郡山二社目
訪問先の担当者、オクノ様は、一言で言って、とてもいい人だった。東北人らしい朴訥な感じのする人で、何とかこの人を助けてやりたいなと思わせる人物だった。
この会社も、先のところと同様で、社長が周防の父親の部下という間柄らしい。あいにく社長は不在にしていて、会うことはできなかったが、オクノ様は、その社長から俺たちをくれぐれもよろしくと言われているようで、しきりに恐縮していた。
そんな彼を前に俺も恐縮してしまう。本当に、隣の女子がウンコばっかりしてすみませんと、心の中で謝っておく。いい年をこいた大人二人が恐縮しあう中、当の周防はというと、澄ました表情を浮かべていた。
およそ一時間の話し合いの結果、我々が求めていた商品をかなり安価で卸してくれることで決着した。考えてみれば、先に訪問した会社の担当もいい人だった。周防の父上の威光もあるだろうが、どちらも人間的な温かみのある人たちだった。何だか、これらの企業には定期的に訪問して関係を深めていきたい思いに駆られた。直感だが、これらの会社とは長いお付き合いができそうな気がしていた。
そんな和やかな中、周防はグルグルとお腹を鳴らしていた。最初は無視していたが、さすがにうるさい。ここでも、オクノさまは、ポケットからクッキーを取り出して、周防に勧めてくれた。どこまでもいい人だ。
ただ、周防は勧められたクッキーをその場で食べていた。これは、いけない。当然後でたっぷり小言を食らわせたのは言うまでもない。
駅に着くと、いい加減に俺も腹が減って来ていた。どこかで食事でもと思ったが、すでに新幹線の時間が迫っていて、そうも言っていられなかった。エキナカにはスーパーもあり、美味しそうな寿司屋もあったのだが、実に残念だ。
仕方なく、駅弁でも買おうということになり、俺は山形牛を使った弁当を買うことにした。これは、見た瞬間に決めた。さて、周防はじっと駅弁の売り場を眺めている。
「おい、どうした。いらねぇのか。早く買わないと、新幹線、来ちゃうぞ」
「……私、お金ないです」
「確か、二千円持っていなかったか? 駅弁買えるだろう。欲しいものがなければ、中にコンビニがあるから、おにぎりでも買えよ」
「この二千円を使うと、今夜の夕食が無くなっちゃうんですよね」
「何だよぉ、それ。まあ、いいや。好きなのを買いなさいよ」
「ありがとうございます!」
周防の顔がぱああっと明るくなる。大体こういう場合は、上司が買う弁当より安いものを選ぶのがマナーというものなのだが……。周防は俺のお弁当より安いものをチョイスしてきた。
ただ、その手には、二つの弁当を持っていた……。




