聞かせてくれない?」
「……はい。直接的に関係するものは全て殺し、親を含めた間接的に関係するものは毒物生成というスキルで何かしら障害が残るようにし今後の生活に支障をきたすようにさせました。あの時いなかった新しく生まれた子供たちは何もしませんでしたけど。あの子たちの中には親が目の前で殺されるのを見てトラウマになっている子もいるとは思いますが」
意外と容赦ないんだ。
それが奏が最初に抱いた印象だった。ミユはまさか復讐について詳しく聞かれるとは思っていなかったらしく、最初は鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしていたが、その詳細を教えてくれた。
「……話してくれてありがとう。お疲れ様」
「い、いえ。そんなこと言われるほどではないですよ」
そこでミユは一度言葉を切ると自嘲めいた笑みを浮かべていた。
「それに終わった後はスッキリするかと思ったんですが、どうにも虚しさしか残りませんでした。自分のしたことに後悔はしていませんが、何と言えばいいのか、こんなものかって、ただそう思うだけでした。復讐なんてそんなものなんですかね?」
「……さあ? 僕にはわからないよ。ただ後悔していないならまだいいんじゃない?」
「そう、ですか。……でもこれで心残りはないので気持ちも切り換えられると思います。もう隠し事はすることもないですし」
奏の軽いあっけからんとした言葉にまたきょとんとするが、納得したように笑顔を浮かべていた。
「それじゃあ、朝食食べたら出発しようか」




