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周防のひとり立ち④

この状況では、周防は会社を辞めると言い出すのではないかと思っていた。ここからの挽回は難しい。そこを、俺なり係長の尾関なりに相談して、アドバイスや同行を仰ぐなどすれば、まだまだチャンスはあるのだろうが、そういうことを言える性格ではないし、係長の尾関との関係に至っては、ほぼ崩壊してしまっているために、そのカードは使えない。さて、どうするのだろうと様子を見ているが、それも限界がある。


わが社は基本的にノルマというものはない。ただし、仕入れ値をどのくらい下げられたかというのが、評価の基準になる。ウチの部署は西日本にある支社全域の仕入れを行っているために、その責は重い。周防は今のところ、一円も仕事に貢献はしていない。


日々の仕事には、各支社から上がってくる備品類の発注業務があり、場合によっては発送業務も発生する。その辺は今のところ、小春主任が捌いてくれているが、今では周防がその手伝いに駆り出されている始末だ。


新規のアポも取っている様子がない、担当している三社にも行っている様子がない。そのうちの二社は別に切られてもいい企業なので、行くだけ行って、相手を怒らせながら商談の機微を学んでもらえればとは思うが、どうも一回目の訪問で出禁を食らっているようで、その後の再訪はない。俺としても何度もそれを促し、場合によっては上司の同行を仰げと言っているが、一向にその動きはない。残りは、俺の担当していた福岡の会社だが、そこにも行けてはいない。おそらく、そこに切られると進退窮まることがわかっているので、おいそれと行くわけにはいかないと考えているらしい。


ここまでくると、周防の性格上、すみませんできませんとは言えないので、あとは、このままやめさせてくださいと言ってくる可能性が高い。そうなった場合は、どう対応しようか。俺はそのことを考えるようになっていた。


だが、予想に反して周防は、俺の前に立つと、神妙な顔つきで口を開いた。


「課長、申し訳ありませんが、課長の訪問に同行させていただけませんか」


どうした、と聞くと彼女は、


「もう一度、お客様との対応の方法を見直したいのです」


などと殊勝なことを言った。一体どうしたと思いつつ同行を許し、その日は二社の訪問を行った。その数日後、彼女は福岡の企業の許を訪れていた。さてどうなるかと思っていると、すぐに俺の携帯が鳴った。かけてきたのは、その企業の担当者だ。


「ああ~周防さん、来んしゃったよ。面白か子ね。しゃべり方が池端さん、アンタそっくりで。三流落語家みたいで、面白かったばい。また来んしゃい、と言うておいてちょうだい」


俺は恐縮しながら電話を切り、大きくため息をついた。


「オレ、三流……落語家?」

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