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いきなりやらかす

係長・尾関が、周防の面倒は見切れませんと言ってきたのは、わずか三日目のことだった。理由は、口答えが多い、というものだった。


どちらかと勢いで押していくタイプの尾関。そんな彼に彼女は容赦なく反論したというのだ。聞けば彼女は、


「もう少し静かにしゃべってください」

「お前、というをやめてください」

「距離が近すぎます、離れてください」


などと言い、挙句の果てには、「関西弁、やめてもらっていいですか」などとブチかましたというのだ。俺は思わず爆笑してしまった。今年大学を卒業した新人が、係長にそんな口がきけるものなのだなと変に感心してしまった。


「ウチの事務所(神戸支社)関西なんですから、関西弁はしゃーないですやん!」


尾関はプリプリと怒っている。俺は仕方なく、教育担当を小春さんに替わってもらうようにお願いをした。彼女は相変わらず無口だが、小さな声で、承知しましたと言って頭を下げた。


そんな新人・周防は早速、初仕事が与えられた。難しいことではない。俺が東京に出張するための飛行機を手配する、というものだ。


わが社には三か月に一度、課長以上を集めた会議が開かれる。そこに参加するために、俺は飛行機で移動することにしているのだ。


新幹線での移動もアリなのだが、交通費を考えると、LCCを使った方が安上がりになるために、俺は飛行機を選択することにしている。


「課長、航空券、手配できました」


周防はわずか三十分でそれを完了させ、ドヤ顔で俺の前に立った。そうして彼女は、コピーをした書類を二枚、俺の前に差し出した。そこには、予約の詳細が書かれていた。


「ANA?」


思わず頓狂な声を上げた。なんでまた、そんな高い航空会社を? そう思った瞬間、周防が口を開く。


「JALの方がよかったですか?」


「いや、そういう問題じゃない。LCCがあるだろう? スカイマークは?」


「スカイマークはありません」


ないことはないだろう。近くの神戸空港はスカイマークが西の拠点と位置付けている空港だ。羽田への本数は多い。そんなことを考えていると、俺の持つ紙からはさらに衝撃的な文字が飛び込んできた。


大阪 伊丹


「いたみ? 神戸空港があるのに、どうした? なぜ、伊丹にした?」


「あ、帰りは神戸空港にしました。ご自宅に近いほうがいいと思いまして」


「……」


俺は絶句してしまった。どうやら彼女は、スカイマークという選択肢を知らなかったらしい。航空会社と言えばJALかANA。で、ANAで検索をかけると、これがヒットしましたと説明した。


「いや、俺は空港まで、車で移動すんだよ」


「はぁ」


「はぁ、じゃねぇ。伊丹から飛んで神戸に帰って来る。伊丹に置いた車はどうするんだ?」


「あー」


そのとき、席を外していた小春さんが戻ってきた。俺は彼女を呼んで、この顛末の説明を求めた。だが、彼女から帰ってきた答えは、想像を超えるものだった。


「私は、周防から手配を完了したという報告を受けていません」


聞けば彼女は説明をしようとする小春さんを制して、一人でできますから大丈夫ですと啖呵を切ったというのだ。そうしておいて彼女は勝手に航空券を手配して、俺に直接報告に来た、というわけだった。


俺は航空券のキャンセルを命じるととともに、小春さんからちゃんと業務を教えてもらうように指示したのだった……。

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