カラダで払え?
「そ、そんなこと、ありえないでしょ」
周防は必死の形相で言葉を絞り出している。
「もともとは、お前が日付を間違えるからいけねぇんじゃねぇか。どうして確認しなかった。それ、小春主任にチェックしてもらったか? もらってねぇだろう」
「……」
ぐうの音も出ないらしい。とはいえ、このままではまずい。俺は神戸に帰ることはできるが、周防はおそらく帰ることはできないだろう。基本的に、彼女の財布は五千円以上のお金は入っていないだろうから、多少は援助してやる必要がありそうだ。それは……お土産代を削るしかないか。
そんな俺の思いを知ってか知らずか、彼女はハッとした表情を浮かべると、縋るような目つきで口を開いた。
「じ……じゃあ、じゃあ」
「なんだよ」
「とりあえず課長、八万円、私に貸してください」
「はあ? まだ言うか」
「違うんです。一刻も早く実家に帰りたいんです。仕事終わって新幹線で帰ったら、深夜になっちゃいます。だから、飛行機で帰りたいんです」
「知らねぇよ。自分で出せ」
「お金、ないです」
「ちなみに、今はいくら持っている」
「千五百円」
……関門海峡も越えられねぇじゃねぇか。と心の中で呟く。
「確か、博多から東京まで新幹線なら二万円ちょっとだったはずだ。それなら、貸してやる」
「飛行機で……。さっきみたら、あと二席空いてました。早くとらないと、満席になっちゃいます。お願いですから、八万円貸してください」
「そもそも航空券六万六千円だろ? 何で八万円なんだよ」
「……お土産買いたい」
「マジで、いい加減にしろよ、お前」
「もしかして課長、そんなにお金持ってないんじゃないですか?」
「ほう、煽るじゃないか。そのくらいの金は持っている。持っているが、お前に貸すのはイヤだ」
「何でですか!」
「そもそも、貸した金が返ってくる保証がないからだ。八万円、安くねぇぞ。貯金ゼロのお前さんが、八万円返せるのか? 無理だろう? 返せるってんなら貸してやらなくもないが、どうやって返すんだ? 俺が納得するように、説明してみろ」
周防はうぐぐと言わんばかりに悔しそうな表情を浮かべた。そして、唇を震わせながら、口を開いた。
「じゃあ、課長は、私のカラダで払えというんですかぁ!!」
周防の声が福岡空港中に響き渡った。周囲の方々の視線が、一気に俺たちに集まった……。




