周防のひとり立ち③
周防が仕入れ先を担当して一か月が経った。当初は五社担当していた取引先だが、すでに三社だけになっている。つまりは、すでに二社から切られてしまっていたのだった。
ある程度は予想していたが、まさかこんなことになるとは思わなかった。正直言って、今は頭を抱えている状態だ。その理由は、切られてはいけない、もともと俺の取引先だった企業をしくじっていたからだ。
四社のうち三社は、別に切られてもいい会社だったので、ダメージは少ないと言える。ただ、尾関が担当してた会社からはクレームの電話がかかってきて、彼が詫びに行ったのはご苦労というほかはない。ただ、俺の担当していた会社をしくじったのはマズかった。早速福岡に飛んで行って詫びて、何とか事なきを得た。
「池端さん。やっぱりあのコは無理だよ。今後もアンタが担当してくれるというのであれば、ウチは取引を継続するけれど、あのコが担当するというのなら、今後のことは、見直させてほしい」
相手はそれなりに話のわかる大人だ。その人にここまで言わせてしまっていたのは、マズいというより、ヤバイ状況だった。私の管理不行き届きです。申し訳ございませんでした。今後は私が担当させていただきますと頭を下げたのは、言うまでもない。
周防の一番の問題は、言葉をオブラートに包まないことにあった。おたく様は高すぎます、もう少し値段を下げてくださいと直接言ってしまっていた。ウチの規模ではそんなに強気に出ることはできないのだが、彼女は怖いもの知らずなのか、そのものズバリの言葉を口にしてしまっていた。相手もある程度は我慢してくれていたが、二十三、四の小娘に偉そうに言われては、じゃあお宅とはもういいよ、となるのは当たり前の話だ。
むろん、彼女には客先に行く前にある程度のシミュレーションをしていたのだが、その成果はどこへやら、緊張も相まってか、俺たちとの練習は完全に吹っ飛んでいたのだった。
さすがに周防はヘコんでいる。もう、様子を見ていると、追い込まれているのがわかる。別に俺も尾関も何も言わないでいるが、それが、彼女にとってはプレッシャーになっていると小春さんが教えてくれた。
今の状況を挽回するには、新規の顧客を獲得してくる他はないのだが、それは今のところ一つもない。目標は三社だったはずだが、電話をかけている様子も、訪問している様子もない。彼女には日報を付けさせているが、そこには、取引先を調べていると書かれているばかりだ。
『調べるのも大事ですが、行動しなければ、新規獲得は難しいです。訪問先と訪問日時を確定させて、私か、尾関係長の同行を仰いでください』
……これを書くのは三度目だなと思いつつ、俺は彼女の日報を閉じた。




