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貸さねぇと言ったら、貸さねぇんだ!

ちょっと皆さん、見ないでください……。


俺は心の中でそう呟いた。さすがに世間様もバカではないので、俺と周防の様子を見て察したらしい。皆、俺たちから視線を外してその場を通り過ぎていく。


「そうやって……そうやって、若い女性の体を弄ぶんですね? ホント、最低。最低ですよ、課長」


なんでそんなことを言われなきゃならんのだ。そもそも、なんでそんな話になるんだと、うんざりする。


「大丈夫だ。お前の体なんぞ求めていない。大体、そんなこと一言も言ってねぇだろうが。勝手に解釈して突っ走るんじゃねぇ。考えてもみろ。ウンコばっかりしている女とヤリたいとは思わねぇよ」


「ウンコウンコって言わないでください!」


「声が大きいわ」


周囲の視線が好奇のものに変わっている。アラ、あのコ、ウンコって言っているわよ、という視線だ。さすがにそれに気づいたのか、彼女はモゴモゴと口ごもる。


「じゃあ、どうやったらお金、貸してもらえるんですか」


「貸さねぇって。俺が貸せるのは、三万円までだ。それ以上必要なら、あとは勝手に自分で考えろ。つまりはだ。お前にはそれだけの信用度しかないんだよ」


「何でですか! 八万円と三万円でしょ? 返せますってば!」


「ほう、どうやって返せるのか、説明してみろ」


「それは……」


「説明できないじゃないか。もらった給料をきれいに使い切るお前さんに、八万もの大金は返せないだろう? じゃあ、なぜ俺が三万円なら貸すのか。月々五千円返済させると半年で終わる。だからだ。ちなみに、八万円だと返済まで十六カ月かかる計算になるよな? 一年以上かかるってことだ。だから、貸せないと言うんだ」


「何でですか? 別に十六カ月、私は返し続けますけれど」


「その信用が足りねぇんだよ。十六か月後にお前さんが会社を辞めている可能性があるからだ。そうなれば、とりっぱぐれるよな?」


「……」


正直言うと、三万円としたのは、踏み倒されてもあきらめがつく金額だからだ。ただ、それは、彼女にはさすがに言えないことだ。


「じゃあ、三万円で、いいです。新幹線で、帰りますから、貸してください」


周防は渋々ながらそう言って頭を下げた。俺は財布から一万円札を三枚出して、彼女に渡した。


「一つ、褒めておこう」


俺の言葉が意外だったと見えて、彼女は目を丸くして驚いている。


「八万円の返済方法を聞いたとき、親に肩代わりさせますと言わなかったのは、褒めてやっていい。自分の甲斐性を鑑みたのは、俺はえらいと思う」


「チッ、その手があったか! ああ~ミスった~」


周防はそう言って再びウンコすわりをした。俺は、自分の人を見る目のなさを、心から恥じた……。

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